影執事マルクの恋歌 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの恋歌】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

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マルク、エルミナ、カナメ。三人の恋の結末は?
「カナメ。あなたが好きです」マルクが口にした言葉を、エルミナは呆然と聞いていた。思わずその場から逃げ出してしまった彼女を、再び時計の音が包み込み……過去の記憶を旅するエルミナがたどり着いた気持ちとは?

これは仕方が無いことなのだけれど、やはり長編と短編を織り込んだパッチワークのスタイルとでは、話のダイナミックさに差が出てしまう。どれほど話の流れに上手く短編を織り込み綴っていても、一旦短編が終わる毎に一息ついてしまうので、一気呵成にクライマックスまで加速していくような盛り上がりにどうしても欠けてしまう。
これが今までと同じ幕間的な回だったら特に気にもならなかったのだけれど、マルク、エルミナ、カナメの三人の関係に決着がつく話であり、想いが成就して幸せが頂点へと達する回でもあり、何より次巻で完結というクライマックス直前という時節だったのがちょっと引っかかったんですよね。
個々の短編やそれを踏まえた上での中編の展開はそれ単体、つまりこの巻だけ見たならば相変わらず好みドストライクだっただけに、シリーズ全体を鑑みた上でのこの得られると思っていた加速が全然足りなかった感は非常に勿体無い感じだったんだよなあ。
とまあそんな話は置いておいて、今回の話に注視してみると、収まるべくして収まったのかなあ。マルクの未練タラタラな態度には苦笑を禁じえないのですが、二人の女の子を好きになってしまった輩としては、相応のケジメをつけたのではないでしょうか。カナメからすると辛い話ですけどねえ。彼女自身、後悔もないのでしょうし、マルクとエルミナを傍で見続ける覚悟みたいなものも決まっているようですしね。はたして、彼女がドミニクほどの透徹とした心境に至れるかはわかりませんけれど、あれだけカナメとエルミナの友情も熟成してしまえば、何となく上手く折り合いをつけてやっていけそうな気もしますし……二人とも独占欲はあんまり無さそうだしなあ。
結局ここにたどり着いてみると、この作品の一番芯となっている部分ってマルクとエルミナのラブストーリーだったんだ。今更何を、と言われるかも知れないけれど、彼と彼女の想いが成就することこそが根幹であって、他の要素というのは<アルス・マグナ>にしても契約者という存在にしても、バトルにしてもここから広がった枝葉なんですよね。そして幹がヴァレンシュタイン家に集った者たちの家族の絆であり、その芯となっているのがマルク、エルミナ、カナメの三角関係だった訳だ。
これ、バトル系ファンタジーと思ってたらちょっと間違うよね。むしろ、少女系レーベルによく見る恋愛ファンタジーに派としては近しい代物なのかもしれない。クライマックス直前になってようやくそんな風に捉える事が出来た。
なんでこのシリーズ、これだけ面白いしよくできている売れ線系統の作品なのに微妙にマイナーなんだろうと常々疑問だったんだが、かなり富士見ファンタジー文庫の王統からはズレた作品だったんだなあ。

とは言え、ラストはド派手にやってほしいものです。マルクをして、ウチの連中なら小国まるごと相手にしても勝てると言わしめた、ヴァレンシュタイン家の最強軍団。その真の力と家族の絆の真価を見せてくれるようなでっかい花火の大決戦。囚われのヒロインを救い出す、一大救出イベントを。
最後はこの大好きなヴァレンシュタイン家の奇人変人たちの制限なしの活躍を見てみたいじゃないですか。ハッピーエンドの大団円、期待しております。
あと、是非にもリンにもヴァレンシュタイン家に参加を。本人一度断ってますけど、ガールズトーク要員として彼女の存在が欠かせないことは、既にデート追跡行で証明されています。わりとセリア姉さんの趣味についていけそうな資質もあるようですし、適性はばっちりですよ!

シリーズ感想