偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)

【偽りのドラグーン 5】 三上延/椎名優 電撃文庫

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生き残ったほうが本物のヴィクトルだ──
宿命の対決迫る!!


 偽りの王子であることが暴かれたジャン。だが、彼は自分こそがヴィクトルであると主張する──偽物は自分が討つと宣言をして。それはジャン・アバディーンの名を捨てるということであり、二度と本当の自分に戻れなくなることを意味していた。
 そして、すべての決着をつけるべく、ジャンは驚くべき秘策を編み出す。その姿は神童と呼ばれたヴィクトルそのもので。物語はついにクライマックスへ!!
なにやら最後の最後になって、ヴィクトルとグロリア王女に全部持って行かれてしまった気がする。クリスとティアナとジャンの関係が結局何もハッキリしないままなあなあで終わってしまった事もあって、むしろヴィクトルとグロリアの悲恋のイメージが強く焼き付いてしまった。二人とも、それぞれに強烈で余人には犯し難い感情を滾らせていたからこそ、敵役としての存在感が際立っていたんですよね。それだけに、そのエネルギーの方向性がお互いの欠落を埋めあう形での激しい情熱へとスライドしてしまうと、カップルとしての存在感も段違いになってしまう。それが悲劇で終わるのなら尚更である。
世界への憎悪、復讐心によって親も兄弟も国も何もかもすべてを裏切った男が、純粋に愛する人の為に戦い、生きようとする。それは最も己の個に拘った生き様と言えるだろう。対して弟は、本当の自分を捨て去る形でようやく兄に立ち向かう覚悟を決める事が出来た。ジャンが自らを捨ててまで守りたかったものとは何なのだろう。自分を裏切った兄を憎むでもなく、どこか透徹とした姿勢で戦いに赴いたジャン。彼に兄と戦い彼を討つ覚悟と決意を固めさせたのは、ティアナの献身でもクリスの愛情でもなく、これまでの戦争で彼が味わった辛酸であり、目の当たりにした悲劇であり、戦火に焼かれる民衆の姿であり、銃火に倒れていく兵士たちの骸だった事を思えば、彼はまさに王族として自分が為すべき事を思い定めたのだろう。それは、皮肉にも皇太子だった兄と政治に関わる事がなかっただろう弟の、本来辿るべき道とは真逆の立ち位置になったと言える。弟も、ごく最近まで個人的な復讐心を原動力としていたのに、こうも辿った末が違ったものになるとはねえ。
さらに皮肉な見方をすると、ライトノベル的にはむしろ主人公の行動規範はひどく個人的であるケースが多々見受けられるんですよね。だからという訳じゃないのでしょうが、ヴィクトルとグロリアのロマンスが印象的だった理由の一旦くらいにはなるんじゃないでしょうか。

今回ちょっとびっくりしたのが、マグノリア先生のキャラデザイン。この人、これまで挿絵に登場したことありましたっけ。あの容姿、かなり仰天したのですが。てっきり、いわゆる女性の体育教師的な見た目を想像していたので、アレは予想外だった。マグノリアとラフエッジの竜と人の道ならぬ関係も、もうちょっとじっくりと、そうティアナとジャンの関係の教導となるような形で描かれると期待していただけに、あの哀しい結末は残念だったなあ。それが逃れられぬ結果だとしても、ジャンたちに何かを残す形で終わって欲しかった。
それにしても、最後までガートルード学院長は無能のままだったなあw

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