はるかかなたの年代記 3 夜魔が踊る (はるかかなたの年代記シリーズ)

【はるかかなたの年代記 3.夜魔が踊る】 白川敏行/ふゆの春秋 スーパーダッシュ文庫

Amazon

恋は突然落ちるもの。
カティア、アレット、グロリア。ユウを取り巻く少女たちの想いは強さを増していく。
だが、少年はもう一人の菫色の瞳の少女と出会う。彼方の星で、物語は加速する。


生徒会長・アレットが所有する別荘にバカンスに訪れたユウたち。休暇を楽しむ一方で、ユウとアレットは<換象>の<共鳴>の習得を試みる。<換象>の効果を増幅するこの現象は、快感を誘発させる副作用があり、二人はそれに恥ずかしがりながらも訓練を続けていた。一方この地では、恐るべき計画が進行していた。そこには「天使の抱擁」と呼ばれる薬物を用いて、街を混乱の渦へと巻き込む「饗宴」を行おうとするカティアの父親、<鉄の王>の姿が…。
そんなある夜、ユウは菫色の瞳をした一人の少女と出会う。誰かに面差しの似たその少女に、ユウは目を奪われるのだが…?

地図欲しいなあ、地図。地図じゃなくても、少なくとも此処に登場する国についての解説文みたいなのは欲しい。人種や国籍、国の特色や国際関係など物語に関連する要素はかなり大きいだけに、このへんを纏めておいてくれるとストーリーにもだいぶとっつきやすくなるんだが。
しかし、登場人物が多い割に把握がしやすいのはキャラが立っているというよりも、群像劇の様相が強くなっているからなんだろうなあ。面白いことに、この作品って男キャラが総じて主人公的な立ち位置に立ってるんですよね。ただでさえ、ユウとクリスはダブル主人公だよなあと思っていた所に、新登場となった操兵術のマリノくんもこれ、立ち位置が明らかに主人公っぽいんですよね。男キャラが主人公のライバルという位置づけではなく、それぞれ独立した主人公とヒロイングループとして割拠しているというのはあまり見たことのないスタイルで、これだけでも読んでて面白いし、あちらこちらに目移りしてしまう。
当面のメイン主人公であろうユウサイドはというと、カティアが先の戦いでアイデンティティを確立し、一人の女の子として自分に自信を持って安定感を獲得したものの、逆に落ち着いてしまったおかげで攻勢を強めるアレット会長に、着実にポイントを稼ぐグロリア先生に比べてやや目立っていなかったような。特にアレットは他のメンバーに比べて実力に劣っている分、意欲的にユウの力になれるように努力している分、ユウに対しても自然に積極的になってるんですよね。元々献身的で健気さが目立つ分、その前向きな懸命さが可愛げになって、ヒロインとして輝きまくってました。この人の偉いところは実戦能力を鍛えるだけではなく、自分の身分を最大限利用する事を厭わないところなんですよね。自分が良家のお嬢様であることを疎まず、それを逆にユウのために活かそうと考え、その為に将来のプランを立てて自分の権力権限を高めていこう、などという発想は並のお嬢様キャラじゃないですよ。健気でありながらクレバーって、相当無敵だよなあ。でも、そうしたクレバーさをカティアたちとの恋愛競争に全く使おうとしないあたり、この女性の誇り高さ、公明正大さが窺えるというものである。
いわゆる、異性同性問わずに惚れられるタイプの女性だな。

ただ、肝心のユウはというと、こんな可愛らしい女性三人に好意を寄せられているにも関わらずあくまで彼からのスタンスは親愛だったんですよね。それが、思わぬ形で彼が恋心を抱く相手が……えっ? もしかして本命ってあの子になるの!? 

一方でクリスと副会長はというと、お互いに好意を抱きあいながらも、クリスも副会長も過去の悲劇からかたや自分が幸せになることを認められず、かたや自分の素性を知られることは過去に直面し今を壊してしまうために口を噤み、先のない現状維持を続けるしか無いのがなんとももどかしいし切ない限り。
しかし、クリスとフローラの絡まりあった関係といい、因縁の仇敵が現れる展開といい、何より兄ラブ、兄に纏わり付く女には死を、の病み妹が登場するって、明らかにサブキャラのエピソードじゃないですよ。妹が現れるのは主人公の特権だよ!w

1巻 2巻感想