フルメタル・パニック! アナザー1 (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! アナザー 1】 大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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あの戦いから十数年……。
市ノ瀬達哉は都立陣代高校に通う、機械いじりが大好きな普通の高校生。無難な人生を楽しんでいた達哉だったが、ある日暴走した正体不明のASに突如襲われてしまう。殺される! そう思った瞬間、目の前に現れたのは、謎の美少女アデリーナだった。
しかし、大怪我を負っていた彼女は、善戦虚しく倒れてしまう。達哉はアデリーナと妹を守るため、触れたこともないASに乗り込むことに。その決断が、彼の運命を大きく変質させていく――。
SFアクションの金字塔「フルメタル・パニック!」の新たなストーリーが、ついに作戦開始!
これ、あらすじだけ見てると、まんまガンダムだよな。ある意味王道を踏んでいるとも言えるのだけれど……でも、このあらすじ間違ってはないけれど、実際に読んでみるとかなり印象変わってくるぞ。意外と地に足がついている話というか、熱血ロボットものではなくちゃんとフルメタらしいというか。
うん、そう。これ、ちゃんとフルメタなんですよ。無名の別の人が書くという話を聞いてからこっち、情報が幾ら出てきても、どうせフルメタとは似ても似つかない別物になって出てくるんだろう、という期待薄な感じしか見て取れなかったんですけどねえ……これがどうしてどうして。

面白い!!

いや、マジで面白い!!

ストーリー自体は、トラブルに見舞われASを動かすハメになった主人公がそのセンスを見込まれて、民間軍事会社にスカウトされ、そこでの生活に四苦八苦しながらもアデリーナに助けられながら周りに認められ、その才能を開花させていく、というわりとシンプルなものなのですが、逆に変にひねらずにシンプルなストーリーを丁寧に仕上げたのが良かったのかな。お陰で舞台となる既存のフルメタル・パニック!の世界観が引き立って、自然とあの宗介とかなめたちが駆け抜けたフルメタの世界と同じ地平の物語という感覚が、読んでいるうちに沸き立ってきて、ワクワクしてきてしまいましたよ。
勿体ぶらずに、フルメタのメインキャラの一人を登場させたのも影響大きかったのでしょう。そもそも、アデリーナが所属する民間軍事会社が、そのまま先のフルメタと直接つながった組織というのは大きな馴染める要素ですよ。あの人が今、こういう立場にいるなら、他の連中は今何してるんだろう、と気になって仕方なくなりますしねえ。
しかし、フルメタ最後の戦いから十一年って、何か理由があってこの歳月なのかしら? と疑問に思っていたのですが……これもシンプルに、フルメタの作中時間から、現実の2011年にタイムテーブルを合わせただけだったのか。いやあ、リアルタイムにもう11年経ってたんだと気づくと、えらくショックでしたよ。フルメタに第一巻出たのって、もう1998年なのか。そりゃあ、16歳の女子高生も三十路目前のイイオンナになってるわなあ。
マオ姐さんとクルツがこんな事になってるとは思いませんでしたが。何をやってるんだか、あの優男は。別に、クルツって女癖が悪いとかはなかったはずなので、浮気が原因ではないはずなんですが。というか、浮気が原因だったらヨリ戻さないよね。ほんとになにをやってんだか。
お陰で、娘さんの性格がエラいことに。あの子、両親がおしどり夫婦だったらもっとまともな性格になってたんじゃないだろうか。どう考えても、マオ姐さんの怒り混じりの海兵隊魂が仕込まれちゃってますもんねえ。マオ姐さんが心平穏に幸せを享受してたら、ああはならなかったんじゃないだろうか(苦笑

とまあ、フルメタ短編のアフターの書き下ろしで色々と仕込まれていた伏線が、ここで明かされている、というかどちらが先に設定されたのかは分からないけれど、繋がりも多いようなので、あちらも読み返してみるとなかなか楽しかったです、はい。

さて、新しい主人公の達哉は、宗介と比べると全く普通の男の子だけれど、アレと比べると普通じゃない同世代はいないよなあ、と比較対象が特別すぎるのでそれを度外視すると、なかなか江戸っ子で意気軒昂な生意気さかりの青少年である。気風が良く、根性があり、冒険心もある、とこうしてみると陽性の溌剌としたいい主人公だ。熟女趣味が玉にキズだが、幼女趣味に比べれば大いにマシである。
翻ってメインヒロインのアデリーナはというと、表面上は鉄面皮のマシーンみたいな堅物だけれど、なかなか繊細な所がありそうで掘り下げ甲斐はかなり高そう。酒に弱く、軍事情報を語り始めると異様に饒舌になるなどミリオタ要素たっぷりで、しかも騙されやすい、と堅物というわりに脇が甘いというか、隙が多く、とっつきやすそう。
まだ彼女の身辺情報は無いに等しく、なんで彼女みたいな若い娘が民間軍事会社でASオペレーターなんぞやっているのかという事情もまるでわからないので、次からは彼女の事を中心に絡めつつ話を展開していくのかな。
なんにせよ、これは期待を大きく上回る形で良い作品に仕上がってますよ。この調子なら、充分続編として引き続きフルメタワールドを堪能させてくれるはず。
未だ未登場のキャラの動向も気になりますし、続きがとても楽しみです。