ストライク・ザ・ブラッド〈1〉聖者の右腕 (電撃文庫)

【ストライク・ザ・ブラッド 1.聖者の右腕】 三雲岳斗/マニャ子 電撃文庫

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世界最強の吸血鬼・暁古城を監視せよ!
先輩、わたしの血を吸ってください……

 “第四真祖”──それは伝説の中にしか存在しないはずの世界最強の吸血鬼。十二体もの眷獣(けんじゅう)を従え、災厄を撒き散らすといわれる幻の吸血鬼が、日本に出現したという。その“第四真祖”監視と抹殺のため、政府・獅子王機関は“剣巫(けんなぎ)”と呼ばれる攻魔師(こうまし)の派遣を決定。しかしなぜか監視役として選ばれたのは、見習い“剣巫”の少女、姫柊雪菜(ひめらぎゆきな)だった。対真祖用の最強の霊槍(れいそう)を携え、魔族特区“絃神(いとがみ)市”を訪れる雪菜。そこで彼女が遭遇した“第四真祖”暁古城(あかつきこじょう)の正体とは!?
うはーーー、ベタだ。近年稀に見るくらいにベタベタだ。世界最強の吸血鬼とか、霊槍とか、剣巫とか、魔族特区とか。今となってはベタ過ぎて、むしろ逆に忌避される傾向にある設定、単語の総浚えだ。さらに言うならこのご時世、こういったベタな設定に敢えて取り組んだ作品は、書き手自身の好きばかりが高じて物語としての体をなしていないものか、或いは教科書通りの面白みも何も無い通り一辺倒の陳腐なお話ばかり。
だからこそ、飢えていたとも言えるのだろう。これら典型的なまでの世界観で繰り広げられる一級のエンタテインメントを。とびきり面白く読み応えのある王道を。
そう、そもそもこの粗筋にあるような、こんな風に並べられた単語の数々を前にして浮かんでくるのは、欠伸や苦笑いなんかじゃないはずなのだ。湧きでてくるのは抑えきれない「ワクワク」であり、胸高鳴るような「ドキドキ」だったはずなのだ。
それを俄に思い出させてくれたのが本作【ストライク・ザ・ブラッド】である。何しろ、手掛けるのは古豪と呼んでもいいベテラン作家の三雲岳斗さんである。先の【アスラクライン】、今度アニメ化なる【ダンタリアンの書架】など、最近では割と一捻り加えた話を書いてきた作者が、今敢えてこうした王道に挑んできた、というのは実に美味しいシチュエーションだ。或いは【レベリオン】や【i.d.】で当時描ききれなかったものを、今だからこそ手がけようという心積もりなのだろうか。ならば本作はまさに、満を持して、送り出されてきた新シリーズというべきなのかもしれない。
これを期待せずして何を期待するのか。

実のところ、ちゃんと「ラブコメ」してるのって作者の作品では案外と珍しいんですよね。その意味でも結構新鮮でした。他の三雲作品のヒロインって、色々な意味で面倒くさかったり非常に難しかったり複雑だったりと、ベタな恋愛にはそぐわないキャラが多いんですよね。ダリアンなんてだいぶ緩い方。【少女ノイズ】の冥とスカはかなり真面目に二人の関係性にスポット当たってたけれど、あれも相当ひねくれた関係だったからなあ。【アスラクライン】は三角関係になってますけれど、あれも意味不明なくらいエキセントリックな繋がり方してましたし。
そう思い返して、本作のヒロインである雪菜嬢を見てみると……もう滅茶苦茶チョロい!! この子、絶対に悪い男にダマされるタイプだぞw
性格は四角四面の生真面目ちゃんにも関わらず、素直すぎて人を疑わないわ、不器用で咄嗟の応用がきかなくてドツボにハマるわ、ガンコな割に強引に押されるとやたらと弱いわ、すぐムキになって目の前の事に気を取られるわ。あれ? 基本性能は高いはずなんだが、ダメっ娘ちゃんなのか!? これで変に意固地だったり、人の話を聞かなかったりしたら可愛げのないただの面倒くさい小娘なのだけれど、雪菜はその点、思考に柔軟性もあるし、色々相手の立場とかも気を使ってくれて、その上ついつい必要ない所まで手を出して助けてくれたり、面倒みてくれたり、お世話してくれたり……この子、多分ヒモとか囲う才能あるよね。お説教垂れながら、なんだかんだで見捨てずズルズルと養ってくれそうだ(笑
そもそも、監視対象、場合によっては抹殺も指示されている相手に対して、この娘アホみたいに不用意に近づくんだもんなあ。監視ってもっとこっそりやるもんでしょうに、あからさまに正体あらわしながらストーカーしてはるしw 腹芸とか隠密行動が苦手を通り越して不可能の領域にまで達していて、しかも自分では全くその事実に気づいていないっぽい。頭はいいし、思考も明晰で判断力も高いのだが、でもアホの子である。
うむむ、かわいいのう。
無理やり迫っても、ダメですダメです言いながら、最終的にううッ仕方ありません、となし崩しに押し倒せそうなほど、ガード緩いし。脇が甘いし(笑
獅子王機関の人らは人を見る目あるわー。なんかもう、天然で据え膳を実践してしまえる逸材じゃないですか。まさに食べてくださいと言わんばかり。
浅葱さん、これちょっと相手悪いよ? もっと積極的に行かないと、中学以来の親友ポディションなんか何のアドヴァンテージにもならずあっという間に持っていかれてしまいそうだ、というかあっという間に持ってかれてるしw

さて、肝心の第四真祖様だが、思ってたのとは状況がかなり違った。真祖様が高校生に身をやつしているのではなく、本当に普通の高校生じゃないか。これは大変だわ。実際、生活かなり苦労してるみたいだし。そりゃ困るよなあ、最強の力なんて普通に生活してたら何も役に立たないし。せめて頭くらい良くなればいいのにね、でも吸血鬼のポテンシャルというのはだいたい身体能力に起因するもので頭脳が明晰になる訳でもないので学生生活には全く寄与しないのである。むしろ夜型の体質が辛い(笑
なんかこう、明らかに雪菜みたいな子が思わず「シャンとしてくださいっ、ほらっ!」とばかりに色々とお世話してしまいたくなるような、気怠そうでいまいちやる気に欠けていてその癖女の子には優しかったり、割と気が回るという母性本能を擽るタイプ。ヒモタイプだよな、ヒモ。女の子に養われるのがやたらと似合う。というか現状だって妹に養われてるような感じだぞw