スメラギガタリ〈2〉外道陰陽篇 (メディアワークス文庫)

【スメラギガタリ 弐.外道陰陽篇】 宇野朴人/きくらげ メディアワークス文庫

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 反乱の首謀者として陰陽寮に身柄を拘束され、裁きを待つ身となった在野の陰陽師・芦屋道代。だが、思いもよらぬ発言で仮釈放の特別措置を引き出す。三枝介や幾多郎、さらには陰陽寮からの監視役を伴って彼女が向かった先は、自らの故郷である芦屋道満に縁の地。一方、そんな道代の後を追って帝都を出奔した夜統は、旅先で雨宮潤という霊媒の少女と出会い、平安の世に名を馳せた二人の大陰陽師へと繋がる雨宮家の宿業に踏み込んでいく。だが、その夜統の後を追って澄香内親王殿下までが皇居を抜け出したことで、多忙な晴見の心労は続々と重なり……。疾風怒濤の第二幕、開演!
この作品のタイトル、【スメラギガタリ】って単純に一巻で新皇平将門公が出ていたことから付けただけで特に深い意味など無いように捉えていたのだけれど、参ったなあ、そういう事だったのか。つまり第一巻から実は一切ブレることなく「皇を語る」物語として成立してたのだな。平将門の存在は地味にミスリードを誘っていたとも言えるな、これは。
とまあ、物語としては重要な転機を迎える第二巻なのだけれど、本編の方は古の平安の世に安倍晴明と芦屋道満の残した因果にまつわる昔話と、そのツケを両血統の末裔たる土御門晴海と芦屋道代が協力して払うことになる現代編が主題として描かれる事になる。
それはいいとして、この世界、ちょっと霊障が多すぎないか!? 水神奉納の儀を無理やり滞らしていた為に土地が不安定になっていた、という理由もあるんだろうけれど、毎日雨宮の娘さんが集落を走りまわって何軒も霊障を解いて回らないといけないって、ちょっとしたパンデミックだぞ。しかも、未熟な彼女でも何とか対処出来る案件ばかりでそれなのだから、相応に深刻な案件も含めると一体どういう状況になっているのか。
これが普通の日常レベルだというのなら、この世界ちょっと怖い。
こんな規模で霊障が発生しているにも関わらず、陰陽寮以外の在野の術師に術の使用が制限されているとなると、そりゃあ反乱も起こりますわ。完全に一般市民の生活を脅かすレベルの話になっている。下手すりゃ国ごと根の国底の国へと堕ちるぞ。
その意味でも、現在の陰陽寮の頭が晴見となり、権威主義に凝り固まった保守派の妨害を払いつつシステムの改革を成そうとし、個人的な感情は別としても在野の術師の中でも大きな影響力を誇る芦屋道代と協力体制を取る方向へと舵取り出来たのは大きい。晴見姉ちゃんは、術師としても人間としても道代に敬意を抱きつつも、女として道代のこと大嫌いっぽいけどなあ(苦笑 てっきり二人の気性からして意気投合するかと思ってたんだが。
ただ道代さんの方は全然女っぽくないんですよね。気質からして女性的な部分が非常に少ない。母性よりも父性の持ち主っぽいし、そもそもお姉さんというより殆ど頼れる兄貴じゃないか、この人。ひたすら性根が男前だし。果たして、ご先祖である道満さんよりも男前じゃね? 道満さんは生真面目な分、どうも一生懸命になりすぎて余裕がなさそうでしたし。そう言えば、道満さん、芦屋という一族を残している以上ちゃんと妻帯して子供ももうけたのだろうけれど、やっぱりお相手はあの人なんだろうか。そうとしか思えないのだけれど、その辺明言してくれなかったからなあ。気になるといえば気になる。
さて、陰陽師と言えばこの人、とも言うべき大陰陽師安倍晴明がこの物語にも登場してきたのですが、またぞろ凄い人だったなあ。ただ、浮世離れしている割に俗っぽいところもあって、妙な愛嬌があるんですよね。何となくこの人が怖がられると同時に、何だかんだと好かれていたような気がする。道満が晴明の所業に苦笑と呆れを交えながらも最後まで敬愛の念を抱き続けたように。実際この人って、史実でも相当にやんちゃっぽいんだよなあ。まあ、恩恵に預かること未来までそれこそ大量にあるのだけれど、それと同じくらい未来にまで大迷惑を残してくれちゃっているので、善悪の彼岸を越えているにしろ、とにかく困った人であるのは確かだな、うん。

と、在野と陰陽寮との軋轢も晴見と道代のお陰で何とかまとまる筋もみえてきたはずだったのに、此処に来てさらなる大混乱の元となる要素が、唐突に出てきたわけで。いったいなんでこうなった!?
振り返ってみると、彼は以前からずっとこの件について悩んでいた、ということなんだろうか。澄香殿下を澄ちゃんと愛称で呼ばないようにしていたのにも一定の理由があったのかもな。
しかし、その悩んだ末の結論がどうしてこう言うことになっているのか、彼の目論見も含めてまだ全然わからないだけに混乱ばかりが増しましていくのだけれど、まさか現在の体制を根こそぎひっくり返してやろうなんて事を考えているわけでもないだろうし、それとも朝霧の巫女よろしくあの御大が彼の心根を乗っ取っている訳でも、前後のやり取りを見ていると違うようだし、まったくどうなるんだ、これ。道代さんも、ここで晴見との共闘を崩してまでそちら側に付くとも思えないしなあ。
なにはともあれ次巻だ。次巻を早く。

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