僕は友達が少ない (MF文庫 J ひ 2-24)

【僕は友達が少ない 6】 平坂読/ブリキ MF文庫J

Amazon

理科の発明品がきっかけで、夜空と小鷹の秘密が他の部員たちにもバレてしまった。『元友達』という(友達がいない人にとっては)極めて特別な関係を前にして、隣人部の人間関係にも変化が……!? 一方そのころ、学園の他の生徒たちは一ヶ月後に迫った学校生活最大のイベント、学園祭に向けて盛り上がっていた。いつかリア充になったときのため、隣人部も学園祭に向けて動き出――そうとするのだが……。例によって迷走を繰り広げる彼らは、果たして学園祭を成功させることができるのか!? 学園祭だけでなくリア充には不可避の「あのイベント」にまで果敢に挑戦する、大人気残念系青春ラブコメ第六弾、どこまでも残念に登場!

もうこの夜空とかいう女、ホントに誰か何とかしてくれ!!

買い物回での、もう本当に残念な気分にさせられたアタシの心をいったいどうしてくれるんだっ!! ガッカリだよっ、巨大にガッカリだよ!! うがあああっ、残念にも程があるわーーっ。なにしてくれるだーーっ!!
なんて残念な女なんだ。もう救いようがないくらい残念じゃないか。なんでそこでジャージなんだよっ。自分がなんでこんなに憤慨してるのか訳がわからないが、とにかくこのガッカリ感には憤りを抑えきれない。いや、作者に憤ってるんじゃないんだ。それはぜんぜん違う。作者としてはそう書くしかないのはよくわかる。だって夜空だもん。そりゃあ、ああいう行動取るさ。だってそういう女なんだもん。ぶっちゃけ、作者がどういう勝手に操作出来るような話ではないのだ。
だから、憤慨しているのはああいう行動をとっちゃう夜空に対してなのである。なんでそんなに憤慨してるのか自分でもホントによくわからないんだが、それだけ期待してたということなのか。うーん、そうなんだろうな。あたしは彼女にそれなりの「期待」をしていたんだろう。ある程度、部内の人間関係のバランスが変化しつつある中で肉が意欲的に行動し、理科が非常に頑張って自己改革を行っている中で、夜空にも相応の革新を期待していたのである。実際、彼女は失敗したものの彼女の方から小鷹にアプローチをしかけ、ちゃんと「お洒落」をして現れたのだ。表面化こそしていないものの、裏で激化しつつある女同士による鞘当てに対して、夜空もまた正面から立ち向かうのだ、と喝采をあげながら期待したのに。
この女、とんずらこきやがった!!
逃げたのだ。勝負自体から逃げやがったのだ。同じ舞台に立たないことで肉や理科や幸村たちと正々堂々と張り合う事を避けてしまったのだ。しかも、不戦敗じゃなくてそんな勝負自体認めねえ、という意味での逃亡である。結局のところ、夜空はまだ肉たちを恋のライバルとして対等な相手と見ていないのだ。それどころか、自分は小鷹にとって特別な存在だと位置づけてすらいる。先に、小鷹に幼なじみである事実を打ち明けて、それを二人だけの秘密として小鷹に自分を印象づけながら、この度その幼なじみという事実を皆に暴露して皆を牽制したように。夜空はもしかしたら他にメンツに対して優越感すら抱いているのかもしれない。が、その優越感はどちらかと言えば自負に基づくものではなく、虚栄によるものだ。実際は彼女は不安だらけなのだろう。自分と小鷹が特別な関係であるという思いにしがみつかなければ、本来二人きりだった隣人部に勝手に集まってきて小鷹と仲良くする他の女たちの存在に耐えられないのだ。
だからこそ、彼女たちと同じステージに立って戦うことなどあってはならない。それは彼女たちが自分と対等であり、自分と小鷹は他人が割っては入れない特別な関係、でもなんでもない、と認めることになってしまう。
登場ヒロインの中でもブッチギリに心が弱いヘタレである夜空には、それは絶対に受け入れられない話だ。
だから、彼女はジャージに着替えたのである。
相手を対等と認めない。存在を受け入れない。ちゃんと向き合わない。同じ場所に立とうとしない。それってつまり、友達じゃないって事ですよね。
私は、夜空もそろそろ他のみんなのこと、友達だと思うように、受け入れるようになってきてたと思ってたんだ。素直な肉やわりと人間出来てる理科なんかは、もうね、夜空の事を友達と思うようになってて、夜空も滅茶苦茶な言動はとりつつも、内心は、あるいは無意識ではもう「友達」という存在を受け入れるだけの器を作れてると「期待」してたんだな。
それをあの女、みっともなく後ろ足で蹴っ飛ばしやがったのであった。
夜空よ、あんまり影でこそこそと狡っからいことばかりにかまけてたら、本当に肉や理科に持ってかれてしまうぞ、と本気で心配になってきた。肉はイイ子だから、本当にイイ子だから夜空のヘタレっぷりの正体に薄々気づきながらも、あんまり深く考えずになあなあで澄ましてるけど、本当ならわりとマジで友達無くしそうな事してるんだよなあ。しかも、あんまり効果あがってるわけでもないし。その点、肉はアホだろうと何だろうと女としては明らかに一枚も二枚も夜空より格が上なんだよなあ。小鷹が「アレ」なので目に見えた効果も変化もないけれど、わりと大事な場面で押さえるところ押さえてるんだわ。ヒロインとして成長著しい理科に、正式に女性と認可されたことでなんか見違えてしまった幸村という下からの押し上げも最近強烈だし、夜空の相変わらずさには強度の危機感を覚えてしまう。

間怠っこしい屁理屈はさておいて、単純に「ジャージ」になりやがった事実にものすげえガッカリさせられた、というのも憤慨の大きな理由である事実は否定出来ない。だって男の子だもん。

にしても、アニメ化については昨今の人気からして当然だと思ってたし、楽しみにも思ってたんだけど、改めて本作読んで、なんか不安になってきた。
だってさ、この作品って本気で「残念」な話ばっかりなんだよ? めちゃくちゃ面白いし、ヒロインはカワイイ、それは間違いない。間違いないんだが、とてつもない「居た堪れない空気」が流れる話であることも確かなのだ。
たとえば、今回の話でも「誕生日パーティー編」がアニメになったものを想像してみよう。
なんか物凄い空気流れない? 見てるこっちまで身の置き所がなくなるような、思わず笑い顔がひきつりながら「……うわー」というつぶやきを漏らしちゃうみたいな。
お茶の間に広がる微妙な雰囲気。何やら変な意味で怖くなってきた(苦笑

平坂読作品感想