レンタルマギカ  争乱の魔法使いたち (角川スニーカー文庫)

【レンタルマギカ 争乱の魔法使いたち】 三田誠/piko スニーカー文庫

Amazon

世界を変える!
強大な2大組織がいよいよ激突!!
ジャッジを担う<アストラル>の勝利条件は――!?


魔術が世界を揺るがす『大魔術決闘(グラン・フェーデ)』の幕がきっておとされた! 穂波や猫屋敷ら魔法使いを罰する魔法使いによって編成された<協会>。そして彼らに仇なして来た<王冠(ケテル)>の座(セフィラー)タブラ・ラサ率いる<螺旋なる蛇(オビオン)>の血戦はもはや必然。しかしこの決闘を取り仕切る<アストラル>伊庭いつきにはどちらも勝たせるつもりはなかった。その秘策とは――!! いつきの『力』を信じる者たちも続々集結、波乱を含み魔術の時間(マギ・ナイト)は加速する!
仲介役として『大魔術決闘(グラン・フェーデ)』を取り仕切ることで、<協会>と<螺旋なる蛇(オビオン)>の全面戦争をコントロール可能な最小単位の決闘へと制限する事に成功した<アストラル>。とは言え、戦いの形が変わったとは言え勝敗を決する以上は、それぞれの目的を鑑みるに勝者が敗者を滅ぼすのは自明の理。結局、戦争の規模こそ制限できたものの、結果はこのままでは何も変わらない状況だったんですよね。これをいつきがどうするつもりなのか、<協会>とも<螺旋なる蛇(オビオン)>とも立場を異にする、魔術世界を動かすプレイヤーとして、彼が何を目論み、何を目指しているのか。それが開陳されるのをわくわくして待っていたのですが……そう来たかーー!! 決闘のジャッジとなった以上中立の立場でどうやって両者の戦いに介入するのか謎だったのだが、まさかそんなからくりで、ジャッジである<アストラル>が実質第三極としてこの決闘に参加する形に出来るとは……発想の転換だ。それと同時に、参加人数が絞られる決闘だからこそ、大組織とは比べるべくもない零細魔術結社に過ぎないアストラルが何とか渡り合える形になっているわけで、最初からそのつもりだったのか。
これは御見逸しました。
興味深いことに、この時点で<アストラル>って魔術世界の異端、ではなくなってるんですよね。図らずも、フェーデの前にいつきに会いに来た協会側の参戦者の夫婦が語ったように、新興勢力<アストラル>に注目が集まっているんですよね。その中にはおどろくべきことに好意的な形で彼らを見る向きが少なからず存在しているのです。魔法使いの中にはいつきの生み出した新しい流れに着目し、彼の言動に目を惹かれ、彼の考え方を支持する世論が着実に醸成されてはじめている。魔法使いたちの世論を代表する<協会><螺旋なる蛇(オビオン)>と並ぶかまではわからないけれど、確かに魔法使いの未来を担う第三の勢力として認知されつつあるわけです。
その支持者の代表とも言うべき人たちが、今回自然と集まり、いつきに手を差し伸べてくれた人たちなのでしょう。いつき社長率いる<アストラル>と関わり、彼の人柄に魅了され、彼の語る魔法使いの幸せに共感を抱いてくれた人たちが、この難局の渦中に頼まれずとも自らの意志で、みんないつきを助けるために続々と集まってきてくれたのです。
これは痺れたなあ。
それでも、いつきにとっては今回の決闘は<アストラル>の限界を超えることを求められた綱渡りの繰り返しのはずで、それこそ思惑や企みが全部うまく行かないとすぐさま破綻してしまいそうなギリギリの瀬戸際が続いていたはず。
それを、まさかあんな形で横から介入してきて、いつきの思惑を台無しにしかねない形でひっかきまわす人が出てくるなんて……思わず「なんなんだ、こいつは!」と唸ってしまいましたよ。
誰もが予期せぬ第四極の出現。<アストラル>にして今の<アストラル>とは考え方がまるで違うもう一つの<アストラル>。魔法が使えない魔法使い。先代<アストラル>社長「伊庭司」の登場。まさか、こんな嫌らしい形で、それもいつきと対立する形で現れるなんて。世界の片隅でこっそりと復活した時から不気味だ不気味だとは思っていたけれど、これはとびっきりに気持ち悪い。明らかに、伊庭いつきとは相容れない何かだ。
それなのに、隻蓮さんや旧アストラルの社員だった人たちが、何故か伊庭司と同調して動き出してるんですよね。どうも心情的にはいつき側に居てくれるようなのに、何らかの理由で前社長に理ありと彼の側に立って動き始めている。前社長の目論みの一端は、一部だけですが見えてきたわけですが……それでも底知れなさすぎるよ、この人は。
明らかに計算外の旧<アストラル>の介入によって、いつきの計算は大幅に狂いだしているはず。ただでさえ、<協会>も<螺旋なる蛇(オビオン)>も簡単にいつきに良いように振り回されるような甘い連中ではなく、普通にやっていても危ないにも関わらず、さらに状況が混沌化して、果たして大丈夫なんだろうか。此処に来てじりじりと不安ばかりが募っていく。
とりあえずダフネさん、とっとと因縁叩き伏せて、隻蓮さんを篭絡して取り込んでくださいよ。ユーダイクスはともかく、みんなの兄貴分であった隻蓮さんが敵対していると足元が覚束ない感じになって心細くて仕方ないんですから。

三田誠作品感想