変態先輩と俺と彼女1 (富士見ファンタジア文庫 や 5-2-1)

【変態先輩と俺と彼女 1】 山田有/犬洞あん 富士見ファンタジア文庫

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俺に一歳年上の幼馴染がいる。彼女の名前は涼風せしる。
「私は今日ノーパンだよ」「ぶっ!!」「さぁ、どうするね? 柊一君」「……殴りますよ、先輩」
エメラルド色の瞳を持つ夢のような美少女で、見ての通り変態で、そのうえ天才でもある。高校入学早々も、<ハーレム団>の結成を宣言。止めようにも「ふんふん。抵抗されると逆に燃えるよ」と先輩の嗜虐心に火をつけることを熟知している俺は、とりあえず付き合うことに。しかし、そんな怪しい部活をぶっこわすべく品行方正と名高い完璧系女子・水谷詩織里が立ちはだかり!?
天才系変態ヒロイン・せしる先輩の暴走に巻き込まれる俺と彼女の明日はどっちだ!?
ドタバタ青春ウザカワラブコメ誕生!
いやいや、全然ウザくなんてないですよ、せしる先輩。それどころか、甘え上手でキュートでめちゃくちゃ可愛いじゃないですか!
変態はまさしく変態そのものなのですが、気持ち悪いなどという事は全然なく、むしろ愛嬌とチャーミングポイントになっているのが恐ろしいくらい。山田有という人はもう一つのシリーズ【スノウピー】の頃からそうなんですが、キャラクターが素っ頓狂に惚けていて、ちょっと斜め上にズレているにも関わらず、妙に品があるんですよね。それもツンと澄ましたようなとっつきの悪いお上品さではなく、人を不快にしない身奇麗さというか、涼やかや微笑ましさ愛らしさというものが、その突拍子のない言動の中にも常に備わっているのである。
それはこの【変態先輩】にも引き継がれていて、せしる先輩の変態的な言動にも不快感を催すものは一切ないんですよね。それどころか、主人公の柊一が好きで好きでたまらないという高揚した乙女心が随所にかいま見れて、ニヤニヤと微笑ましさが混ざったような笑みがこぼれてきてしまう。可愛いんですよ、この人本当に。
で、とうの柊一がまた一方的に振り回されているような子でもないところがまたいいのです。それこそ幼い頃からせしる先輩と一緒に過ごしてきただけあって、彼女の扱いについてはそれこそ完璧に近いくらいに慣れているのです。お陰で振り回されるどころか先回りして被害を最小限にとどめつつ、先輩当人が充分楽しめ、気持ちよく過ごせるように事を収拾していく達人なのである。また、そんな柊一の立ち振る舞いを先輩も周知していて、半ば柊一が自分の為に動いてくれることを期待して、甘えているフシもあるんですよね。
傍から見るとイチャイチャしているようにしか見えないという、結構な駄々甘カップルなのである。柊一もストッパー役を自認しているくせに、せしる先輩に対しては甘いの一言だし、彼女の素敵なところ、カッコイイところを常に近くで見ていたい、という気持ちを無自覚だけれどかなり行動の最優先項目としているみたいだし。

ところが、そんな名コンビの二人の前に、一人の撹乱要素が登場するのである。それが新たにクラスメイトになった完璧系との評判も名高い水谷詩織里。
この子がまた、滅茶苦茶可愛いんだわっ!
【スノウピー】にて可香谷ユリという強力なヒロインの魅力を把握している人は、水谷詩織里はあの可香谷ユリのラブコメ強化版と認識してもらったら早いだろう。
可香谷さんの強化版ですぜ!?
周囲の完璧という評判とは裏腹の全然完璧でない性格加減がむしろ、完璧でないからこそ完璧!!
やたらめったらの負けず嫌いで好戦的で短気で早とちり。でも素直で優しくびっくりするくらいのお人好し。そして、可香谷さんばりの純粋無垢なツンデレさん。デレへの振り幅がやたら大きいんだよなあ。そっぽを向いているくせに、好きで好きでたまらないという感情が春のお日様の光みたいにぽかぽかと伝わってくるのである。もうめちゃくちゃ可愛いのよ。
彼女の存在にはいつも余裕たっぷりのせしる先輩も大いに焦るくらい。
お陰で、二人の美少女から主人公はこれでもか、というくらいに好き好き光線を浴びるはめに。そんでもって、この柊一くんは恋愛感情のれの字もしらない木石みたいな男じゃないんですよね。決して察しがいい方ではないけれど、彼自身女の子を可愛いと思って落ち着きをなくしたり、その仕草や言動にドキドキを抑えられなくなったりというときめきを忘れていない多感な男子なのである。そんでもって、彼は彼でまだ異性に対してのそれには昇華していないとしても、せしる先輩が好きで好きでたまらないという感情をそれこそ先輩が送ってくるのと同じくらいの密度で放っているし、詩織里がギューッと伝えてくる大好き、という想いにドキドキしているのを隠さない。
まったく、どんなラブラブ空間だよ、この作品。

この一見異様にしてシンプルなタイトルは、まさにこの作品の中身をもっとも単純化した良いタイトルなのかもしれない。まさにこれ、変態先輩と、俺と、彼女、三人の三人による三人のためのラブコメディになってますもんね。それでいて、ただのイチャイチャラブコメと違うのは、主人公含めて登場人物全員が、山田有という作者特有の独特の文章のテンポによって描かれる、ちょっと斜め上にズレたおかしな、でも純心なキャラクターというアクセントがついているところなのでしょう。
甘ったるさばかりではない、胸のすくような清涼感と温かさが伴った作風は、やっぱり私にとっては大いに好みのストライクをついているようです。
うん、この作品大好きだわ。大いに堪能させて頂きました。【スノウピー】と並んで、これは長期シリーズになってってほしいな。