魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉2 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 2】 川口士/よし☆ヲ MF文庫J

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テナルディエの軍勢を退け、つかのまの平穏を得たティグルたち。避けられなくなった戦いに向け、ティグルは仲間になってくれる貴族を探して動き出す。一方、国王への説明のためジスタート王都に赴いたエレンは、七戦姫の一柱にして腐れ縁の天敵、“凍漣の雪姫”リュドミラと遭遇する。険悪な応酬のはて、その場は別れる二人だったが、ティグルに興味を持ったリュドミラがライトメリッツを訪れ、状況は一変する。「ジスタートが誇る戦姫の一人。『破邪の穿角』が主、リュドミラ=ルリエよ」「帰れ」 しかも、彼女はテナルディエと交友関係があるらしく……!? 戦姫対戦姫、人智を超えた戦いが今幕をあける! 話題沸騰の美少女バトルファンタジー、待望の第2弾!
え、エレンさんエレンさん、あんた大人気なさすぎ!!
一巻の感想で、あたしゃあ貴女の事をいわゆる「大人のキャラクター」として礼賛していたんだが、いったいどうしてくれる!w
案外好き嫌いの激しい人だったんだなあ、エレン。そう言えば自分の国の国王陛下には軽侮を隠していなかったっけ。それでも、リュドミラとの対立は利害や政治的背景を抜きにした完全に感情的な相性の悪さに基づくもので、罵り合いも明らかに子供の喧嘩レベル。あまりに程度が低い、というかガキっぽい口喧嘩に、それまで描いていたエレンというヒロイン像がガラガラと崩れて行きましたよ。
この人、全然大人なんかじゃないよ。ちょっと背伸びしてお姉さん面して得意げにしてるだけのお子様だよ!!
もちろん、七戦姫の一角として、ジスタートの有力地方領主としての才幹、判断力などには陰りはないのだけれど、プライベートで見せる顔は以前よりも遥かに子どもっぽいものになったように思う。
リュドミラにティグルを自慢しまくったり、ティグルの真価を見抜けないリュドミラに優越感を隠しきれなかったり、逆にティグルに関心を示し出したらムキになって「こいつは私のもの!!」と牙を剥いて威嚇したり……って、ティグルがもうお気に入りの玩具扱いだな、これ。果たしてこれが恋愛感情にまで至っているかというと、微妙なところ。自分の側近であるリムがティグルに恥ずかしい目に合わされた時など、実に楽しそうに笑ってからかい倒しているくらいですからね。
その点むしろ、最初はティグルを胡乱な目で見ていたリムの方が、真っ当にティグルに惹かれている気がしますよこれ。ティグルが不甲斐ない様子を見せていたら内心やきもきしたり憤慨したり、んで彼が立ち直ったら内心でほっと安心したり喜んでしまったり、ティグルが侮られたら思わずむかーっとなって反論してしまったり、自分の可愛い物好きという秘密を知られてしまった時には、ティグルに趣味の話し相手になることを約束させたり、いやいやリムさんや、自分ではティグルとの関係は事務的なものに徹していると思ってるようだけれど、傍目には完全にデレまくってるから(笑
最初の印象値がマイナスだったせいか、プラスに転じると留まるところを知らないようだ。今回は特に前半はエレンが自国に戻っていたお陰で殆どリムと二人で行動しているようなものだったし、むしろリュドミラよりもリムの方がせっせとティグルとの仲を進展させてたようなかんじだな。それも、主が天敵と喧嘩している合間にw
さて、今回表紙にもなっているリュドミラだが……なんか作中では貧乳ちびっ子扱いされているんだが、イラストではとてもそうは見えないんだが、というかデカいだろうこれ。
上から目線の言動に棘の多いタカビー娘なのだが、基本的に誇り高く気性もまっすぐでいい意味でも悪い意味でも貴族の娘さん。元が在野の傭兵の出だというエレンとは、出自や感情的な対立もあって衝突してばかりなのだけれど、ある意味二人の仲の悪さって上でも書いたように子供のケンカじみたものなんですよね。実は政治的にはそこまで対立しているような利害関係があるわけではないようなんですよね。領地が隣接している以上、いざこざは常にあっただろうし、歴代の戦姫同士もライバル同士だったみたいだけれど。
改めて二人の関係を顧みてみると、感情的な対立があるとは言っても、そこまで陰惨な憎悪が入り交じった対立ではない。あくまでお互いが気に入らないという子供レベルの喧嘩。少なくともちゃんと顔を付き合わせて罵り合い、掴み合いの喧嘩をする程度には本音で向き合った関係ではあるんですよね。これは、まだキッカケさえあればきちんと和解できる手合いの仲の悪さなんですよね。
今回はリュドミラの家とテナルディエ家との経済的政治的な繋がりが、エレンとティグルが繋がったことで個人的な対立から領主としての対立へと発展したわけだけれど、そこではからずもお互いに相手を嫌いあっては居ても憎んではおらず、何だかんだと戦姫として認め合っていたというのがわかったわけで。
最後、お互いにちょっとだけ素直になったシーンは微笑ましかった。

戦記ものとしての展開、描写も堅調で個人の無双で戦局を動かすのではなく、あくまで戦術、作戦レベルで戦場を演出する描写はなかなか歯ごたえのあるものだった。この手の戦記ものは意外と数が乏しいから、こんなふうにちゃんと描いてくれるとやっぱり嬉しいですよ。ページ数にかなり制約があるだろうMF文庫じゃガッツリ書くというわけにはいかないだろうけれど、これからもこのペースで行ってほしいところですね。

1巻感想