カミオロシ―縁結びの儀 (電撃文庫)

【カミオロシ 縁結びの儀】 御堂彰彦/さらちよみ 電撃文庫

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『付喪堂骨董店』の御堂彰彦、待望の最新作! 伝承系ファンタジックホラーの登場。

 神社にまつわる恋愛成就のおまじないの噂。その神社に課外活動で玖流緋澄と識読美古都は訪れる。学年で双璧をなす秀才、才媛の二人だが、顔を合わせば皮肉の応酬となる間柄。おまじないとは無縁の二人だった。
 だが、神社に訪れたほかの生徒たちは違う。おまじないを信じ、互いを意識する生徒たち。だが、そんな浮ついた空気は一変する。
 他愛のない恋愛成就のそれが、次々と死をもたらしていく。それは呪い、それとも──。謎に迫ろうとする緋澄と美古都の二人が知る真実とは!?
前作がアンティークという不思議な力を秘めた道具にまつわる話で、オムニバス形式に色んなタイプの物語が描かれていたのですが、今回は一冊まるまる長編ということでより一層ホラー色を強めてきた模様。ホラーと言ってもまったく理不尽な惨劇が繰り広げられる話ではなくて、超常現象ではあるものの一定のルールとロジックに基づき惨劇が発生するので、その秘められた呪いの法則を紐解いていくことで事態を打開するある種の謎解きと見ることも出来る。
主人公とヒロインの両方共が理知的で冷静沈着、感情的な衝動とは程遠い二人なので、特に人が次々と死んでいく状況でパニックとなる人たちの中で、常に理性を保って思考を冴え渡らせ自然と皆を落ち着かせ場を収めようとする彼らの存在は非常に頼もしい。
前作の刻也と咲が絶対的な絆によって結ばれていたのと比べて、幼馴染という関係にも関わらず玖流と美古都は決して仲がいいという訳じゃないんですよね。あらすじにもあるようにいつも皮肉をぶつけ合い、牽制しあう仲。とは言え、見ていると別に仲が悪いって訳でもないんですよね。あれだけ尖ったもので突付きあうようなやり取りを繰り返しながら、あんまり刺々しい雰囲気やギスギスした感じはない。お互いに信用も信頼もしていないけれど、気心が知れている関係に見えるのだ。なるほど、これも友達や家族という関係では括れない、幼馴染という独特な関係の発露なのかもしれない。イチャイチャするだけが、相手を大事する事じゃないのだろう。
それにしても、清々しいくらいに「選ぶ」決断を下せる主人公だ。これは多分、ヒロインの美古都も同じなのだろうけれど、ちゃんと大事なものに序列をつけれる人なのでしょうね。必要と有らば、より大事なものを選びとり、選ばなかった方を見捨てる事ができる。これは作者のスタイルなのかな。前作の刻也にも少なからずその手の決断力はありましたし。

物語それ自体は非常に後味が悪い。理不尽とはこういう事を言うんでしょうね。その惨劇の原因が人間の悪意によりものだったらまだ納得出来るのでしょう。人の醜さがこの惨劇を呼んだのだったら、因果応報としてその筋道を理解できる。
でも、そこに何も悪意がなかったのだとしたら。そこにあったのが掛け替えのない友情だったり、好意だったり、ささやかな願いだったのだとしたら、そこにあった願いがねじ曲げられ、狂い果てた挙句に、望んだ形とは全く別の形で答えが出されてしまったのだとしたら、こんな救いのない話はないじゃないですか。
そういう意味でも、今回の話はかなり欝になりそうな話である。そして、こんな神の理不尽がこの物語の基板として備わっているのなら、玖流と美古都にまつわる話にも相当な酷い顛末が待っている……いや、既に酷い事になってしまったあと、或いは現在進行形で酷なる現実が続いているのかもしれない。
玖流の回想を見る限り、彼の願いに美古都が関わっているのは間違いないんだろうしねえ。今みたいな気心がしれながらも打ち解けない関係になってしまったのも、端を発しているのは彼のカミオロシだったんだろうし。
そもそも、美古都という幼馴染、どうも存在の根底から怪しいところがあるからなあ。色々覚悟はしておいた方がいいかもしれない。
前作が決して大団円と言えない、妙な言い方をすると「壮絶極まるハッピーエンド」といえる結末だっただけに、こっちも楽観的には到底慣れないんだよなあ。ホラー色が強まった分、より悲惨な話にならなきゃいいけれど。

それにしても、イラストで見る主人公の目付きの悪いこと悪いこと。