変愛サイケデリック 2 (電撃文庫 ま)

【変愛サイケデリック 2】  間宮夏生/白味噌 電撃文庫

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友情ってチョー不変っ!!!!!!!!!!!!!!

 変人・彩家亭理子の親友・円馬佐那の秘密を知った千光生徒会の原犀斗。執拗なほど正義に寄生する“完璧常人”の彼は、佐那の退学を提案することで気に食わない理子を陥れようと画策。裏工作の準備万端で千光高校の全校生徒を巻き込んだ疑似裁判『千光大会議』を立ち上げるのだが──。
『千光大会議』では、代表生徒として『月光』の“あの2人”もちゃっかり登場の予感!?
 変人たちが贈る、異色の青春“変愛”ストーリー、超波乱の第2弾!

すげえな、荒れ狂う狂犬だった神宇知悠仁が、忠実な猟犬になってる。あの触るだけで切れそうな凄味はそのままに、訓練された猟犬のように理子の傍らに控えて静かに牙を剥いているような雰囲気で収まってるんですよね。
これは、佐那が自分の居場所を奪われ、存在意義を見失ってしまったと情緒不安定になるのも無理からぬところか。佐那が男の姿に拘る理由、理子との出会いとこれまで構築してきた関係性を鑑みると、彼女が悠仁の登場以来一巻から不安定になっていたのかがよくわかる。一巻読んだ時は、理子への恋愛感情みたいなものがあるせいか、と思っていたのですが、もっと深刻だったんだな。佐那は言わば、アイデンティティそのものを理子に依存していると見ていい。男の格好をしていたことも、そうしなければ理子をトラブルから守る用心棒の役割が果たせない、という理由からだ。理子を守ることを拠り所として彼女の傍に身を置き、理子の用心棒として立脚することで世間と繋がっていた佐那にとって、その役割を奪われることとは、世間との繋がりをなくしてしまうものでもあり、自分の存在意義そのものを見失うことであり、理子の傍にいる理由をもなくしてしまうことだったんだな。同時に、男でも女でもない何者でもない誰にとっても必要がないゼロになってしまう、という恐れが、一巻での暴走と、二巻になっても情緒不安定のままだった原因なのだろう。

今回の一件は、つまるところ理子と佐那のねじれたまま固まっていた関係を一旦解体し再編するために必要だった儀式と言えるのだろう。結局、理子と佐那のお互いの関係性への認識が完全に食い違ってたんだな。その為に、悠仁や伊庵、優衣という三人が理子の周りに集ったときに、佐那が自然と集団から弾かれ、それに理子が気づけなかったわけだ。『千光大会議』というイベントがあったとは言え、関係の再構築に一番積極的に動いたのが伊庵だというのがまた面白いですよね。前巻では、むしろ逆の動きをしていたのに。悠仁のみならず、伊庵もまた前回の一件を通じて大きく自分の方向性を変えた一人だったんだなあ。その原因というか、考えを改めるのに影響を及ぼしたのが佐那だったからこそ、彼女の為に動いたとも言えるのでしょうけれど、いずれにしてもなんだかんだと熱い男の子である。

しかしこれ、変愛ではあっても恋愛は無いんだなあ。いや、無いのかどうかはまだわからないけれど、主要人物間でこれほどカップリングが定まっていないのも珍しい。どうやら理子ー悠仁ラインはだいぶ消えたようだけれど、逆に悠仁と佐那の方にフラグが立った様な気もしないでもないし、伊庵が同性好きでありながら優衣をはじめあっちゃこっちゃで女性とのラインが太くなっていってるのはまた変な話である(笑
いやあ、理子と悠仁ってちょっとイメージ出来ないよなあ、と思ってたんだが、佐那と悠仁が結構いい空気感を出してたのには吹いた。あれ? 結構お似合いじゃね?

さて、肝心の『千光大会議』なんだが、正直、今回の原犀斗を中心とする生徒会の佐那への弾劾はいくら何でもムチャクチャなんですよね。確かに問題は問題だけれど、そこまで非難される事なのかと。まあ、男が女装して通ってたりしたら、退学扱いされるのもわかるのだけれど……というか、うーん、退学云々という話になるのは当然なのかな。ただ、原の論旨は感情と主観が入りすぎて居て、正義どころか正当性すら疑われるもので、ちょっといただけない。殆どヒステリーにしか見えないぞ。あれで生徒からは相応の人気があるというのがいささか想像できないなー。とはいえ、相手がこれでもか、と悪役に徹してくれたお陰でディスカッションそのものはなかなか面白かった。
折角ゲスト登場してくれた【月光】の葉子さんがもう少し重要な場面で存在感を魅せつけまくる活躍をみせてくれたら嬉しかったのだけれど、相変わらず野々宮くんを振り回す悪女っぷりを発揮しているようなので、堪能はさせてもらいました。
願わくば、【月光】組の話もまた続けてほしいなあ。

1巻感想