【氷結鏡界のエデン 7.空白洗礼】 細音啓/カスカベアキラ 富士見ファンタジア文庫

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「世界を構成する鍵。空白(わたし)のこと、あなたの魔笛のこと、第七真音律(エデン・コード)のこと。全てを教えてあげる。望む事実(こと)も、望まない事実も」
 満面の笑みを浮かべ、空白(イグニド)は歌うようにシェルティスに告げた。
「あなたには全てを知って――絶望して欲しいですからね」
 第三機関・異篇卿の拠点に潜入したシェルティスの前に、異篇卿イグニドが現れる。空白(イグニド)の存在にふしぎな郷愁に襲われ、シェルティスは戸惑いを隠せないでいた。そして同じ頃。千年獅・レオンの前には"理想の敵”が立ちふさがる――。
 穢歌の庭(エデン)に堕ちたシェルティスの"真実”が明かされ、"みえざるもの”の実在証明が求められる、重層世界ファンタジー。
いつかはシェルティスの秘密はバレるとは思ってたけれど、上層部の巫女や千年獅たちは殆どみんな承知しているし、そんな悪い形では明らかにならないと思っていただけに、これだけ露骨な悪意と作為を以て暴露されるとは完全に予想外。前回、シェルティスの秘密を匂わせた怪文書が案外騒ぎにもならずに収拾されたので安心してしまってたんだなあ。あれは単なる前振り。今回の暴露を効果的に知らしめるための呼び水に過ぎなかったわけだ。
しかもこれはイグニドが画策したわけじゃないけれど、モニカの行動がタイミング悪すぎだ。まるで謀ったように、モニカが一番ショックを受けるタイミングでの暴露だったからなあ。このタイミングでさえなかったら、シェルティスの秘密が知られたとしてもそこまで致命的な傷にはならなかったはず。否応なくこれは、シェルティスとユミィに裏切られた、騙されたと感じても仕方がないタイミング。たとえ理性でそれが誤解だと承知していても、感情が納得できない、心が傷ついてしまうタイミング。最悪だ。
幸か不幸か、シェルティスはモニカの気持ちに今の段階では気づいていないのだけれど、いややはりそれはあとで蟠りとなって残ってしまいそうだなあ。知らないということは対処が出来ない、或いは遅れてしまうということだし。今回の一件で塔の権威は著しく失墜してしまうだろう事を鑑みるなら、彼を守ってくれる立場にある人達はシェルティスをかばえる状況になくなるだろうし、周囲のほとんどは彼の敵に回ってしまうはず。
今のところシェルティスは挫けていないけれど、状況の厳しさを目の当たりにしたとき果たしてそれでもなお気力を保てるか。彼の方ががんばれても、ユミィもまたモニカの一件を中心に傷ついてしまってるからなあ。
それにしても、イグニドの悪意とも好意ともつかないシェルティスへの執着は意外だった。もっと飄々とした興味や好奇心だと勘違いしていたが……何かシェルティスやユミィと深い関係にある人なんだろうか。それらしい事を匂わしているけれど、過去にそうした人が居たという回想は二人の間にはないんですよね。いや親しいどころじゃない、イグニドの台詞からすると……。
シェルティスが穢歌の庭に堕ちたという事故の真実が明らかになったものの、それと同時にまた謎も増える始末。話を聞く限りでは、異篇卿は決して悪いことをしようとしているわけじゃないんですよね。ある意味、塔とは別の手段で世界を守るための方法を探っている、と言っていい。ただ、何故こうもこそこそと隠れてやらなきゃいけないのか。誰が彼らを纏めて方針を決めているのか。そもそも、何故だれも知らない世界の真実を知っているのか。
それこそ千年前まで遡らなければいけない因縁っぽいなあ。
ともあれこれで第一部が終了。穢歌の庭から戻ってきたよりもより酷い状況に置かれながらも、シェルティスは改めてユミィの千年獅となることを決意する。その決意は、かつてとは比べ物にならないくらいに重く、密度の濃いものとなっている。彼の前に立ちふさがる壁はさらに高くなっているけれど、彼もかつてとは比べ物にならないくらい心の芯が強くなっているのだから、最悪の状況にも関わらず決して不安ばかりじゃないんですよね。
願わくば、モニカが可哀想なことにならなければいいのですけど。

あと、黒猫さんが脱がされたのはグッドジョブw 天の車のメンバーって、ある意味塔の面子より個性的で面白い人ばっかりだなあ。

シリーズ感想