囮物語 (講談社BOX)

【囮物語】 西尾維新/VOFAN 講談社BOX

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100パーセント首尾よく書かれた小説です。――西尾維新

“――嘘つき。神様の癖に”
かつて蛇に巻き憑かれた少女・千石撫子(せんごくなでこ)。阿良々木暦(あららぎこよみ)に想いを寄せつづける彼女の前に現れた、真っ白な“使者”の正体とは……?
<物語>は最終章へと、うねり、絡まり、進化する――
これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
かみついて、君を感じる罠の中。
撫子がラスボスラスボス言われてたのはそういう意味と違うから!!
いや、違うくはないんだが、阿良々木くんとガハラさんが付き合うにあたっての最大にして最後の障害となるだろう魔性の女として、撫子さんはラスボス扱いされていたのだから、概ね間違ってはいないんだが。
それでもこんな文字どおりにラスボス化してどないすんねん!(爆笑

意外といえば意外すぎるくらい意外な展開なわけだが、一人称によって明らかに、あからさまになった撫子ちゃんの実態にしてキャラクターたる在り方については、これはあんまり意外の念はなかった。というよりもむしろファーストインプレッションで感じた通りの千石撫子で、むしろ安心したと言っていい。そうだよなあ、撫子ってそもそもがこんな子だったんだよなあ。
いやね、アニメで描かれた撫子ちゃんがあんまりにも可愛かったんで、最初の印象とえらい錯誤があったもんだから結構彼女については困惑してたんですよね。そもそも、最初の【化物語】が出た当初は、撫子の人気ってそんなになかったどころか、だいぶ下の方だったはず。それがアニメであのブレイクですよ。実際可愛かった、うん。花澤香菜さんは凄いのう。それに加えて、【偽物語】でもちょいと思いの外アグレッシブで能動的な一面を見せてくれてたので、千石撫子というキャラについてのイメージがだいぶ傾いていた訳ですが、ここで原点回帰したと言ってもいいんじゃないでしょうか。
そうなんだよなあ、この子面倒臭がりなんだよなあ。割と大事だったり肝心なところだったり重たい判断や決断が必要になるところほど、面倒くさくなって放り出しちゃう子だったんだよなあ。
ダメ娘ちゃんである。究極的にダメ娘ちゃんである。比類無きダメ娘ちゃんである。
だめだめだー。
駄目というよりも堕女、と書いたほうが漢字的に正しいんじゃないかと思うくらいのダメっぷりである。そのダメさ加減が可愛いのだ、撫子ちゃんの魅力だと豪語する人も多々居らっしゃるでしょうが、ダメなものはダメなのであります。よくまあこの子、ファイアーシスターズの二人が友達でいたもんだなあ、と思う。火凛ちゃんはともかく月火ちゃんなんて天敵っぽいのに。だからこそ、撫子は月火を怖い怖いと言ってたのかもしれないけど。実際、今回ジャッジ下されちゃってましたし。今回の撫子ちゃんと他の女性陣との交流を見ていると、女っ気が強い人の方が撫子に対して拒絶反応強いことが何となく見えてくる。火凛や神原駿河みたいにボーイッシュで天然無意識でのことは兎も角、意識的に異性に対して女性的な思考でアプローチするようなタイプとはかけ離れている彼女たちは、撫子とは仲がいいくらい。月火や羽川翼みたいな、性差をどっか超越した高みから見下ろしてたり飛びかかったり襲いかかってりするようなタイプは、撫子に対してわりとロジカルに徹している。或いは撫子にとってはこのカテゴリーの女性が一番苦手で天敵なのかもしれないな。そして、これが純然として女として在るタイプ。忍(意外かもしれないが、常識的一般的ではないにしても、彼女は傷物語の頃から一貫して女のサガ剥き出しである)や戦場ヶ原ひたぎは面白いくらいに撫子が生理的に受け付けないようで、完全に敵視と嫌悪の対象だ。
まあ同性には嫌われるタイプであるのだろう。撫子自身もそれを承知しながらそれを改善する意志が(面倒くさいのだろう)皆無に近いから、余計に悪循環で悪化するという流れである。
面倒臭がりなのに怠惰でないのがまた性質(たち)が悪い。いやそれとも、深刻に怠惰だからこそ、状況が悪化に悪化を重ねて余計に面倒くさいことになっていく事を承知の上で、目の前の面倒くさいことを放置して最悪を招いてしまうのだろうか。どうも、彼女が徹頭徹尾面倒臭くなってしまうのは人間関係の調整であって、それ以外は仕方なくとなったら動くのかも知れない。呪いを解くために蛇を捕まえて回ったりとわりと大変なことを一人でやってましたしね。あれかて、友達との仲を改善して呪いをといてもらおうとする方が簡単だったはず。今回のラストの破綻っぷりを見ても、ちゃんと相手と向きあって関係を改善するよりも、全部わやにしてしまう方を簡単に選んでしまうあたり、彼女の「面倒くさい」がどのあたりに重きをおいているか分かる気がする。
あー、こういう時こそ一番頼りになるのがバサ姉だってのに、こういう時だからこそ居ないんだよなあ。月火ちゃんは概ねデストロイするだけで投げっぱなしのままアデューしてしまいそうだし、ガハラさんに至ってはとてつもなく頼もしいものの、頼もしいだけで頼りにはならないんだよなあ。というか、頼りにしてしまうと取り返しのつかないことに漏れ無くなってしまいそうで、頼みするのは怖すぎるのである。
忍? あれはそれこそ人類最強並に世界最強だけれども、さり気無く際限ないドジっ子だというのが判明してる以上、色々な意味で危なさ過ぎる。今回だって何気に彼女が状況を致命的に悪化させたような気がするぞ?

まあお陰さまでどえらいことになってしまったわけだが……あの次回予告だか次回予定だか知らないあの光景を鵜呑みにするのはどうかと思うぞ。予定は未定。ジャンプの次回予告ほどアテにならないものはないと申します。あれはあれで燃える展開だと思うけれど、そのままああいう話になると信用してしまうには、いささか西尾維新という作家とはデビューからこっち付き合い過ぎてしまっているのでした。
あれだけ丁寧に卓袱台の上に椀を並べられると、もうひっくり返すために並べてるとしか思えませんてw


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