夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NovelsFantasia た 3-8)

【夢の上 3.光輝晶・闇輝晶】 多崎礼/天野英 C・NOVELSファンタジア

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サマーアの空を覆う神の呪いは砕け散る。そして----夜の王に提示された光輝晶はあと二つ。残されし想いや夢はどこに行くのだろう? シリーズ、ここに完結。
あとがきに書かれていた、この物語のモチーフになったという、ウィリアム・バトラー・イェーツの詩を読みました。その上でね、あの夜の王と夢売りの会話を読み直したら、もう泣けてきて泣けてきて。
それでなくても、あの夢売りの真意は戦慄モノだったんですよ。彼の意図を知った時の衝撃と言ったら。
自分自身の救済を(夜明けを)

……これを見た瞬間、全部が報われたのだと思いました。この三巻の間に描かれた六つの物語。そこで生き、そして死んでいった人たちは、決して幸いの中にあったわけではありません。それどころか、幸福な日常を失い、愛する人を奪われ、いだいていた夢を失い、辛く苦しい人生を歩んだのです。それでも、彼らは後悔などすることなく自分の信じるもの、大切なものを見つけ、夢をいだき、精一杯生き抜いた上で、夢を託していきました。
でもね、でもね、どれだけ彼らが満足していても、自分の生き方に納得していても、それがその人だけの中で完結してしまうというのは、やっぱり哀しい事だと思うんですよ。その意味で、夢売りが求めたものは簡潔にして絶大なものでした。
知ってほしい、覚えていて欲しい。そこで何があったのかを。彼らが、何を思っていたのかを。本当の真実を、本当の思いを。

これほどの、報いがあるでしょうか。これほどの、救いがあるでしょうか。与えるだけだった愛を、委ねるだけだった想いを、託すだけだった夢を、きっと一方通行でしかなく曖昧な感触でしか無く、錯誤や誤解や未知が入り雑じり正確には伝わらなかっただろうこれらの真実を、夢売りに見せられた記憶によって彼女は余すこと無く知る事が叶い、すべてを受け取ってくれたのです。彼らは別に真実など知ってもらわなくても構わなかったのかもしれません。でもね、これは残された者たちにとってもこれ以上ない救いなんですよ。
自分がどれほど愛情を注がれていたか、どれほどの想いを預けられたかを受け取った彼女は、自分が踏みしめるものの姿を知りました。故にこそ、歩いていける。
彼らの生き様を、記憶していて欲しい。彼らの夢の形を、忘れないで欲しい。
貴女は、彼らが敷いてくれた夢の上を、これから歩いて行くのだから。いつか、自らもまた誰かの踏みしめる夢となるまで。

やっぱり、ほんとうに重要なのは夢売りと夜の王のシーンだったんだなあ。
期待を裏切らない、それこそ結晶のように織り成された素晴らしい物語でした。感動。

1巻 2巻感想