六花の勇者 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【六花の勇者】 山形石雄/宮城 スーパーダッシュ文庫

Amazon

Real or Fake.
信じるか、疑うか。救うか、滅ぶか。
闇の底から『魔神』が目覚めるとき、運命の神は六人の勇者を選び出し、世界を救う力を授ける。地上最強を自称する少年アドレットは、その六人、『六花の勇者』に選ばれ、魔神復活を阻止するため、戦いへ向かう。だが、約束の地に集った勇者は、なぜか七人いた。その直後、霧幻結界が作動し、七人全員が森に閉じ込められてしまう。七人のうち誰かひとりが敵であることに気付いた勇者たちは疑心暗鬼に陥る。そして、その嫌疑がまっさきにかかったのはアドレットで――。伝説に挑み、謎と戦う、圧倒的ファンタジー、堂々始動!
クローズド・サークルもののミステリーなのか、これ!!
ただ、これ犯人けっこうすぐにわかりますよね。トリックや証拠がわかりやすいのではなく、例えば実写のミステリー作品で、演じている役者の名前を見て「あっ、この人が犯人だな」と判別できてしまう類の理由で。
いやだって、みんなちょっと怪しすぎましたし。
ここまで怪しいと、逆にその人が犯人だった場合、がっかりや拍子抜けを通り越した台無し芸になりかねない。必然的に犯人が誰か浮かび上がってしまうのですが、むしろここまであからさまだともしかして、容疑者が疑われる要素をひっくり返した上で、さらに大逆転のちゃぶ台返しが待っているのかとかなり警戒して読み進めていたのですが(場合によっては、主人公が犯人という線すら想定したよ)、かなりすんなりとそのまま行ってしまったので、拍子抜けとまではいかないものの、予定調和を見る感じでちょっとミステリーとしては物足りなかったかな。物証から犯人を見つけるには、ファンタジー設定の中でどこからどこまでが実現可能か、という定義がはっきりしなかったために不確定要素が大きすぎましたしねえ。
それに、肝心の犯人の正体や動機づけ、いつからそういう状態になっていたのか、などまるで不明のまま終わっちゃいましたし。ここはかなり欲求不満だったかな。

むしろこの物語の見どころは犯人探しではなく、犯人に仕立て上げられた主人公のアドレットが、仲間たちに命を狙われながらも自分の無実を信じさせようとあらゆる手練手管と誠意を駆使し、信頼を獲得していくところにあるんじゃないでしょうか。
世界最強を自称しながら、その実、才能の欠片もない凡人であるアドレット。しかし、地獄のような訓練を重ねた努力、そして手段と問わない策略と幾多の道具を駆使した工夫を以て、天才たちと肩を並べるに至った世界最強の凡人。こういった未熟と無力を土台にした、自負と自信に満ちあふれた小賢しさでもって勝負するキャラは、なんだかんだと魅力的なんだよなあ。しかも、傲岸不遜に見えながら性格は誠実で、熱い正義感の持ち主と来た。そんな彼が、本当に偽物でした、という展開になったらそれはそれで最高に面白そうだった気もするけれど。
そもそも元から一緒に旅をした仲間というわけでもなく、殆どの相手が初対面、という友情や絆どころか面識すらゼロのスタート地点から出発して、偽物として追われ命を奪われそうになりながら、自分を疑い怪しみ殺意もあらわに攻撃を仕掛けてくる相手から信頼を獲得し、友情や愛情を芽生えさせ、自分を犯人に仕立て上げたトリックを暴き、真犯人を探しだす、ってこれ普通にミステリーやっているよりも相当にスリルたっぷりのシチュエーションですよ。
よくやりとげたなあ、アドレット。
そんな感じで、どれほど苦境に陥ってもめげずに歯を食いしばって毅然と立ち向かうアドレットの熱いソウルに痺れる、ドライブ感たっぷりの読み応えのある作品でした。

……って、ラストのそのオチは予想外だった!! ってかこれってシリーズものだったの!? てっきりこれでオチもついて綺麗に(?)完結だと思ったのに。

ちなみに、
「ありえん、六花の勇者が七人いるなど」
というこの作品のコンセプトに対し、
心の何処かで「五人揃って四天王!」というクロマティ高校なネタで攻めてくるという淡い期待を抱いたのは私だけではあるまいてw