銀の河のガーディアン3 (富士見ファンタジア文庫)

【銀の河のガーディアン 3】 三浦良/久世 富士見ファンタジア文庫

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暗雲立ちこめる銀河の闇――。魔術師コンビに訪れる最大の危機!?
皇帝の進退を決める大会議の場に出席することになった、天才魔術師セーヤと皇帝の娘ラリエナ。刻々と会議が進む中、突如、謎の攻撃によって襲撃を受ける。首謀者を見つけるため、セーヤとラリエナは動き出すが……。
これ、次代の【星界シリーズ】を担えるスペースオペラになれると思ったんだけどなあ。あとがきを読む限り、どうも打ち切りっぽい。富士見は電撃みたいに一旦中断しても何らかの機会があれば再開も、というパターンが殆ど無いだけに、第一部完、では済まないだろう。
残念だ。
残念極まりない。
ほんと、なんでダメなんだろう。スペオペとしても、男女のでこぼこコンビによるバディものとしても、非常に面白かったのに。こういう風に期待していて、実際面白く書けてるシリーズがあえなく打ち切りになってしまうパターンが読み手としては一番辛い。

いくつかの事件を通じて打ち解けてきたセーヤとラリエナ。お互いの個性というか性格も把握したところで、段々と息のあった以心伝心のコンビプレイも冴えてきて、相棒としての信頼も醸成されてきている。
その魔力の大きさから中央に召しだされたものの、特に目的や目標というものがなかったセーヤが、ラリエナの愚直なくらい真っ直ぐで頑張り屋な人柄を目の当たりにし、宦官と誤解され酷い扱いを受けがちな姿をしている自分に対して何の含みも意趣もなく接してくれた彼女のために自分の力を尽くそうと心に決めたのはわりと最初の方でしたけれど、それに対してラリエナはセーヤの浮世離れした性格や、その異常なほどの規模の魔力への劣等感、冷静沈着に暴走する彼の危うさに振り回され、この変人とどう付き合ったら良いのか戸惑っていた節もありましたけれど、ようやく彼に命も何もかも預けられる相棒として認めてきた所だったんですよね。
この巻ではセーヤが向けてくる全幅の信頼と何くれとなく差し出される助けの手に、ラリエナが擽ったがるような心地のよい歓喜とともに、自分の不甲斐なさを悔しがり、彼の差し伸べてくれるものに見合うだけのものを返そうと奮起する彼女の内面の心の動きが、何だか胸の奥を羽でさわさわとなでられるみたいなキュンとさせられるものを感じさせてくれて、良かったんですよねえ。ただの仕事上の相棒という以上に、自分の弱さや情け無さも隠し隔てなくさらけ出してなお付き合えるパートナーという感じと、それを踏まえた上で女性としてのかすかな甘酸っぱい心境が入り交じっている感じがして。
ラリエナって短気で猪突で行動派というキャラクターなのだけれど、その一方で心のあり方は非常に繊細で女の子らしいところがあり、でもやけに太っ腹で鷹揚で細かいところは気にしないという大雑把なところもあり、と様々な性質が矛盾せずに混在しているところが非常に興味深く、好ましいキャラでありヒロインだったんですよね。
皇帝と養子の皇女という立場に縛られながらも、それを縁にしてお互いの愛情を示すことしか出来ない不器用な母娘のやり取りもねー、すっごい良かった。建前と立場に縛られた会談でありながら、ふたりとも娘を、母を、慕い、愛し、慈しんでいる様子があふれるくらいに滲み出てて。不器用であるからこそ、真摯で偽りの介在し得ない想いが伝わってくる、いいシーンでした。
ラリエナがどうしてあれだけ頑張れるのか、皇女として活躍し出世したいのかという理由も、よくわかる。単純に親にいいところを見せたいとか、養子という弱い立場、魔力の少なさからくる偏見の目を覆したいとか、そういう自分事じゃないんですよね。本当に、自分を娘にしてくれた、娘として愛してくれている母の役に立ちたいというだけなのだ、という事が伝わってくる。そりゃあね、元々ラリエナを支えたいと思っていたセーヤが、さらにラリエナを応援したいと想いを強くするのも当然だよ。こういう健気な子は助けてあげたいよ。

そんな相棒として揺るぎない絆で結ばれつつある二人に対して、丁度うつし鏡のように対峙するであろう敵役の二人組が登場。セーヤそっくりの容姿と膨大な魔力を持った少女と、生き別れていたラリエナの実の兄。今のセーヤとラリエナの在り方とまっこうから反発するような立ち位置に登場した敵役の登場だっただけに、まさにここから大盛り上がりという流れだったのになあ。
なんで終わっちゃうんだよぅ……。


にしても、この皇帝陛下は名君である。同盟との戦争に勝ったことそれだけでも君主として名望を高めただろうに、彼女は一番難しいであろう戦後を、単なる征服と併合と支配ではなく、新たなグランドデザインでもって舵取りし、帝国の人間も同盟の人間も見たことがない新しい世界を作り出そうとしているのだから。しかも、その融和への筋道の立て方がまた強かなんですよね。彼女の強みは、破壊者であり改革者であり創造者でありながら、性急さからは程遠い、どっしりとした長期のスパンで物を見て、準備を整えているところなのでしょう。それこそ、数十年、数百年の単位で自分が思い描いている世界へと近づいていけばいい、という遠望でいるのだ。
それでも、保守的な人々には急激な変化に見えてしまい、反発が高まっているのを見ると、彼女の描いているデザインがどれほど大きく、変化に富んだものかというのが伺える。
同盟をとり込み、自分の正統性を強化し広く知らしめた上で、反乱分子を炙り出すという鮮やかな手並みには惚れ惚れさせられましたよ。

重ね重ね、これでおしまいというのが勿体無い作品でした。なんでこれが続かないかな、ほんとに。

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