アリス・イン・ゴシックランド  霧の都の大海賊 (角川スニーカー文庫)

【アリス・イン・ゴシックランド 霧の都の大海賊】 南房秀久/植田亮 角川スニーカー文庫

Amazon

魔都ロンドン(ゴシックランド)の平和を守るのは、ホームズの妹と美少女メイドだけ!?
謎と冒険に満ちたビクトリアン・ゴシックファンタジー!!

時は19世紀末、霧煙る魔都ロンドン(ゴシックランド)! 切り裂き魔が跳梁し、英国海軍の新造艦が奪取されるなど怪事件・大事件多発の陰には、巨大な犯罪結社暗躍があった! 大英帝国の転覆を謀る悪漢どもを相手に、スコットランドヤードの貴族刑事ジェレミーと、世界一有名なあの名探偵(シャーロック・ホームズ)の妹イグレイン、そして謎めいた美少女メイドのアリスは、いかに立ち向かうのか!? 謎と冒険に満ちらビクトリアン・ゴシックファンタジー、ここに開幕!
やっぱり南房さんはノベライズよりもオリジナルの方が圧倒的に面白いよ。
ここで描かれるのは南房版【リーグ・オブ・レジェンド】。【リーグ・オブ・レジェンド】覚えてます? 確かアメコミが原作だった映画で、19世紀末のビクトリア朝の時代を背景に古今の著名な小説の主人公が敵味方に別れて相争うというSFアクション。透明人間やジギル博士とハイド氏、海底二万マイルのネモ船長とノーチラス号、トム・ソーヤーなど日本でも有名なキャラクターが暴れ回るというアレです。アラン・クォーターメンとか、ミナ・ハーカーとか、あんまりコチラでは知られていない人たちも居ましたけど。
一方でこちらの登場人物はというと、かの名高きホームズ探偵とワトソン氏こそ不在なものの、レストレイド警部は厳しい顔つきでジェレミー卿の上司をやっているし、ヤング・シャーロックの手がけた「グロリア・スコット号事件」のジャック・プレンダーガストがフック船長になって帰って来るわ、その船長が操る船がノーチラス号だわ。
巷では切り裂きジャックによる娼婦連続殺害事件が騒がれ、ダシュウッド男爵の地獄の業火倶楽部の後継組織が暗躍し、とまさしくビクトリアン・ゴシックの雰囲気を濃厚なまでに楽しめる。このハッタリ、このケレン味。もう読んでて美味しくって仕方がない。
主人公の貴族のボンボン刑事のジェレミーと、お転婆娘のイグレインの掛け合いもまた楽しい。貴族で金持ちというところを謙遜するどころかむしろひけらかすジェレミー卿がまた小憎たらしくて憎めないんだ。そこまで開き直って「俺は金持ちだ♪」と胸を張られると苦笑いするしかないじゃないか。
まあ一番イイ性格しているのは、ジェレミー邸のメイドのケイトでしたけど。こいつ、本気でクビにした方がいいんじゃないか?(爆笑
お互い張り合い貶し合い足を引っ張り合いドツキ合い、と喧嘩を繰り返しているうちに段々といい雰囲気になっていってしまうジェレミーとイグレインのラブコメも実に美味しい。
そして、そんな二人の間を繋ぐことになる記憶喪失の少女・アリス。彼女の正体は最後に明かされることになるのですが、そうか、あの事件って「彼女」である可能性も囁かれていたのか。
この子の立ち位置はまだ不安定だし、ネオ・ヘルファイアクラブの闇はまだ姿を見せ始めたばかり。続けばまだまだこの時代における有名人たちがゾクゾク登場してきそうだし、ぜひ長編になってほしいなあ。