ガンパレード・マーチ2K北海道独立 4 (電撃文庫 J 17-34)

【ガンパレード・マーチ2K北海道独立 4】 榊一郎/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

Amazon

 外国人師団を私兵化し、北海道共和国の実質的な支配者に収まった死の商人・樺山亮平の野望は、幻獣の知床半島上陸によって潰えようとしていた。日本自衛軍は道東に集中している樺山財閥の工場を次々と破壊し、さらに南下する幻獣の大群を迎え撃つべく着々と準備を整えつつあった。一方、圧倒的な破壊力を誇る人型戦車・神威の正体を探り、これを抑えるべく、5121小隊は総力を結集し、芝村舞は神威のパイロットと接触。この地で世にも凄惨な人体実験が行われていたことを知る。正義のために、目の前で苦しんでいる被験体の少年少女のために、舞は、実験施設の破壊を決意する。
 北海道独立シリーズ最終章―― !
シコルスキー、案外と小物だったなあ。陰謀家としてはカーミラの兄貴と比べても中途半端だし、王器も愚物とはいえ九州で戦った西王の方がよっぽどスケールが大きかった。シコルスキーに与えられていたアドバンテージは本当ならかなり大きかったはずなんですよ。幻獣としての存在を知られていなかった上に北海道行政、軍政にガッチリと食い込むポディションにあり、幻獣軍を自由に引き込める環境にあった以上、日本に対して東北戦役を上回る完全な奇襲を食らわせられるだけの位置に居たんですよね。それがなし崩しに正体をロシア人たちにばらしてしまい、せっかくの幻獣軍も逐次投入で最大の効果を発揮する最適な場所に最初の一撃を与える事に盛大に失敗した上に、自衛軍に迎撃の体勢を整えられてしまった。
そこで行われたのは、圧倒的な火力によって敵の侵攻を蹂躙し、兵の危険と被害を最小限に敵への損害を最大限に与えるという、善行が思い描いていた英雄を必要としない戦場。
九州戦役以来、いや人類が幻獣の侵攻を受けて以来、これほど一方的に幻獣に圧勝してみせたのって初めてなんじゃないだろうか。
此処に来て自衛軍の対幻獣戦戦術はほぼ熟成の域に達したように見える。少なくとも、今までみたいな数で圧倒するだけの戦い方では、幻獣側はよっぽど戦力比がないと押し切れないでしょう。幻獣側にそれなり以上の将帥でもいない限りは。個々の幻獣の質も九州戦役時代と比べるとどうやら落ちてきているようですし。
とはいえ、幻獣は世界中へと侵攻しているわけで、さらに幻獣の中でも何らかの勢力分布があるようなので、極東地域の幻獣の質の低下は何らかの形でパワーバランスを崩す事となる可能性もあるかもしれないんだよなあ。ただ、カーミラとシベリア王が居る以上、他の地域の幻獣が押し寄せてくる、という大乱は早々なさそうだけれど。カーミラはともかく、シベリア王は相当の力持ってるみたいだし。
とはいえ、幻獣側だけじゃなく人間側も国際問題が持ち上がりそうなんだよな。北海道共和国崩壊の推移を見ていると、アメリカの蠢動が激しくなっているようだし。どうやらシリーズ続くとして、次の相手はアメリカになりそうな予感。さすがに直接アメリカと戦争、なんてことにはなるはずないだろうけれど、パワーゲームに絡んだ非公式の暗闘が繰り広げられそうだ。とはいえ、この世界の日本は防諜能力べらぼうに高そうだし、対幻獣戦の経験値が戦場から遠いアメリカとは段違いなんですよね。あの北海道に潜入したアメリカの特殊部隊が対幻獣戦のノウハウが皆無だったことからあっさり全滅していた一件は注目に値するんじゃないだろうか。

難民の武装化と暴動の問題は、とりあえず幻獣の精神操作が背後に介在していた、という形で問題を処理していたけれど、これって幻獣が絡まなくてもいずれ起こっていた問題なんだろうなあ。というか、幻獣が絡んでいてよかったね、って話だ。対馬の事件、詳しくは語られてないけれど、もし表沙汰になったら真相がどうだろうと国民の難民への意識は最悪に転じるだろう、これ。大原首相からすると、今回の一件は渡りに船だったのかもしれない。北海道の行政システムを刷新出来た上に、中国、ロシア難民との間に拗れた問題の悪い部分を幻獣のせいに押し付けて、何とか対話と交流が叶うようになり、ある程度の制御が効くようになったんだから、ある意味シコルスキー様様なんじゃないだろうか。まあ今後は北海道の事も難民の事も放置じゃなく、ちゃんと関わって整えて行かないといけないから、責任は重大だろうけど。

とりあえず、神威関係が悲惨な結果に終わらず、ある程度ハッピーエンドで済んでくれたのは良かったですよ。あれが流れのままに救われない犠牲者が出ていたら、正義の砦を自認する5121の面々へのダメージ大きかっただろうからなあ。良かった良かった。

シリーズ感想