アンチリテラルの数秘術師(アルケニスト)〈2〉 (電撃文庫)

【アンチリテラルの数秘術師(アルケニスト) 2】 兎月山羊/笹森トモエ 電撃文庫

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私はまだ、“φ(から)”のままなんだ。……こんなふうに思うのは、きっと君に出会ってからだ。

 あの事件から数ヶ月。文化祭のクラス劇で、雪名はヒロイン役に抜擢された。俺には少しずつ心を開いているものの、ずっと孤独に生きてきた彼女はなかなかクラスに馴染めずにいる。
 そんな時、俺は“歪んだ無次元数(スカラー)”を見ることになる。連なる赤い数値の鎖で繋がれた、奇妙な人間たち──。
 平和になったはずの東京に再び現れた、“集合”の災厄の数(アルヘトス)。“無限の力”をも喰らおうとする、雪名の天敵。新たな戦いに身を投じる雪名に、俺は何ができるのか。
“数”の異能力アクション、第2弾開幕!!
あー、やっぱりこのヒロインの雪名は素敵だなあ。これは見返したら一巻の感想でも書いてたんだけれど、バトルものの戦うヒロインとしては性格がすっごく普通の女の子なんですよね。それも活発とは真逆の、物静かで大人しく、笑う時もそっと微笑むような楚々とした奥ゆかしい美少女といった感じで、とても敵や怪物と闘争するようなタイプの子じゃないのである。むしろ、繊細な思春期の男女の相克を描く青春もののヒロインのような。
だからなのか、彼女の強さそのものは登場人物の中でも屈指のものを誇るのに、むしろその立ち振る舞いには儚さとかか弱さを内包した可憐さが羽織られていて、なにやら途轍もない庇護欲を掻き立てられるんですよね。でも実際心が弱いってこともないんだよなあ。意志は何だかんだと強いほうだし、行動力もある、なにより覚悟が座っている。だから、むしろ内面は毅然とした強い女性ではあるんだけれど……でもやっぱり儚げなんだよなあ。主人公に対してもどこかそっと寄り添うような距離感だしねえ。結構、身も心も預けてるっぽい所があるんだよなあ。おかげで、主人公の誠一くんは無次元数を見ることが出来る、という意外本当に何の力もない子にも関わらず、印象としてはずっと誠一くんが雪名を守っている、という風に見えるんですよね。これは不思議。
誠一くんが完全に雪名から信頼を得たこの二巻になると、雪名にちょっと甘えん坊の卦も出てきたので、なにやら二人の雰囲気たるや日常パートだと常時そこはかとなく甘酸っぱい空気が流れている始末。あんまいイチャイチャしてる、という俗っぽい感じはしないんですけれどね。言葉にするなら初々しくも仲睦まじい、といった雰囲気か。何れにしても御馳走様である。カラー口絵にもなってるあのシーンは相当に凶悪w
しかし雪名のイラスト、若干一巻よりも頭身が沈んだような印象が……微妙にABの天使ちゃんっぽくなってる気がするw

前回の「確率」に引き続き、今回は数学の「集合」から。人間関係を公式のように定義してしまったが故の悲劇。正直、写像とか数学用語、調べてもとても理解したとは言えないのですけれど、こうして物語仕掛けで設定を用意してもらうと、なんとなくニュアンスみたいなものは伝わってくるんだよなあ、面白い。世界は数字でできている、などと言うこともあるけれど、こうした人間関係ですら数学に照らし合わせて異能として表現する方法は、世界観や設定がガッチリと固まって安定感がありますね。数学を知らなくても、これなら把握しやすいし。
一巻に引き続き、安心して楽しめる良作でした。雪名カワイイよ雪名♪

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