スノウピー3  スノウピー、恋愛する (富士見ファンタジア文庫)

【スノウピー 3.スノウピー、恋愛する】 山田有/狐印 富士見ファンタジア文庫

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恋っていったい何?――"僕"たちが見つけた答えとは!?
「恋のことはよく知らないの。恋は人間だけがするものなの」最近、スノウピーは「恋」を研究中。真面目な可香谷さんがときどき暴走するのは、恋をしてるから!? 恋とエッチなふるまいをスノウピーが全力でみつめる
不思議なことに話の方向性はまったく異なるにも関わらず、【スノウピー】ってどことなく【ニャル子さん】シリーズと世界のカタチが意外と似ている気がする。コズミックな所とか。だから何? と言われるといや別に何でもないのですが。ちょっと思っただけ。
さて、今度のスノウピーの観察対象は「恋」だそうです。「恋とはどんなものかしら」というスノウピーの台詞、なんか聞き覚えがあるなあと思ったら、そうだ、野梨原花南さんの「ちょーシリーズ」にそういうタイトルがあったっけ。【ちょー恋とはどんなものかしら】。
あれもまあニコニコニヤニヤと笑えるおはなしでしたけれど、こちらも「恋」に興味をいだいたスノウピーの心境を考えると、思わず相好が崩れてしまう。彼女の研究テーマである人間観察において、今回の「恋」という要素は確かに必須のものかもしれないけれど、これまでのどこか学術的な好奇心に基づいた研究題材選びと違って、今回は好奇心よりもどこか切迫したものを感じたのは気のせいだろうか。
論理的ではない感情の発露。理性的な人物が理性的でない行動に出てしまう不思議な気持ち。スノウピーは可香谷が時々起こすそんな突拍子も無い行動を、「恋」だと断定して調査を開始する。つまり、スノウピーはだいたい「恋」というものがどういうものかは理解はしているのだ。可香谷が恋していると思い至る程度には。ただ、スノウピーは自分が理解し認識している以上の深い「恋」の真理を知ろうと躍起になっていく。恋と愛との違いとは? 恋することとエッチな気分になることはイコールじゃないの? 映画のラブシーンを凝視し、書物の恋愛話を開き、他人が見せる不可解な行動を目にすれば積極的に質問を投げかける。「それは恋?」。
その行動は、「恋」という今まで知らなかった、感じたことのなかった、持ったことのなかった感情を知りたい為の熱心さには見えない。むしろ、自分の中に生じつつある未知の感情の正体を確かめたい、あやふやでもやもやとしてはっきりと形になってくれないものの正体を見極めたい、とでもいうような切実さを感じるのだ。いやそれよりももっと純真に、まっさらに、恋という理屈を超えたものを感じてみたいと思っているようだ。
単純に「僕」をスノウピーが好き、という話でもないんですよね。この二人の関係って作中でも彼が語っているように、どこか不可分なところがあるんですよね。相似というか一心同体というか。比翼の鳥、というのが一番近いか。この点、むしろ可香谷さんの方が、「僕」とちゃんと他人である為に、きっちり恋愛感情が成立している感じがあるんですよね。お互いに相手と意思疎通出来ていないが故に、相手の心の中を覗きたい、知りたいという欲求が働いて、わからないからこそ相手の気持ちが見えなくて不安に思い、嫉妬にかられ、余計に心を求めてしまう、というスパイラルが発生している。それが高じて、今や可香谷さんと「僕」とは完全に「特別な関係」へと至っているのだ。何しろ、同居している兄が出張で家をあけるや、泊り込みで家事のお世話をしに来てくれる女の子が特別でなくて何なのだろう。
それぞれに大切で掛け替えのないパートナーであるスノウピーと可香谷さん。わりと厳しくてあまり甘やかしてくれない二人なのですけれど、今回、二人は「僕」を褒めてくれる。自分に自信を持てないながら、それでも手探りで頑張ってきた彼の在り方を、これまでの生き方を、二人は全部肯定してくれるのだ。素敵で優しいあなたが自分をもっと好きになれるように、と願うようにして。
真っ白な処女雪のように汚れなく、フワフワとした羽毛のふとんのようにあったかな、人と人の繋がりをこの物語は感じさせてくれる。胸にたまる澱を吹き流してくれるような風を感じる。
世界はただそこにあるだけでとても綺麗なのだと、スノウピーの在るが儘を見つめる目が教えてくれた気がした。

2巻感想