断罪のイクシード 3 −神の如き者− (GA文庫)

【断罪のイクシード 3.−神の如き者−】 海空りく/純珪一 GA文庫

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「大和ちゃんには……もうわたしは必要ないんだね」

 夏休み――大和たちは、巨大マリンパークに遊びにきていた。最近なぜか沈みがちな幼なじみの穂波を、不器用ながらも励まそうとする大和。だが、そんな彼の前に、またも魔術の闇に属する人間が現れる。穂波や友人達まで巻きこんで巨大な霊災を引き起こそうとする敵に、大和は真っ向から勝負を挑むが――!?

 一方、遊びの誘いを断って淡郷声劼料歃をしていた東雲静馬は、ついに大和の秘密の核心に辿り着く。そしてそんな静馬に対しても、新たな脅威が迫ろうとしていた。

 風雲急を告げるシリーズ第3弾!
いいなあ、これは面白いなあ。亡国の怨念滾らせる旧帝国陸軍の特戦隊とか、暗躍する合衆国とか、ヤラレ役じゃなくきちんと活躍してくれる日本の魔術戦集団とか、これぞ痛快娯楽伝奇アクションってなもんですよ。最近こういうワールドワイドに魔術サイドの設定をカッチリと組まれた上に国際的なパワーバランスをしっかりと描いた大上段の伝奇異能モノって案外なかったりするので、こんな風に凝ってくれると美味しい限りである。特にアメリカの扱い方がイイんですよね。魔術など千年単位の歴史の積み重ねが必要になる要素を中心にしている物語って、どうしてもアメリカの存在が宙に浮くパターンが目に付く。あれだけの大国にして国際的な影響力を表に裏に誇っている強国の存在を遊兵にしてしまうのは勿体無いなあと毎度のごとく思っていただけに、この作品における実にいやらしいパワーゲームのスーパープレイヤーとしての役割の果たしっぷりには惚れ惚れしてしまう。今のところ殆ど前には出ていないのがむしろいいんですよね。背後でその存在を匂わすだけで、しかし状況をほぼ掌握し切って護国課、ひいては日本を謀略の糸に絡めとってしまっている。むしろ姿を見せないことでアメリカという国家の凄みと威圧感をひしひしと伝わらせている。故にこそ、その思惑を打ち破らんと二手三手先を読んで動く若手官僚たちの才の切れ味も栄えるというものです。その彼らの切り札として、二巻で活躍したニアたちが配されるというのがまた燃えるじゃないですか。
主人公と目の前の敵だけに焦点をかまけず、二重三重に輪を広げて舞台の土台を組むと、やっぱり話にもスケール感が出て面白くなるんだよなあ。
そうして外は外で着実に話を展開しながら、内は内でガッチリと大和と穂波の幼馴染の絆を再構成し、さらに静馬によって大和の秘密を解き明かしていくという二段構え。そこに、旧帝国軍の「小隊」を投入することで大和という男の揺らぎのない在り方とその根因を浮き彫りにし、そして彼に想いを寄せる二人の少女の想いの醸成を完成させている。見事な化学反応である。
と、話の構成だけでも基本を抑えているのだけれど、この作品の見所は異能バトルものとしては特筆に値する、むしろ駄弁り系でも最上位に放り込めるようなキャラクターの掛け合いの愉快さ、面白さでしょう。
ほんとにめちゃくちゃ面白いんだ、こいつら。
主人公からして、いい意味で「チンピラ」だもんなあ。二巻の終わりで幼馴染の穂波がややもヤンデレの気配を垣間見せたときは一体どんなドロドロした展開が待っているのかと思ったけれど、この主人公のやんちゃさとふてぶてしさはそんな弱っちい流れを許さなかったのである。大和って優しいけど甘くはないよね。大切なものほど甘やかさずにビシビシとやることをやり、言う事を言っちゃうヤツなのである。懦弱さを許してくれない、とでもいうのか。こいつ、チンピラの上にガキ大将だよな、性格。
ガキ大将の主人公ってタイプとしては珍しい気がする、うん。

話の方は、大戦争の前の前哨戦、というにはいきなりド派手な事になってますけれど、事件の大きさのわりにひどい事になる前に収集は付けれたので、やはり前哨戦と見ていいはず。それに、それどころじゃないまたぞろ凶悪な引きとなる展開がラストに待ってましたからね。
伝奇バトルっちゅーたら、これですよ、これ。

<殺し愛>。

愛するからこそ殺す。愛するが故に殺し合う。醍醐味醍醐味。まあこれは一種ヘタレの論理とも言えるので、大和の大将はお気に召さないかと存じますが。
けけけ、こりゃ激怒するぞー、大和ちゃん。お仕置き決定打な。

2巻感想