赤鬼はもう泣かない (ガガガ文庫)

【赤鬼はもう泣かない】 明坂つづり/白身魚 ガガガ文庫

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女子の二の腕をなめてしまったヘンタイ中学生(?)・西遺大豪は単身、地方の学校へと転校させられる。奇妙な担任やクラスメイトたちに囲まれながらも転校生活を慎重に送ろうとするのだが、いきなり隣の席の女生徒・喪庭ここめに指を吸われてしまってドキドキ。しかし村中の人々からは、なぜだか「垢嘗」という妖怪あつかいをうけてしまう大豪。対するここめは大豪の血を吸ったせいなのか、徐々に変化していくのだが……!? 第5回小学館ライトノベル大賞、審査員特別賞受賞作!!
最近はこう、大人の人がちゃんと大人らしい義務や責任を果たしている、いわゆるカッコイイ大人が出てくる作品を見ることが多くなっていたので、自分が大人である事が自身の愚劣で身勝手で醜悪な在り方を正当化する言い訳になってると思ってる輩がこぞって出てくる話には、新鮮な気持ちさえ抱いてしまうのですねえ。
いやあもう、こういうくそったれな大人が出てくると、ほんとに腹が立つ。いっそ滅ぼしてしまえよと思ってしまう。おっさんおっさん、大豪くんがあんたの話を聞かないのは彼が子供で物の道理がわかっていないからじゃないの。殊更自分が悪くないんだ、責任はないんだ、悪いのは世の中の摂理であって自分は大人だからそれに従うのだ、大人だから仕方ないんだ、大人じゃない子供は言うことを聞いていればいいんだ、子供のくせに何も分かっちゃいないんだ、と自分は悪くないという責任転嫁の言い訳ばかり言い募り、身勝手で自分たちにだけ都合の良い醜悪な価値観と言い分だけを押し付けようとして、それで物分りがよいつもりになっている、そんなクソたわけた道理に耳をかたむけるほど、少年は腐っていなかっただけなのだ。
大人は勝手なことばかり言う? 違う違う、大人だから勝手なことを言うのじゃない。あのおっさんをはじめとするムラの連中が愚劣だから、こういう物の考え方しかたできないのだ。大人を貶めるな、てなもんである。
正直、最終的に連中と和解が成立したのがちと信じられない。ただ不信と恐怖心から排斥行動が発生し、実際死者が出るまで拗れた事態である。お互いに信用も信頼もあったもんじゃないだろう。これ、遠からず破綻するよなあ。
自分が人間である事にこだわり続け、垢嘗という妖怪とのハーフであることをコミカルにだけれど否定し続けた大豪くんは、恋した少女の味方で在り続けるためについには自分が人間であるという未練と決別して完全に妖怪サイドに移行してしまいます。ぶっちゃけ、人間であることをやめちゃった以上、彼が人におもねる必要はまったくないんですよね。村民は、和解が彼らが膝を折って屈服し、自分たちは危険でないのだと主張するのを認めてあげたから成立したのではなく、単に彼らが人と仲良くしてあげようと純然たる好意から妥協してあげただけ、というのを理解してるんだろうか。まあ、それが理解できるほど愚かでないなら、薮をつついて蛇を出すような馬鹿な真似はそもそもしないよなあ。