ベン・トー 7.5  箸休め 〜Wolves, be ambitious!〜 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

【ベン・トー 7.5 箸休め 〜Wolves, be ambitious!〜】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫

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半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋たちHP(ハーフプライサー)同好会は、槍水の妹・茉莉花のおねだりに端を発した一泊二日の旅行に行くことに! 季節外れの観光地に向かう一同だったが、途中で予期せぬアクシデントに遭ってしまう。そこへかつて出会ったあいつが現れ…!?
その他に、佐藤たちの旅行のウラで静かに起きた著莪とその友人たちの日常編や、ウェブ掲載された短編、雑誌連載で大反響をよんだ「間食版」も書き下ろし分を加えて収録! もはや短編集ではないボリューム感満点でお届けする、メガ盛りの箸休め、庶民派シリアスギャグアクション、狼が大志を抱く7.5巻!!

【1章 3.5倍】
サラリーマンレッド再び!! 冒頭、恒例の佐藤の中学時代のクラスメイトの武勇伝に腹を抱えて大爆笑し、体も温まったところでいざ、旅行編である。って、初っ端から掴みが濃すぎるよ、このシリーズ。延々と中学時代や佐藤家の過去のエピソード書き綴るだけでも死ぬほど面白い作品が出来てしまいそうだ。こんだけ腹が痛くなるほど笑える話ってそうそう無いぞ。
さて、旅行編においてどうやらサラリーマンレッドは準レギュラー化してしまったらしい。こいつ、そろそろ会社クビになるんじゃないのか? 色々と思い込みの激しい人ではあるが、決して悪い人ではないしこんな報われない人生を歩んでしまう人じゃないと思うんだが、世の中だいたいこのたぐいの人は七転八倒して面白い方へと転げ落ちていくのである。ご愁傷さま。
面白いのが、普段の半額弁当争奪戦が格闘強奪戦であるのに対し、旅行時における駅弁の場合は電車の発車時間を睨んだ障害物競走的なタイムアタックになるところ。普段の狼同士の戦いとはかなり毛色が違っている。前回の妨害ありの競争と違って、今回は文字通りのタイムアタック。それも事前に入念に作戦を練った上での協力プレイ。新鮮さの中に見ごたえもあって、面白かった。さらば、サラリーマンレッド!!
「うなぎ茶漬け弁当」ウマそうだなあ。めちゃくちゃ美味そうだなあ……。

旅館では白梅さんの若奥様というか若女将らしい上品な佇まいが拝めて大満足。このシリーズ、女性陣の数は多いけれど本気で佐藤とカップルになれそうなのって、著莪を除けばこの白梅だけのような気がする。まあ、白梅の場合佐藤にお似合うというよりも、賢妻としてどんな男だろうと見事に立てつつ完全に首根っこ抑えて理想的な家庭を作ってしまいそうなスペックの高さの持ち主なのだろう。
まさにパーフェクト嫁、なのだが残念ながら真性の百合であるために男全般に興味皆無なのだ。なんというスペックの無駄!!

【間食版】
ジャンプSQの漫画連載にオマケとして掲載されていたという掌編。さり気なく今までで初めて見る、槍水先輩の一年生時の記録である。【魔導士】こと金城との先輩後輩関係。いったいどんな風なのだろうとは気になっていたのだけれど、これホントに懐いてたんだなあ。慕っている、というのを通り越して子犬みたいに懐いている。色々と構ってもらえるのが嬉しくて仕方ない、という金城と一緒にスーパーに居る時間が楽しくて仕方ない、というのがひしひしと伝わってくる。金城は金城で、仙のこと可愛くて仕方なかったんだなあ。ただ、まだこの時点では仲のよい先輩後輩、にとどまってたんだろか。烏頭がまだ仙のこと目の敵にしてないもんね。まだ仲が拗れていない頃の烏頭先輩は、あれはあれで仙のことかわいがってたんだなあ。確かに、この頃の仙って年上から無条件で可愛がられるような懐っこさがあるんですよね。なるほど、妹の茉莉花はこの頃の仙とよく似てるわ。
過去のHP部がどんな雰囲気だったのか、今までずっと謎のベールに覆い隠されていたのでちょっとすっきりした。でも、烏頭の一件以降にさらにこのHP部壊れていくんだよなあ。ほんとに何があったんだろう。


【モモとカズラと】
紫華先輩ェ……。
HP部とは関係ない、槍水先輩がいつも学校でつるんでいる二人の友人、木之下桃と紫華鬘の人となり、なんというかこいつらもか……。別に半額弁当を狙い打つ狼たちだけが変人じゃないんだよな、この作品。押し並べて変人ばかりなんだ、うん。
カズラさん、途中までは極普通の人に見えてたのに。というか本人は全然そんなつもりないんですよね。なのに、行動は明らかに偏執的なストーカー。いや、むしろ佐藤にイカレて頭がそれだけになってムチャクチャやらかす、というのよりも、逆に何の執着もないにも関わらずナチュラルにああいう行動を取ってしまうほうが怖くないか!?


【天使の贈り物】
……表沙汰にならない勢いで既に犠牲者出てるんじゃないか? 偶然死体が発見できない形でどうにかなってしまって、たまたま捜索願が出されないように状況が転がってしまって、とか。あれで死人が出ていない方が不思議だ。【死神】あせび。著莪もよくまあ付き合っていられるものである。そのへんわりと素直に尊敬する。あれ、よっぽどこまめにお札仕入れてるんだろうし。忘れたら本気で死にかねんもんなあ。
なんというか、神仏のご利益ってほんとにあるんだなあ、と実感できるお話である。


【男子寮と従姉とバレンタインデー】
ごちそうさまです。
なにこの普通にチョコあげたりもらったりするよりも濃厚な話は。著莪と佐藤の関係ってむしろチョコやり取りする方が野暮なんじゃないのか!? これは矢部くんや神田くんが佐藤を追い出すのも無理ないわ。
佐藤って絶対恋人出来ても、著莪を優先するよな、これ。しかも、何の葛藤も疑問も抱かず。こりゃあかんは。鉄板とかいう以前に既に終了してる。


【ある日の著莪あやめ】
あのサッパリとして快活な性格から、普通に男友達も居て仲良く遊んでいるだろうなあ、とは思っていたけれど、仲良くしているからこそ、佐藤との接し方との明確な違いがくっきりと浮き出てくるわけで。
あれだけベタベタと佐藤と男女の垣根を平然と乗り越えるようなスキンシップを繰り返し、自分の財布のように佐藤にたかり倒している著莪が、実は他人とはちゃんとキッパリ一線を画して、体には軽いスキンシップだろうと一切触れさせず、ちょっとした食べ物飲み物の奢りすらやり取りしようといない事にはなかなか驚かされた。軽そうに見えて、むしろめちゃくちゃ身持ち固いのか、著莪って!!
しかも、マジ告白されて断った上で理想の男のタイプを聞かれた時の著莪が動転したまま答えてしまった、恐らくは何も繕わない素の理想像。これはもう、明らかに特定の誰かを指している一言で……あー、咄嗟に出ちゃったかー。こりゃ、著莪当人もびっくりだ。びっくりだけど、納得だろうなー。もう鉄板とか本命とかどころの話じゃなく、好きとか愛してるとか通り越してるよね。難しいことなんて何もない、ややこしい事になんて陥らない。もうどうしようもないわ、これは。
幼なじみスキーとして、今まで色んなカップル嗜んできましたけど、この二人だけはホンマ凄いわ。こんな凄い幼なじみ見たことないわー。堪能させていただきました、はい。

そういえば、久々に狼として戦う著莪を見たのだけれど、かなりの強豪になってるんじゃないですか、これ。二階堂と咄嗟に組んだとはいえ、あのオルトロス相手にイイ勝負して弁当もちゃんとゲットしているあたり。あんまり著莪が佐藤と同じ戦場で戦ってるシーン、最近は特に見ないので、本編ではそっちも久々に見たいものである。

にしても、短篇集というのは厚い、濃い、と特濃すぎる内容で。どこが一体箸休めだ!!
満足!

シリーズ感想