ガブリエラ戦記III 白兎騎士団の犠牲 (ファミ通文庫)

【ガブリエラ戦記 3.白兎騎士団の犠牲】 舞阪洸/優木きら ファミ通文庫

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「優しさと臆病さは違うよ、団長」

ル・アンヘルを奪【と】られ、ようやく手に入れた城砦からの撤退を余議なくされた白兎騎士団【しろうさぎ】。しかしガブリエラ率いる精鋭の乙女たちがこのまま黙って退くはずもなく、迫りくる敵兵にひと泡吹かせるべく動きだす! 生きて帰る保証のない任務『磯蟹』、それに立候補したのはまさかの副団長レフレンシア!? あの方を失いたくない――ガブリエラが作戦を止めるべきかを苦悩する中、因縁の相手アリアンレイは、着実に彼女たちの目の前にまで迫ってきていた! 最強乙女伝説、決死の第3巻!!
ううん、これはガブリエラの迷いの方に賛成だなあ。あくまで失点を補うための作戦に、未だに白兎騎士団の要と言っていいレフレンシアの命を賭けるのには割があわなさすぎる。良くも悪くもレフレンシアの名望は響き渡りすぎてるんですよね。もしかしたら、白兎騎士団のネームバリューよりも、レフレンシア個人の方が敵味方問わずに恐れられているくらいに。【盆地の魔女】の名前はそれくらいの重さを以て内外に知れ渡っているわけだ。
それを失うということは、たとえ敵軍に損害を与えて白兎騎士団は負けていない、という評価を国際的に知らしめる以上に、白兎騎士団の力の失墜と捉えられかねない。作戦立案や戦略的判断はガブリエラがいる以上問題ないとしても、外交についてはやはりレフレンシアがいるといないとでは大違いなんだよなあ。ガブリエラの名前が知れ渡っていないと言うことは敵に過小評価されて意表をつく動きが出来るということでもあるけれど、同時に敵味方に易く見られ侮られることでもあり、大なり小なり不都合な事が出てくると思うんですよ。こういうのは能力以上に名前というのが重要だから、こればかりは新米団長のガブリエラでは補えない部分でもある。誰にでもわかる実績を積み上げていかないと、こればっかりはどうにもならない。
やっぱりどう考えても、プラスとマイナスではレフレンシアを失うマイナスの方が大きすぎるんだよなあ。少なくともガブリエラが生還率三割以下じゃないかと考えているような作戦に犠牲として差し出せる人材じゃないですよ。
なんか、ガブリエラが悲壮感に感極まった挙句に、なにやらトチ狂ってレフレンシアに百合的な感情まで抱き始めてしまってるし。なぜそこで恋人みたいな雰囲気になる!?(笑
むしろこれまで尊敬し敬愛はしていても、弄られっぱなしでこの人もうヤダなんとかして、とか思ってたくせに。団長として独り立ちするどころか、逆に依存度が増しているような気すらするぞ。勿論、立場上は毅然と対処する分、辛い判断も下せる成長を遂げたのかもしれないけれど、個人的な人間関係ではむしろ親密さが増し、この人が傍に居てくれないと生きていけない、みたいな求愛モードにまでガブリエラの感情値が発展してしまっているのを見ると、これもレフレンシアによる深慮遠謀なのではないかと疑いたくなるな。
黒い考え方をすると、自分を好きになりすぎたあまりに結局突き放し、決別することを選んでしまった前団長とのカンケイの結末がトラウマになっていて、ガブリエラとはその辺自分とは精神的に離れられないように仕掛けを施している、という風にも捉えられて面白い。いや、そこまで黒いとは思わないけど。

しかし、こうしてみると白兎騎士団って個々の能力は高いし多種多様なんだが、意外と番隊長が務まるような指揮能力に長けた人は少ないんだなあ。アルゴラなんか務まってるのか怪しいし。その点、アスカは既に番隊長務まる頼もしさがある。シリーズ冒頭ではまだそこまで出世はしてないようだけれど、このまま居残ってたら早晩番隊長に押し上げられそうだな、この人は。或いは団長とは言わずとも、副団長くらいはやらされそうだ。

舞阪洸作品感想