問題児たちが異世界から来るそうですよ?  あら、魔王襲来のお知らせ? (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? あら、魔王襲来のお知らせ?】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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【打倒!魔王!】を掲げた弱小チーム“ノーネーム”に届いたのは、北の“火龍誕生祭”への招待状。魔王襲来の予言があり、東のフロアマスターである白夜叉から参加を要請されたのだ。「それ、面白そう!」と黒ウサギを置いて北へ向かった問題児たちから「今日中に私達を捕まえられなかったら、3人ともノーネーム脱退するから!」という手紙が!?な、何を言っちゃってるんですかお馬鹿あああ――!!! どうする黒ウサギ!?
あれ!? あれれれ!? なにこれ、めちゃくちゃ面白いんですけど!? いえ、第一巻の段階から新人作品としては稀に見る、いや新人作だからこそか、パワフルにドライブをきかせまくった凄まじい勢いの面白い作品だったのですが、逆に言うと勢い重視すぎて物語をすすめる上での前提となる舞台装置の構造部分が果たしてこの勢いについてこれるのか、ややも不安な部分があったんですよね。どれだけスピードの出る車を用意しても、道路を整備していなかったらまともに走れないのと同じような意味で。
魅力的でエネルギッシュなキャラクターたちと、彼らが大暴れする舞台となる箱庭世界。これを如何に空転させずに走らせる事が出来るのか。滅多と見ないくらい突っ走りそうなキャラ揃いだけにどうなるかと思ってたんですが、まさかこれほど一瞬にしてインフラを整備してしまうとは、呆気に取られてしまうくらいでしたよ。
そういえば、一巻の感想を見返してみると、意外とこれ舞台設定は頑丈に出来ているのかも、という風に見てたんだな。どうやらその感触は間違いなかったらしい。それも、何となくの感覚で整えるのではなくちゃんと計画性に基づいたシステムとして整えていっているのが好感触。

そもそも、あれだけ十六夜たちにチートすぎる能力を持たせたにも関わらず、それに頼り切って力任せのパワーゲームで障害をぶち破っていく形式にせず、かと言ってせっかくの能力を活かすこと無く封印したり制限するでもなく、まずそのチートな能力を武器として実際に振るえる状況を作り出すところからはじめなければならないように話が進んでいくのです。そもそも、ゲームのルールを決めるところから、いやそれよりも前、ゲームが実際に行われると決められる前の段階から謀り事と駆け引きが始まっているのですから、相当に深度のある知略戦ですよ、これ。
一巻ではルールを問題にしない強力な力を持つ三人の大暴れが痛快感を醸しだしてた以上、ルール縛りを強化するのは窮屈さを感じさせるかと思ったら、全然そんな事ありませんでしたしね。これは、一方的にルールを押し付けられてそれに縛られるような展開じゃなく、相手との駆け引きでルールの内容を決めていく、という形が大きかったんだろうなあ。いや面白い面白い。実に面白い。

そして、相手に対する勝利条件を見つけるためには、まず相手の正体を見極めなければならない、と来た。一巻で敵陣営がペルセウスに連なるものだったり、他にも黒ウサギの神話や白夜叉の正体など、傾向はあったけれど、ここまではっきりとまず神話や伝承を手掛かりとして相手の正体を分析解体し、その氏素性を暴いていくスタイルのバトルになっていくのは予想外だった。こういうウンチク話が好きな身としては、【カンピオーネ!】もそうなんだけどハマるんですよね。
今回の相手はハーメルンの笛吹き男がキーワードとなるチームだったのですが、ハーメルンの伝説にそういった解釈の数々があるとは全然知らなかっただけに、大変面白かったです。
それにしても、十六夜の博識さには驚かされる。こいつの最大の強みって、野放図な力でもギフトブレイカーという特殊能力でもなく、この知識と知能と洞察力じゃないか。バトルジャンキーの野生児みたいなノリしてからに、ココぞという肝心な時にはこの子完全に理性派なんですよね。自分の欲求に忠実なのかと思ったら、状況を鑑みてちゃんと自分を抑えるところは抑えて立てる相手は立てるし。無邪気なヤンチャさと義理人情に厚いところが同居しているし、三人の異邦人の中では確かに頭ひとつ抜けている。

一方で、飛鳥や耀は能力的には一歩も二歩も十六夜には劣るんだけど、人間的には若いなりに非常に出来ているし、稚気や余裕もある。その上で、非常に貪欲な向上心もあり、心を正方向に保つ矜持と義侠心も持っている。今はまだ中途半端な強者だったとしても、この二人ってそりゃもうガシガシ伸びまくるタイプですよ。ある意味完成している十六夜よりも、その伸びっぷりは見てて楽しいと思うくらいになるかも。この巻でも、既に飛鳥は一つ大きな武器を手に入れますしね。

そして、今回の敵となるチームの連中も、このままドロップアウトしてしまうには惜しいと思うくらいにキャラ立ってましたよ。
惜しむらくは、まだ味方側のキャラを立てきれてないところか。特にサンドラあたりなんかかなり美味しい立ち位置だったのに、何か目立たないまま終わっちゃいましたしね。坊ちゃんも、彼の知識が打開策となる場面は幾つかあったのだけれど、いまいち目立てず。彼とサンドラの関係なんか扱い用によったらだいぶ華やかに出来ただろうに。ちょっち詰め込みすぎの弊害がこの辺に出てるのかなあ。元魔王の吸血姫も、その正体から伸縮自在の特性やら、見せ所は多かったはずなんだが、もうちょいインパクトに欠けた感もあったもんなあ。カノジョのキャラのキャパからしてもっと出来るはずという期待も大きいですから。

ともかく、期待していたものよりさらに発展した形の特上の品を二巻で見せてくれた以上、こりゃさらなる期待を膨らまさずには居られないですよ。でっかいの来ましたよ、これ。

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