神様のメモ帳 7 (電撃文庫 す 9-15)

【神様のメモ帳 7】 杉井光/岸田メル 電撃文庫

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アニメもついに放送スタート!
ニートティーン・ストーリー、第7弾の依頼者はアイドル!?


 クリスマスが近づき、探偵事務所のそばにあるホームレス公園の改装工事が始まろうとしていた。そんなある日、事務所にやってきた依頼客は、なんと売り出し中のアイドル歌手。子供の頃に失踪した父親そっくりのホームレスをその公園で見かけたのだという。
 父親捜しの過程で浮かび上がる、エアガンで武装したホームレス狩り集団。そして、なぜか探偵団を離脱する少佐。
「これは自分ひとりでかたをつける」
 やがて──事件が起きる。僕が探偵助手として体験した中で、最も奇怪なあの事件が……戦慄のニートティーン・ストーリー、第7弾!
ついにフィクサー扱いされるようにまでなってしまったナルミ。ヤクザやチャイニーズマフィアに顔きくだけじゃなく、バンドのプロモ活動を通じて何だかんだと芸能界にまで伝手ができちゃってるんだもんなあ。ある意味街の顔役、と言われても仕方ない。って、ただの高校生の園芸部が一体どういう有様になってしまっているのか。この子の将来は本当に想像できない。少なくともサラリーマンとかありえない。
「俺たちには家(ホーム)がない。それだけだ」

この七巻は、その帰るべき家を失ってしまった人たちの物語だ。路上生活者たちばかりではない。ホームレス狩りに没頭する若者たちもまた同じく帰る場所を無くしてしまった者たち。父が消え母が亡くなり立つべき地面もわからなくなり、フワフワと覚束無く訳もわからないまま芸能界を泳いでいる今回の依頼人、ユイもまた同様に帰るべき場所を失ったまま彷徨うホームレスなのだろう。そして、少佐もまた今回の事件を通じてホームだと思っていた場所をなくしてホームレスとなった一人だったと言える。
ユイが父親を探して逢おうとしていたのも、少佐が一人で事件を追いかけていたのも、それぞれに無くしたホームを取り戻そうとする抵抗だったのだ。
無駄だ。一度失ったものは、もう二度と取り戻せない。往々にしてそれが世の常である。
見つけたとしても、それはもうきっと別物なのだ。だけれど、一度ホームを失った人にとって、それが別物だろうと、幻想だろうと、失ったものを取り戻したかのような奇蹟そのものなのだろう。その奇蹟が惨劇の引き金を引いたのだとしても、それは確かに美しいものだったのだ。その人にとっての、ホームだったのだ。
ホームとは、帰る場所の事を言うのだそうだ。帰れる所とは、つまりどういう場所なんだろう。寛げる場所? 安らげる場所? 身も心も裸にして、ゆっくりと眠れる場所? 愛する人が待っていてくれる場所? 故郷のような場所?
わからない。厳密に区分など出来ない。ただ、ホームという言葉から生まれる各々の心象こそがそれぞれの正解なのだろう。そして、そんなホームを見つけた彼が幸せだったかなど問う必要などきっと何処にもないのだ。生き死にすらも越えて帰る場所を求める魂に、ただ帰りたいという想いに、幸不幸の理は意味をなさないのだから。

うしなったホームは取り戻せない。得られるのは、新しい家だけだ。ユイは新しい家を手に入れられたのだろうか。多分、出来たのだろう。自分の中に、確かなホームを。彼女はようやく、空っぽだった自らのホームに失った家族を迎え入れる事が出来た。そうしてようやく、そこは彼女の帰る場所になったのだ。
少佐にとってはどうだったのだろう。彼もまたナルミによって失ったホームと決別し、ニートとしての新たな寄る辺を手に入れたはずだ。多分、彼の僅かな変化が失ったものと得たものを示している。
そしてナルミは……。
「おまえ、窓の隙間から猫がするっと入ってきたら、土足で入るなって怒るのか?」
「え……?」
「そんな感じなんだ、おまえは。怒る気も失せる」
四代目の台詞だ。あの四代目の言葉だと思うと笑えてくるし、得心も行く。ナルミは、他人の家にずけずけと入っていっても、その人の特別な場所に入り込んでも、見逃して貰える奴なんだな。
でも、そんな彼にも帰る場所はある。彼のホームはアリスだ。最初から一貫して揺るがぬホームを持ち、その寄る辺の何たるかをはっきりと自覚しているナルミは今回の話についてはとても強かったと思う。
ただまあ……アリスのあのダダ甘を通り越しただだデレっぷりを見ていると、もう結婚して名実ともにホームにしちゃえよ、と思わないでもないよな。アリス、ナルミのこと好きすぎるだろう、あれじゃあw

本格的な一巻丸ごとの長編は4巻以来だから、2巻ぶりになるのか。やはり、神様のメモ帳はがっつりと長編かつ密度の濃い話でやってもらったほうが格段に面白い。堪能した。満足。

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