ひきこもりの彼女は神なのです。2 (HJ文庫 す 3-2-2)

【ひきこもりの彼女は神なのです。 2】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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その住人のほとんどが神様という特殊な学生寮で暮らし始めた名塚天人。街の治安維持組織でもある寮の仕事として、魔術騒動の調査を任された天人は、意外にも同行を申し出た亜夜花とともに外出する。そしてなぜか《紫電の堕天使》牙龍院煌夜という痛いヒーローを名乗ることに!? それは戦神・柚原万那の作戦? 悪ノリ? 奇妙な調査の行方はいかに!?
冒頭でいきなり天人が、痛いヒーローをやらされ始めたときは一体何事かと思ったが、ちゃんと真面目な理由があったのがホッとしたやら残念やら。てっきりバカネタで、万那あたりの趣味でヒーローの真似事でもさせられてるのかと。でも、これは確かに効果的だ。こんなの、衆目にさらされたら悶絶ものだわ。この作戦考えた万那、幾ら軍神としても策が悪辣すぎるw
ところが、この厨二病も決してただ妄想を拗らせたものじゃなかったんですよね。【《紫電の堕天使》牙龍院煌夜】誕生の真相が明らかになった時は、じんわりと感動してしまった。
そう、今回の話で重要だったのは愚かで矮小な人間という存在の持つ、切なる願いの純粋さと誇るべき矜持。人という存在に全く価値を見出さず、路傍の石以下の認識しか持たない神々に対して、ちっぽけな人間たちが矜持を見せつけ、尊厳を知らしめ、一矢報いてみせる、胸のすくようなお話でした。天人は天使と人間の混血種であるネフィリムという種族なのですけれど、本当の神々に比べれば人間と変わらない小さな力しか持たず、実際ラストの神同士の次元を超えた戦いを前にして殆ど何も出来ないのですが、それでも彼は人間として今回の敵である大神に一矢報いて見せ、戦いが決着を見せたあと神様たちのルールに異を唱え、人間のやり方を受け入れさせる事に成功するのです。今回、彼が戦闘そのものに寄与する事はかなり少なかったのですけれど、それ以上に天人がやってのけた事は大きかったように思うな。前回の第一巻では、まだ天人は一度ヒーローとして挫折したあとで、自分が何を為すべきかがわからず迷いが内向きになっていたのですが、人を救うという傲慢さに身を委ねるのではなく、人が助かる手助けをしたい、という新しい自分のやり方を見つけた彼は迷いがなくなって、良い意味で理性的に突っ走れるようになりましたね。実に気持ちがいい。
そんな彼の頑張りや、今回巻き込まれることになった兄妹のお互いを思い合う純粋な願いを前にして、<天秤の会>の神様たちがちゃんと認めてくれたのも嬉しかったですねえ。どれだけ頑張っても一方通行じゃ虚しいですもの。本来隔絶しているはずの神と人の壁を前に、天人たちの想いに応えて神様たちも歩み寄ってくれたことが地味に感動ものでした。じわじわーっと来たんですよね、なんだか。
特に、人間が大好きだった兄の影響で人に味方しているものの、彼女個人は人間に対して何の心向きもいだいていない千那が認めてくれたことがにんともかんとも、ぐっときたのでした。
それにしても、千那さんみたいなのが人に好意的な神様の標準と考えると、亜夜花のデレっぷりは笑っちゃうレベルだよなあ。確か、この前まで人間そのものに対しては随分と倦んでたはずなのに。人間そのものよりも、天人への執心と考えるべきだよな、これ。ひきこもりだったはずなのに、天人にくっついて街に繰り出すわ、反応がいちいち可愛くて、天人のこと意識しまくってるのがダダ漏れだわ。大丈夫か、神様w これが北欧神話の冥府の女王ヘルだとは。そう考えると、今回の敵もまあとんでもなかったわけですけれど。
そう言えば、前回予想は立てたものの確信が持てなかった柚原姉妹の正体、今回専用武器を使ってくれたおかげで漸く特定できたのですが……ウリガット神話って、その発想はなかった!!
ウリガット神話の嵐神バァルの陪神であり妹であるアナトとアスタルト。こ、これはわからんかったわー。アテナとかミネルヴァあたりかなあとは予想していたので、ハズレではないんだろうけど、まさか習合の一番古いあたりの神話から来てるとはなあ。マイナーではあるけれど、これだけ古いならなるほど北欧神話にも早々負けんわ。アナトの神話を見たら、まんま千那さんで笑った。ってか、神話の方、とんでもないブラコン話なんですが。この女神、どれだけお兄ちゃんのこと好き好きなんだよ。しかもこれ、ヤンデレ入ってるし!!
和泉兄弟の弟の方の正体にも驚愕させられましたよ。普通にベルゼブブだと思ってたもんなあ。あ、そうなるとバァルと起源は同一だから、千那たちの兄になっちゃうのか。

一巻読んだ時にはストーリーが殺伐としていて、そもそもニュートラルハウスの神様たちと人間との意識が断絶していて、とてもアットホームな話にはなりそうにないな、と思ってたんだけれど、亜夜花がこれだけ心をひらいてくれて、一番難しそうだった千那さんが歩み寄ってくれたことで、相互理解がだいぶ進んだんですよね。スッタモンダの末に前回ニュートラルハウスに住むことになった梨玖も、どうなるかと思ってたら随分と馴染んでましたし。このまま行けば、どこかバラバラだった<天秤の会>も、一致団結して事に当たれるような、家族みたいなグループになっていける、のかな?

一巻感想