のうりん (GA文庫)

【のうりん】 白鳥士郎/切符 GA文庫

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 県立田茂農林高校――通称『のうりん』。
 そこは、農業に青春をかけた少年少女の集う、人類最後の楽え「牛が逃げたぞおおおぉぉぉぉ!!」
 うるさい! あらすじくらい静かに言わせてよ!!

 あー、おほん。ぼくの名前は畑耕作。ここ『のうりん』に通う、ちょっぴりアイドルオタクな高校生だ。
 そんなぼくの通う学校に転校してきたのは、憧れの超人気アイドル草壁ゆかたん……!?

 方言幼馴染、メガネ美少年、ラブリー小動物、巨乳少女! 妄想系女教師! パンツ! 足フェチ! そして、謎の転校生……ここには青春の全てがあるッ!!
 奇才・白鳥士郎が送る農業学園ラブコメディー! 今、収穫の秋!!


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ぶわははははははっっははははっ!! 反則、これ反則っ! わ・ら・い・死・ぬっ!
いやあ、これまで挿絵と文章を連動させて表現するという手法は何度か見たことがあったし、その度に上手いなあと感心してたものだけれど、なるほど挿絵に本文を乗っけるという手法は今まで見たことがない。これはコロンブスの卵だ。なんでその発想が今までなかったんだろうと思うくらい、簡単なことなのに。
実際はもちろん簡単じゃなく、作者とイラストレイターとのスケジュール合わせや、そもそもネタを効果的に使えるセンスがあるかどうかなど、実現困難な部分は多々あるのだろうけれど、この作品については完全に成功、完全勝利である。
もう、ひっくり返って笑ったもん。
事前に知っていたからまだしも、まったく何も知らずに最初のあのイラストを目の当たりにしていたら、もっと笑い転げてたかもしれない。知っててもあれだったもんなあ。いやいや、むしろP152/153の見開きの方が強烈だったことを考えるとさほど問題ではないのかもしれないな。
あのイラストは反則ですよ。もう、絵柄から違うじゃないですか。どれだけ気合入れて描いたんだ。あの荒みきって蔑みきった林檎の眼光が焼き付いて焼き付いて……もう、笑いがとまんないっ。

あまりにも頭のネジが外れきった登場人物のアホっぷりに、あの【ラディカルエレメント】の白鳥士郎が帰ってきたのだとしみじみ実感してしまった。これほど書いてる人の頭の中を覗きたくなるギャグコメディを書ける人は早々居ないもんなあ。
そもそも、主人公からヒロインからサブキャラに至るまで全員「アウト」なキャラってなんなんだよ。まともなやつが一人も居ない、というレベルを通り越して、アホと変態の国にいらっしゃい状態である。
特にベッキーはアウト。完全にアウト。もはや逮捕されても文句言えないくらいにアウト! アラサーならまだ笑い話で済むんだろうが、アラフォーでそれってもう救いようがないよ!! 四十前設定って鬼だな、作者!!
みのりも直にあんなんになってしまうんだろうか。この子もヒロインのはずなんだが、早晩ベッキー並に汚れそうだよなあ。現段階で残念を通り越して汚れ系に突入してしまってるし。こいつ、誰かなんとかしろよ! ……しまった、何とかできるほどまともな奴が一人も居ないし。
何故かコミュ力最低の林檎が、良心とも良識最後の砦とも思えてきた。ちなみにあくまで当社比であることは意識から遠ざけておこう。他社と比べると悲惨なことになるw

ギャグにコメディにコントにパロディと、ネタに事欠かない作品ではあるが、農業高校を舞台にしているだけあって、そちらの農業学校の日常に関する情報量については十分豊富なんですよね。今、サンデーで絶賛連載中の【銀の匙】にも負けず劣らず(ってか銀の匙ネタもあったな!)、むしろ文章である分、専門的だったり多岐に渡っていたりと知識欲を満たすには此方の方が確かなのかも。全シリーズでライトノベルとしては異常なほどの密度で、腰の据わった帆船時代の海洋モノとしての詳細で濃い知識を縦横に操っていた作者である。その手の知識の作中での扱い方にはかなりの信用がおけると言っていい。実際、へぇそうなんだー、と感心すること多々ありましたしねえ。
どうやら本当に農業学校の方に取材に行ってたみたいで、実地で色々見たり実際にやってみたりしたんだろうなあ。

さて、内容の方はというと、あまりにアホなキャラがアホばっかりしているお陰で話が進展しているのかしていないのか意識の俎上に載せる事をすっかり忘れていたんだが、いつの間にかちょっとイイ話になって終わってたよ。なんであんなアホな展開からイイ話になったのか、騙されたような気分だけどなっ!
と、転校してきた林檎の、耕作への態度や農林への馴染みっぷりには微妙な違和感を感じていて、ある仮定が頭の中に浮かんでいたんだが、最後のみのりの独白でほぼ確信に至った。少なくとも、みのりは最初から気が付いていたのか。もしかしたら、幼馴染達の過去からの関係に踏み込むようなそこそこシリアスな話が待っているのかもしれない。どんだけバカやってても【ラジカルエレメンツ】では恋愛問題についてはギャグでお茶を濁さず結構真面目に取り扱ったという経歴もあるので、ギャグとシリアスのスイッチの切替については既にお手の物でしょう。今回もラストでなんだかんだとイイ話に持ってってますしね。いずれにしても、本気で笑い転げたほど面白かったですから、次回も期待期待。いやあ、笑った笑った。