ミスマルカ興国物語 IX (角川スニーカー文庫)

【ミスマルカ興国物語 9】  林トモアキ/ともぞ 角川スニーカー文庫

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白薔薇(シャルロッテ)&蛇(マヒロ)、本格スタート!
最強策略家コンビの暗躍が始まる!


ついにグランマーセナルの帝都・シューペリアに入ったマヒロ。早速第一皇女にして軍令本部長、“白薔薇姫”の異名をとるシャルロッテから、貴族たちの動向を探る指示を受ける。警戒すべきは帝国内でも広大な領域を誇り、国家基盤を揺るがしかねない四大大公。しかし彼らもまた、中原地域の信頼を集めるマヒロに注目し、利用しようと画策を始めていたのだ! 人類統一を掲げる巨大帝国が、マヒロの出現によって、密かに軋み出す!!
こ、こりゃあアカン! シャルロッテってマヒロが絶対に敵わないタイプのヒロインだ!! てっきり、先の秘密会談時の鮮烈な謀略家というのがシャルロッテのキャラクターだと思ってたんですよね。明らかにマヒロよりも上手の策略家で政治家で理想主義者。でも、ただマヒロよりも天才で優秀で強かってだけなら、マヒロは彼女に対抗出来たと思うんですよ。彼にはどんな場面からでも相手の意表をついて卓袱台をひっくり返して思惑を台無しにするフレキシブルで奔放なスタイルが身についている。だから、相手が常識的な思考の持ち主である以上、どれだけマヒロよりも優秀で有能でも対抗し逆転できる要素が残っているはずなのだ。
ところがーーー!
そのマヒロよりも優秀で賢明で強かで陰険で清廉なのに、マヒロよりも自由奔放でフレキシブルで非常識で横暴だったりした人が居たら、そんなもんマヒロじゃ絶対敵わないよ!!
これがルナスみたいにただ奔放で横暴なだけのアホの娘だったら、口八丁手八丁でいくらでも騙くらかせる。
これがユリカみたいな思慮深い知性的な娘だったら、奇想天外な手段でいくらでも出し抜ける。
でも、シャルロッテは駄目だ。どうやったって無理だ。彼女にだけはもうマヒロでは頭があがらない。
マヒロが敵わないのは、あらゆる面がマヒロを上回っているからってえだけじゃない。それを前提とした上で、マヒロとシャルロッテの関係が同志でも仲間でも共犯でも恋人でもなく、お姉ちゃんと弟、というそれにハマってしまった事が最大の要因だ。

弟は、お姉ちゃんの傍若無人には絶対に逆らえない!
これは世界の真理である。

いや、意外だったのはシャルロッテの暴虐姉ちゃんっぷりもそうだったのだけれど、彼女がマヒロを完全に身内扱いしだした所だったんですよね。どれだけ信頼しても信用しても、仮にも相手は【蛇】である。一定の警戒と用心は欠かさない、と思ったんだけれど、ちょっと無防備なくらいの距離感で接してるんですよね。それこそ、ルナスやユリカたち姉妹と接するのと同じように。まるで家族のような無造作さで。もしかしたら、一応の婚約者であるルナスよりも、マヒロに対して気安いようにすら見える。ルナスはあれでマヒロが【蛇】であるという意識を常に欠かしてませんしね。それを踏まえても、マヒロが気になって仕方ないというところが可愛らしいのですが。
そう考えると、ルナスが真剣にマヒロをシャルロッテに盗られるんじゃないかと心配してるのはあながち杞憂じゃないのかもなあ。完全にマヒロ、シャルロッテのお気に入りの玩具になってるし。
実際は、シャルロッテはマヒロのことをこれっぽっちも信頼も信用もしてないのかもしれないのでしょうし、根本的に利用し利用されるという関係なのでしょうけれど、それとお姉ちゃんとして弟をいたぶ……、振りまわ……、可愛がるのは別と分けて考えているのか合わせて考えているのか、いずれにしてもあのマヒロをほぼ完全に掌中に収めてしまったのだから尊敬に値する。
これ、今後どれだけマヒロが羽目外してムチャクチャやっても、手綱を引きちぎって制御下から離れてしまっても、仮にシャルロットの思惑を上回っても、一度築かれてしまったお姉ちゃんと弟という上下関係と親身な構図はもう崩れないぞ、これ。
まあ現段階でマヒロとシャルロットの描いている未来図はほぼ重なっているようですしね。
ジェスとなんやかんやと絡みのあるユリカは別としても、もしかしてマヒロの三姉妹まとめて嫁に寄越しやがれ、という要求はあながち的外れな話で終わらないかもしれない。マヒロとシャルロッテの予想外の息の合いっぷりは、ほんとにお似合いでしたし。
ルナス、超がんばらないと本気で盗られるぞ、これ。パパ皇帝のマヒロへの過剰なくらいの敵愾心も、野生のパパの本能が囁いているに違いありません。
個人的にはもう、ルナスとシャルロッテ両方いただきます、は大いにアリなんですけどね。二人とも逃すにゃ魅力的すぎでしょう。

林トモアキ作品感想