残光の女神と1/2アンデッド (ファミ通文庫)

【残光の女神と1/2アンデッド】 佐々原史緒/kyo ファミ通文庫

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死と生を越え、ふたりはいつしか心を通わせる――。

"半死人"冬哉と、死者を彼岸へ送る"渡し"那由子の奇妙な協力関係は、信頼へと変化しつつあった。だが冬哉の体は日ごとに死者に近づいている。「自分は消滅しても、那由子だけは"人"としてこの世で生きてほしい――」そんなとき、彼此見市を謎の光が襲い人々が昏倒する現象が発生。那由子と共に調査を始めた冬哉は、この街で密かに進行していた驚愕の"儀式"を、そして遂に己の死の真相を知ることに!! 愛憎と慟哭のダーク・ミステリ・ロマンス最終巻!!
愛憎と慟哭のダーク・ミステリ・ロマンスってキャッチフレーズ、最初に見たときはまた大げさな、と思ったものだけれどこうして最後まで読み切ってしまうと、一切誇張のないそのままのフレーズだったんだというのが、嫌というほどわかってしまった。
重たい、もうめちゃめちゃ重たい。重たいんだが、那由子と冬哉の明らかになった関係を思うと、二人が出会った事も、そこに愛情に近い絆が育まれた事も、奇跡のような運命だったんですよね。冬哉が一度死に、那由子が渡しだったからこそ出会ってしまった、それだけでもあり得ない出会いだったのに。
変な話ですよね、不思議な感覚です。幾つもの死が重なって初めて成立する運命の出逢いなんて。
結局、幾許かの人間的な成長と、人らしさを身につけた上での穏やかで賑やかな太平楽なハッピーエンドが待っているものだと勝手に思い込んでいただけに、まさかこんなヘヴィーな展開になだれ込んでいくとは。一巻や二巻における死者と生者を繋ぐような話は、冬哉は生者の立場から物事にあたっているように捉えていたのだけれど、今にして思うと結果として逆だったんだなあ。だからこそ、この巻で冬哉は自分の運命を知ってもあまり取り乱すこともなかったのだろう。むしろその意味では、ちゃんと「生者」の側にいたのは那由子の方だったのだろう。彼女が見せた必死なまでの執着や形振り構わぬやり方は、未練を残した亡者のそれではなく、生きているからこその懇願だったような気がする。
だからこそ、冬哉が送り出してやらなきゃならなかったんだろうなあ。止まってしまった死者が、先に行けるくせにその場に留まろうと足掻く生者にしてあげられるのは、きっと安心して納得させて、送り出してあげる事だけなのだから。今まで、死者を渡すおはなしはみんな生きた人が死んだ人を送り出してあげる話だと捉えていたけれど、そうか、これまでの話もよく見れば逆だったんだなあ。
「生きな」

ラストは、ハッピーエンドというのもどこかおこがましい感動的な結末でした。ちびっと泣いちったよ。クライマックスに入ってからの情感たっぷりの盛り上がりは、ほんと凄かったです。惜しむらくは、もう1つか2つ、那由子と冬哉がお互いに掛け替えのない存在だと感じあうようなイベントがあったらなあ、と言ったところか。2巻の終わりで那由子が冬哉に心開いて懐いたのは伝わってたけど、この最終巻でももう一回は念押しでグッと来るエピソードを前半に用意しておいて欲しかった。そうすれば、終盤の二人の話ももっともっと感動的になったんじゃないかなあ。

次回は、佐々原さんのあの軽快なノリの楽しい話が読みたいなあ。出来れば、女の子が主人公で。