銃姫 −Phantom Pain−(1) (シリウスコミックス)

【銃姫 −Phantom Pain− 1】 漫画:椋本夏夜/原作:高殿円 シリウスKC

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最初はただのコミカライズかと思っていたので食指も動いていなかったのだけれど、原作のスピンオフ。しかも漫画を手がけるのが椋本夏夜。トドメに肝心の物語が原作【銃姫】の完結後のアフターストーリーときた。これは見たい! すごく見たい! という事で俄然読む気満々で勇んで購入したのですが……ちょっ、100年後!?
あのラストの大海嘯による文明崩壊後から100年が経ったという時代背景。
……これ、もしかして本格的に【銃姫】と【パルメニアシリーズ】を繋ぐ幕間の話になるんだろうか。
大海嘯からパルメニア建国までってどれくらい期間があいているんだろう。高殿円ワールドの年表って何処かにないもんだろうか。さすがに同人誌にまで手を伸ばすのは躊躇われるところだけれど。
アンゲリオン星教は既にこの時代にはもう立派な宗教組織として確立しているし、半人半霊(ヘスペリアン)という後のパルメニアシリーズでも時折重要な登場人物の中に出現する種族?もここで現れているし。
というか、ヘスペリアンなんてものが生まれ始めたキッカケは大海嘯にあったのか。でも、宿主を失って溢れ出した精霊が人間の死体に宿り、死霊みたいになってよみがえる、なんて話は聞いた覚えがないんですよね。いずれこの問題は解決されるのだろうけれど、ヘスペリアンだけは生まれる余地が残ってしまったんだろうか。
そういえばヘスペリアンって無性別のはずなんだが、このマテリアって完全に女の子だよなあ。胸あるし。のちのアルフォンスやオリガロッドは無性別から女性化しているけれど、マテリアも既に転化したあと? どうも、パルメニアの時代とやや設定がずれている、あるいはまだ法則が違っている、という可能性も考えておいた方がいいかもしれない。
マテリアの容姿が銀髪というのもなかなか興味深い。初代パルメニア王オリガロッド・スカルディオから続くスカルディオ一族の特徴が、色素の薄い髪、銀髪なんですよね。ただ、スカルディオの瞳の色が碧であるのに対して、このマテリアの目は鮮やかな紅ということで関係ないのかなーとは思ったのですが、裏表紙に描かれている主人公のコジの眼の色、はっきりとした色彩が出ていないので判断しづらいのですがこれ……碧眼じゃないのか?
わざわざ銀髪ヒロイン出すからには、何らかの意味があると捉えたほうが面白いと思うんですよね……。

しかし、まだ魔銃士(クロンゼーダー)が残ってたとはなあ。てっきり、あの大海嘯で殆どの魔法と銃は失われてしまったものだとばかり思っていた。実際、パルメニアの時代にはもう「銃」なんて残っていなかったし。
ただ、確かに魔銃士が存在していなかったらそれはもう【銃姫】とは違う作品になっちゃうと言えばそうなんだよなあ。でも大海嘯前と比べても相当に希少な存在になっているみたいだし、そもそも教会の高位の聖職者以外には使えない、みたいな事も作中では言われていることから考えても、使える人間はかなり限定されるみたいだな、これ。
そして、主人公の「コジ」の方ですよ。神殿のキメラってどういう意味なんだろう。あの異形といい、血の異様さといい、色々と「銃姫」関連で予想は幾つか立てられるんだが……ふーむ。

と、設定ばかりを追うのではなく、ヒロインと主人公の関係もまたいいんですよね。鉄面皮でどこか浮世離れした天然、でコジをヘタレ呼ばわりして憚らない唯我独尊なヒロインのマテリアに、そんな彼女に子犬のように付き従う、健気でヘタレな少年コジ。このツンツンしながらも、どこか常識がなく一本ズレてるところに愛嬌があって、なんだかんだと主人公の事を気にかけてやまないヒロインは、さすがは高殿円作品のヒロインと言ったところか。この手のキャラはデレはじめると、エラいことになるんだよなあ。既にコジの方はデッレデレのご様子だし、二人の関係がどう進展していくのかも興味津津である。
椋本さんの繊細ながら綺麗で丁寧なデザインは、残酷で無慈悲な話の中にも、決して消えない優しさと慈しみを引き立たせてくれる。切なさの終わりにかすかに灯る暖かな想いが伝わる結末が、何かホッとさせてくれる原作小説【銃姫】を知らなくても、この作品単体で楽しめる漫画になってます。
期待してた以上に手応えありましたね。嬉しいことに、二ヶ月連続刊行で来月には2巻が出る模様。これは次、楽しみだ。