ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編

【ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 4.総撃編】 柳内たくみ アルファポリス

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『特地』でゾルザル軍の殲滅に乗り出した日本自衛隊。その一方、世界各地では『門』の存亡を巡り、あらゆる思惑が交錯し始める。事態打開の鍵を握るのは『門』を開く能力を授けられた魔導師レレイだけだった。果たして伊丹と異世界美少女らは彼女を護れるのか。そして『門』はどうなってしまうのか?――超スケールの異世界エンタメファンタジー、待望のシリーズ第4弾!
この4巻にて完結だったはずが、件の大震災に影響を受けて、既に提出していた完成物をさらに加筆修正して二冊に分冊したとのこと。つまり、次の5巻が本当の完結編というわけですな。
無理やり門をこじ開けて、あちらとこちらの世界を繋いだ神様がそれを言うのはズルいと思うのだけれど、どうやら門を常時開放していたお陰で、無理やり連結された世界に負荷がかかってえらいことになりつつあるらしい。異変の調査に駆りだされた大学の偉いけど変人な、ある意味正しく学究の徒である教授たち(この先生たち、色々な意味でアグレッシブすぎて大好きです。最初は権威主義のいけ好かない爺どもかと思ったけれど、特殊部隊の撤退に巻き込まれたとき嫌な顔一つせずどころか、おとなしくしておらず一緒になって救援に走りだしたあたりなんか吹いたと同時に感動してしまったさ)とレレイの談義がなかなか分かりやすく世界の状況を教えてくれた。確かに彼らの推測が正しいなら、一度は門を閉じて掛かり過ぎたテンションを戻さないとかなり危険な事になる。さりとて、既にこの短い時間で特地と地球との繋がりは抜き差しならない所まで来てるんですよね。いや、正確に言うとまだ後戻りできる段階なのでしょう。もし「特地」と一切の関わりを絶っても、日本という国が立ちゆかなくなるまではまだ関わりは持っていない。それでも、銀座事件で与えられた被害の回収、アルザスの街への投資分や自衛隊の投入の見返り、何よりこれから見込めるであろう大量の資源の確保と魔法をはじめとする未知の力学によって生まれるだろう科学の発展、経済の拡大。何より、新たな世界という存在によって打破されるだろう閉塞感、フロンティアを得たという開放感。これらを思えば、「門」を閉じるという選択肢がいかに難しいことか理解できる。
それでなくても、伊丹たちだけではなく、特地の人と地球の人との交流は進んでしまっていて、既に幾つもの離れがたいカップルが生まれているのを思うと、門を閉じてあれは泡沫の夢だったのです、というエンドは考えがたい。
こうなると、自由に異世界と繋ぐ門を開け閉めできる能力を与えられたレレイの存在は、国運をかけて守るべき機密対象となるのも当然か。それこそ、地球の未来への希望を担っているとすら、大げさじゃなく言ってもいいわけで。それ故に、国の利益を図るならば各国が彼女の確保のためにムチャクチャやらかす可能性もあり、逆に特地側の日本に辛酸をなめさせられている勢力からすれば、彼女を抹殺することはとてつもない価値があることになってしまう。ただでさえ刺客に狙われてるってのに、さらに命と身柄を狙われる立場になってしまうことを、伊丹が憂うのもこれまた当然の話だわなあ。当人がそれを分かっているのかいないのかいまいち掴みどころがないのもどうしたものかと頭をひねってしまうところだし。いや、わかってるんだろうけど、緊張感がね(苦笑
今回一番笑ったのが、レレイが実験のために適当に繋いだ異世界が、明らかにあの映画の世界だったところか。丁度首相やら政府要人を集めての実験だったのに、伊丹の端的な説明でみんなそこが何処か理解して泡を食ったというのは、さすが超有名映画であるw
さすがにあれは自衛隊じゃあ勝てなさそうだしなあ。というか、閉鎖空間だから対処できたわけで、地球でやらかされるとまず間違いなく地球滅亡です、ご愁傷さまでした。伊丹もさらっと覗くなよ、んな安全かどうかもわからない異世界を。
さて、先ほどレレイは手応えや掴みどころがない、という話をしましたけれど、女性陣からすると伊丹もそんな感じで可哀想にヤキモキされてますなあ。彼女らが門閉鎖問題で伊丹に無断でああいう要求をしてしまったというのも、その辺の不安が強かったからなのでしょう。大事にしてくれているのは認めているけれど、親身になってくれているのもわかるのだけれど、それでも若干どこか突き放されたような感覚があるんでしょうなあ。実際、門を閉じた場合の話をしている伊丹の様子を見ていたら、その辺よくわかると思う。今さらながら元奥さんが、せっかく彼を射止めたにも関わらず焦って一度関係をリセットしてもう一度やり直し!としてしまったのかも、夫婦生活であんな態度を取られてしまったというのなら、何となく理解できた気がするよ。
彼に比べちゃ、他の日本の男連中は躊躇い迷い困りながらも、何だかんだと一途で可愛げがあって分かりやすいよなあ。先に男を見せた菅原外務官のみならず、今回の健軍一佐にしても古田料理長にしても。古田さんは微妙にフラグ立ててるなあ、と前々から思ってましたけれど、これほど急速にそっちの方向に話が流れるとは思わなかった。テューレ、あれだけ世を拗ねて復讐に凝り固まって未来も何もかなぐり捨てていたのに、ちゃんと夢を見られるようになったもんなあ。色々と元凶の人ですけれど、こういう姿を見せられると救われて欲しいと思いますよ。それにしても、拗ねた古田の旦那が可愛すぎる。そりゃ、テューレもポワーっとなるわw
そして今回帝国側で一番の活躍を見せたのが、あのシェリー。両親を無残な形で奪われたことで多くの意味で子供では居られなくなり、強かで粘り強く信念ある外交官としての才を見せ始めた彼女。実際、今回は帝国の代表として八面六臂の活躍を見せてくれるのですが、子供では居られなくなっても菅原に恋する少女としての一面はまったく失われていなかったのは嬉しかった。どれほど強かな交渉手腕も、その行動規範はあくまで菅原への思いの熱量だと思うと、とかく健気で可愛い話じゃないですか。この子にゃ、帝国人にも日本人にもファン、というか庇護者気分になってる人は多いんだろうなあ。その分、菅原の旦那は睨まれそうですけどw
あっ、柳田の御大、この間殺されかけて以来姿が見えなかったので心配していたのですが、よかった生きてたのか。ただ、負傷は思いの外深刻だったようで、これ正規の軍人としてはやってけないんだろうなあ。故にこそ、裏方にまわって防諜の責任者みたいなのをやっているようだけれど。元々謀将っぽい陰惨な気配漂わせていたし、いい意味で天職なんじゃないだろうか。なにやらあの人ともいい雰囲気になってしまっているようですし。自分を殺しかけ、半身不随にした相手なのに、意外と寛容というかやっぱりドSというかw

さて、次こそホントのクライマックス。特地との繋がりはどうなってしまうのか。シェリーちゃんは菅原と一緒になれるのか。絶体絶命の窮地に落とされたテューレは、抱いた夢を叶えられるのか。伊丹はわりとどうでもいい。あいつはどういう環境でもそれなり以上に楽しく過ごすに違いないだろうから、うん。
というわけで、なるべく早く次を期待しています。

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