身代わり伯爵の婚前旅行  Iすれ違いの蜜月 (角川ビーンズ文庫)

【身代わり伯爵の婚前旅行 1.すれ違いの蜜月】 清家未森/ねぎしきょうこ 角川ビーンズ文庫

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婚約式を終え、アルテマリスに里帰りすることになったミレーユとリヒャルト。婚前旅行と大はしゃぎのミレーユだけど、道中何者かに襲われ、リヒャルトが怪我を負ってしまい!? 2人の行く末は前途多難!! 新章開幕!
何者かの襲撃を受けて婚前旅行どころじゃないよ!! という話になると思ったら、むしろ久々に二人きりになれて普段よりもイチャイチャしてまさに婚前旅行!! って、どこが糖分控えめですか。本気で普段よりも加糖状態だよ、これ! 通常運行ですら稀に見る糖分過多状態なのに、参ったねえ。
普段邪魔してくるうるさ型とも離れ、それぞれの仕事や立場に追われる事もなく、リヒャが怪我をしたとは言えゆっくりと二人だけの時間を作り、お互い忙しさもあって離れていた時間も多い分、もう一度お互いの気持ちを確かめ合う事が出来たご様子で。まさにこれ、結婚を前にした婚前旅行ですよ。
考えてみれば、二人がちゃんと相思相愛になってからこれだけ二人きりで居たのって初めてなんじゃないかな。シアラン大公妃としてやっていく覚悟を決めてから、一生懸命花嫁修業や大公妃としての勉強を頑張ってきたミレーユだけれど、なんていうんだろうね……アルテマリスに居た頃、リヒャへの気持ちの正体をまだ自覚していなかった頃に比べて、二人きりで居ても芯が通った感じがするんですよね。ただ恋心にフワフワしているのではなく、というよりも恋人として一緒にいたい、というのじゃなくて、ちゃんと奥さんとしてリヒャルトと添い遂げるのだというどっしりとした自負を伴っているのである。リヒャルトというただの男を愛するのは当然なんですけど、彼は同時にシアラン公なんですよね。彼はその地位に戻るために多くの苦難を乗り越えてきて、公国を立て直すのだという使命に全霊をかけている。リヒャルトとシアラン大公はイコールによって結ばれ離れがたいものなのです。だからこそ、リヒャルトを愛するミレーユは、ただ一人の男を愛する無邪気な娘で留まる事など考えもせず、彼を愛するがゆえに、シアラン大公を大公妃として支え、守るのだという意識を自然と自身に根付かせていくのです。このへん、ミレーユってむちゃくちゃ健気で献身的なんだよなあ。この娘が凄いのは、影から支えるなんて大人しい真似はせず、自分が前に出てって彼の盾になる事も辞さない心持ちでいるところなのですが。この娘って奥さんとしての献身を、内助の功じゃなくて用心棒か何かだと思っている節があるのが面白いw
とはいえ、この娘がエラいのは、何度も言っていると思うけれど、ヒトの話を聞かずに勝手な行動に出ることを絶対にしないところなんですよね。それだけリヒャへの信頼が絶大なんだろうけれど、彼に言われたことは絶対に守るんですよ。ミレーユ当人は良かれと思って彼の言う事とは違う行動を取るべきなんじゃないかと悩みはするんですが、最終的に自分の手前勝手な判断よりもちゃんとリヒャや周りの人の言うことを聞くのです。このあたりは、その他の少女系レーベルの女性ヒロインとは決定的に違うところだよなあ。おかげで、リヒャとミレーユって婚約して以来、すれ違いや誤解による行き違い、離れ離れにはぐれてしまったり、ということが全然ないんですよ。今回の婚前旅行での襲撃事件ではついに二人が引き裂かれるのかと思ったら、結局離れることなく最後まで一緒にイましたしねえ。
お陰で読んでるこっちもストレスたまらないし、二人がどれだけイチャイチャしていても、それに相応しいだけの絶対の信頼と愛情をかわしあっているのを何度も示されているから、安心してニヤニヤできるのでありがたいです。

ついに、リヒャを連れて地元の下町に訪れたミレーユ。ロイはもう、自業自得だw ツンデレは本命じゃないと概ねこうなるという無残な見本になってしまったなあ。にしても、婚約者を連れて帰ってきたミレーユへの地元の人達の反応が酷いw まあ、パン屋でおてんばやってたころは、女とも思えない豪傑っぷりを見せてたわけで、今の可愛らしいミレーユはまさに別人みたいなもんだもんなあ。イラストの方も、最初の頃のようなボーイッシュな雰囲気から今回のなんか見てると、わりとコミカルな表情のシーンばかりなのにどこか艶っぽさを感じる佇まいになってるんですよね、ミレーユ。イラストでも、しっかりと恋する乙女を通り越して人妻らしいラインがにじみ出てきたとでも言うんでしょうか♪

牢獄に入っていながら未だに伯爵が蠢動してて不気味な限り。無害かと思われたフィデリオがやっぱり不気味な動きをしているのがどうにも不安。この人、悪意もなさそうだし、ミレーユに対してもリヒャに対しても好意的な感情しか持ってなさそうなんだけれど、何を考えているかわからなくて気持ち悪いんですよね。単純に叛乱を企てているわけじゃないようなんだが……単に騙されてるだけ?
ともあれ、久々に舞台はアルテマリス。懐かしい面々との再会が楽しみだ。そうか、今度は兄貴の影武者じゃなくて、正式にシアラン大公の婚約者として登城することになるのか。

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