0能者ミナト〈2〉 (メディアワークス文庫)

【0能者ミナト 2】 葉山透/kyo メディアワークス文庫

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 江戸時代──寛延年間に村人すべてを殺戮したという怪異「鏖」。長く封じられていたはずのそれが、眠りから覚めた。総本山、御蔭神道の名だたる手練が犠牲となり、関係者を震撼させていた。
 へそ曲がりで有名な九条湊の仕事を選ぶ基準は、「面白いかどうか」だという。人を跡形もなく吹き飛ばす、前代未聞の怪異──だが湊の腰は重い。皮肉げに「解決してみせるが、期待はするな」と不可解な言葉を放つ湊。
 実はこの事件には恐るべき秘密が潜んでおり──。事態は驚くべき展開を見せていくのだった!
この作品の面白いところは、妖怪、怪異の正体そのものを科学的に解き明かしてそんなものは存在しない、と証明するのではなく、まず怪異という存在は実在し、それらが訳の分からない原理を以て異能の力を発揮する事自体はそのまま前提として認めた上で、怪異の使う能力の効果そのものについては不可思議な妖術と思考停止せず科学的に解析してみせ、対処して見せるところである。
今回の「鏖」についても、どうやってそんな現象を引き起こしているんだ、という点については言及してないんですよね。ただ、その現象が科学的に分析して、物理的にいかなる現象が起こっているのかを調べ上げていく。このあたりの、科学と非科学のバランス比率があまり他の作品では見ないところで止まっているのが興味深い。
短篇連作形式だった一巻と違い、この二巻は丸々一冊、「鏖」という大怪異と対決する話となっている。と言っても、内実は人間同士の悪意と邪念が渦巻き、「鏖」の正体を調べるのにも邪魔ばかり入って障害だらけ、という体たらくなのだけれど。
御蔭神道も総本山も退魔集団であると同時に仮にも宗教団体にも関わらず、やることなすこと低俗なんですよね。ミナトもそりゃもう偽悪趣味が高じすぎて碌でも無い人間にしか見えないし、実際かなり碌でも無い野郎なのですが、それでも上役連中に比べたら随分とマシです。湊に対して、沙耶が何度もめげながらも尊敬してやまず、ユウキが軽蔑と反発を抱きながらも付き纏っているのも、あれで本家総本山の人間と関わっているよりも真っ直ぐに立てるという感触があるからなのかもしれません。根性ネジ曲がって固まってしまいますが、あれで湊は根本のところは清廉で優しいっぽいですからね。まあ、若い頃は演技だったのだとしても現在はもうホントにろくでなしですけど。
鏖の正体とその能力については、まったく予想しておらず驚かされた。途中、正解に近いヒントが出されていたにも関わらず、鏖がもたらす災厄のとんでもない規模と破壊力とそれが結びつかず、関連性があると分かってもその方向性が完全にズレてたからなあ。今回湊もあんまり余裕がなかったのか、地道な調査で「鏖」の正体を解き明かすヒントを手に入れてきた沙耶に、皮肉も何もなく素直に褒め言葉を与えてたのには思わずニヤニヤしてしまった。沙耶は純真な分、湊みたいな人間から素直な賞賛を与えられたら、調子乗るぞ(笑
ラストは人間たちの醜い姿とは裏腹の結末に、なんとも切ない思いに……。湊が性格曲がって世を斜めに見るようになったのも、こんな事件ばかり見てきたなら仕方ないのかなあ。それでも湊が世に背を向けてしまわなかったのは仲間である孝元と理彩子が居たからなのでしょうが。閑話の三人の話は昔の三人の関係が透けて見えて面白かったです。理彩姉、一巻で出てきた時は堅物にみえたのに、随分と壊れてきたなあ。元々こういう人だったのでしょうけど、若い頃から湊に良いように弄られからかわれ騙されてた挙句、鬼とかして湊を追いかけまわしていたのが容易に瞼の裏に浮かんでしまう。ふん、まあ外車なんぞ乗り回しているのが悪いんだw