うちの会長は荒ぶる虎猫に似ている。2 (HJ文庫)

【うちの会長は荒ぶる虎猫に似ている。 2】 空埜一樹/ろんど HJ文庫

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学園を牛耳る《生徒会》との対決に備え、まずは戦力を強化することにした武人たち《裏生徒会》の面々。彼らはさっそく《鬼》の異名を持つ剣道部員の隠塚宗吉を勧誘するが、バッサリ断られてしまう。何やら事情を抱えていそうな宗吉が気になる武人。そんな中、裏生徒会に剣道部一の才媛である紫咲桜花から、宗吉に関する依頼が舞い込んで……!?
本物の虎が荒ぶるとそりゃあ怖いけれど、虎猫が荒ぶって見せてもそりゃあカワイイもんですぜ、と言いたいのかこのタイトル。だったら【うちの会長は荒ぶる虎猫に似て凄くカワイイ】というタイトルにすれば良いのに、とどうでもいい題材で汲々と思考をめぐらしてしまうくらいミコ会長が子猫化していらっしゃったのでした。完全に甘えたい盛りの子猫じゃないか。もう、武人に肩車してもらうのが標準規格みたいになってしまっている。武人も武人で邪険にしたり照れたりせずにちゃんと会長の相手しているあたりは偉いなあ。
既に出会い編で会長と武人の信頼関係は揺るぎない形で結ばれてしまい済みなので、第二巻では二人のコンビネーションは最初から絶好調だ。二人の掛け合いはテンポよく、天真爛漫で一癖も二癖もある会長の言動を、武人が手慣れた様子でクールにあしらうさまは見てるだけで楽しいし、何だかんだと仲よさそうでほのぼのとしてしまう。意外にも、余人が介在しがたそうに見える二人の空気に、新規加入メンバーである上原ちゃんが上手いこと加われてたのには驚いた。大人しそうな子だったので、会長の勢いに押されっぱなしになるかと思ったら、結構言うべきことは言う子だったのね。感覚派のミコ会長に対して理論派の武人だけれど、理論派だからと言って常識人とイコールでは全くないので、何気に二人が揃うと突拍子も無い方向にすっ飛んで行ってしまい兼ねない所を、上手いこと上原ちゃんが掣肘役になってくれている。歌手が裏生徒会のメンバーになってどういう役割を担うのだろう、とちょっと心配してたんだが、どうやら裏生徒会の良識派として頑張ってくれるようだ。大変そうだな、おい。

天性の才能の持ち主に、果たして凡人は勝てるのか。巨大な才能の壁に心を折れ、挫折してしまった男が今回のターゲットになるのだが、結局のところ才能のない凡人が巨大な才能の持ち主に能力で上回れる、という結論には至ってないんですよね。ただ、上回れなくても勝つことは出来る。そして、才能とは所詮目的を叶えるための道具に過ぎない、と。恐らく挫折からはじまっただろう武人の天才論は、実は生徒会と勝利至上という観点では一緒なんですよね。大きな違いは、敗北に価値を認めるか。あるいは、コンテニューを認めるかの違いなのでしょう。比べてみると、一度の敗北ですべてを無価値と断じてしまう生徒会の在り方よりも、むしろどれだけ負けても逃げても、最後に勝てばいいんだ、と言わんばかりの武人の不動の信念の方が、勝利への執着は強いように思えてくる。しかも、彼の勝利への執念は彼個人のものに限定されておらず、それどころか彼の目指すものは周り全部、いずれは世間すべてを勝利者とするものだ、と言ってもいい。これって何気に、ダメだったら切り捨ててくれる生徒会の方針よりもキツいのかもしれませんね。信頼され、期待され、全部を任される、というのはとても嬉しいことですけれど、同時に覚悟をも求められる。前回の上原ちゃんにしても、今回の宗吉にしても、驚くほど緻密で巧妙な作戦でお膳立てしてもらった上で、最後の部分は自分自身がやり遂げないといけないような形で戦場へと送り込まれてるわけですから、プレッシャーもハンパないですよ。信頼されるのって、しんどいですよ。逃げ出したくなりますよ。生徒会の政治指針は言わば管理です。管理されるのって、楽ですよ? 対して裏生徒会の方針は自由です。でも、自由って無責任って事じゃないんですよね。むしろ、自由にこそ責任がつきまとう。個々が自分自身に、そして自分が影響を及ぼす周囲に対して責任を持たなければならない。ミコ会長は、人とは自由という責任を負ってこそ輝き笑えるものだ、という信念があるのでしょう、あれは。でも、武人はどうなんでしょうね。惨めな挫折からはじまった彼の信念は、果たしてそこまで人間を信じているのでしょうか。無論、信じてなければ上原ちゃんや宗吉にあんな策を預けられないでしょう。でも、その信はミコ会長のような純真無垢さとは少し違うものに感じられるんですよね。だからこそ、武人には他の誰でもない、ミコ会長こそが必要だったのではないでしょうか。彼が折に触れて見せる、冷静な計算高さとは裏腹の熱量の高さ。その炎のような本質にこそ、彼の真価が隠れているようなきがします。

しかし、いつの間にか裏生徒会、女の子だらけになってるなー。武人が一切その手の反応を見せてなかったので、メンバー振り返ってみるまでハーレム状態なのに気づかなかったよ。恋愛には全く関心無し、って風だもんな、タケちゃん。女の子の方も、会長はデレッデレだけど、ミコ会長はその感情を武人に共有してもらおうとは一切してないんですよね。好意は見せても、それに対する反応はそもそも期待していない。期待しているのはあくまで、裏生徒会の敏腕参謀としての知略と、同志としての志のみ。その公私の区別が此処では清々しい。他の女性陣もその点では裏生徒会の業務を優先して、恋愛ごっこは後回しにしてるからか、ハーレムっぽさは殆ど感じ無いんですよねー。
むしろ、生徒会側にいる幼馴染の方が業務おろそかにして発狂してるしw

その生徒会側ですけど、一巻ではつまらない人間の集まったつまらないグループだ、と幻滅してたんですが、動きの見えない生徒会長はともかく、今回は副会長が女の凄みと執着と弱さをバシッと見せてくれたので、ある程度敵役としての格を持ち直してくれたかなあ。
今のところ、武人たちの世論誘導にやりたい放題されてるだけだもんなあ。余裕見せてるけど。