七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)

【七姫物語 第6章 ひとつの理想】 高野和/尾谷おさむ 電撃文庫

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遠くまで来ました。でも、もっと先を見てみたい──。

 七つの宮都市が割拠する東和の地は、時代の変革期にあった。 争う理由を探し出し、異なる未来図に戦いを仕掛ける一宮、二宮の大連合軍。 双子都市に向けられた中央の大軍に、各地方都市の寄せ集め軍は結束を示す。動乱の最中で、各都市が掲げる平和の巫女姫達は、それぞれの意志を語る。定まらぬ世界のかたち、幾重にも交差する姫影、夏草が匂い立つ季節の中で、複雑に混じり合うのは東和の模様。 そして、一番小さな最後の姫、東和七宮空澄姫が見る世界と人々、その眼差しと笑顔のための物語。第六章開幕。
アタシも、もっと先まで見てみたかったですよ……。寂しいなあ。
うん、続きが出てくれただけでも嬉しいんですけれどね。こうして本当に終わってしまうとなると寂しさばかりが募ってくる。カラと二人の悪党の行く道を、もっともっと先まで眺めていたかった。だって、まだカラというお姫様のこと、この娘がいったいどういう子だったのか捉えきれなかったものなあ。他の巫女姫たちはあの一宮のクロハを含めてどういう人物なのか、概ね把握できたと思うんですよ。ところが、このカラだけは最後までその質を見極められなかったんですよね。なんとなくわかった気にはなったんですけどね、それを具体的、あるいは鮮明な形で掌握する事が出来なかった。これは、カラにあった他の巫女姫たちも同じなんじゃないのかな。彼女たちはカラの本質は捉えていたようだけれど、それが一体どういうものなのか、空澄姫という少女の在り方については理解が及んでいなかった。だからこそ、何の力もない傀儡同然の無力な姫を、皆一様にどこか得体の知れない存在として警戒、とまではいかなくても不思議なものを見るように伺っていた。
「私は、具体的に誰かを信じるという言葉を、あの子供の口から聞いたことが無いんだ。あれは本当は何も信じていないのではないか」

そんな空澄を、常盤は黒耀と似ている、と漏らすんですよね。ただ、常盤姫は彼女はそれでイイと言うのです。そんな彼女が好きだから、そのままでいい、と。
竹を割ったような常盤姫だからこその見解とも言えますが、カラの誰も信じないというのは不信でも否定でもなく、受容でありフラットな反射でもあるんだろうなあ。名前のとおり、彼女はカラの器であり、澄み切った鏡みたいなものなのだ。と、そのくらいはなんとなく分かるんですけどね、きっとこの娘はそれだけじゃなかったんだろうなあ。でなきゃ、テンやトエみたいな悪党と一緒になって大はしゃぎ出来ないですよ。カラはどこかで彼らと同じ悪党で、享楽主義者な面があるはずなんですよね。でないと、あの二人の唯一の仲間にして共犯者になんかなれやしない。
この三人だけなんですよね。心の底から楽しんでるのって。そりゃもう悲愴感だとか責任感だとか義務感だとかかけらも見当たらない。何事も楽しくがモットーに、この世を遊技盤みたいにして遊んでる。こればっかりはクロハですら出来ないし、あの破滅的な野生動物みたいな奔放な王子ですら本能に引きずられている分、理性的に遊興に励んでいるあの三人とは似て非なるものだ。悲愴必死に孤軍奮闘で自分の責務を果たそうとしている翡翠姫なんか、むしろ可哀想になるくらいである。翡翠姫はさらに王子にも徹底的に弄られてたからなあ。本来なら微妙な嫌悪感とともに憎まれ役になりそうな立ち位置だったのに、妙に同情を集めることに。良かったのか悪かったのか。
さてさて、そんな突拍子もなく、どこまでも破天荒で自由な三人だからこそ、お説教役の衣装役さんとヒカゲを混じえて、いったいどこまで行ってしまうのか、出来る限り眺めていたかった。
何だか、置いてけぼりにされたみたいで、寂しくて仕方がない。

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