ひきこもりの彼女は神なのです。3 (HJ文庫)

【ひきこもりの彼女は神なのです。3】 すえばしけん/みえはる HJ文庫

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天才魔術師コウタと悪魔の兄・リョウタの秘密とは?
実尋市の学生寮で神様たちに囲まれた騒がしい日常を送る天人。そんなある日、アンジェとレーナと名乗る二人組の魔術師が、街に流出した魔術書の回収を依頼しに寮にやって来た。二人を手伝う中、亜夜花と梨玖からコウタの様子がおかしいことを告げられた天人は、独自の調査を開始!  兄リョウタと父親の死にまつわる"隠された過去"に迫るが――!?
……や、やられた。うわーー、思いっきり意表を突かれた。いやいや、今回の話はコウタがメインと知った時に、もしそうならベタだけど美味しいよね、とは思ってたんですよ。思ってはいたんだけれど、それはないか、と可能性を切って捨てちゃったんだよなあ。
だってさあ。もう名前見たらそう思っちゃうじゃないですか。それはないな、って思っちゃうじゃないですか。というか、脳内変換してしまっていたのか、てっきりみんな「コータ」って呼んでるものと認識してたんだよなあ。あとで読み返してみたら、みんなちゃんとコウタって呼んでたし。兄貴がリョウタなのもこう考えるとミスリードだったんかー。
いやほんとにエピローグまで全く気づかんかった。

今回のお話は乱暴な言い方をするなら、コウタの独り立ちを促すものでした。二人の魔術師の到来は、ある程度自分の考えで生き方を決めていける年齢に達したコウタに自立を促す(という形で取り込みを図る、と見せかけて色々と別の思惑もあったようですが)ものであり、リョウタもまたコウタの意思に任せようという節があったように見えます。
でも、独り立ちする以前に、コウタはちゃんと子供として庇護されてこなかったのです。ニュートラルハウスの面々は、おそらく天人が来る前からこの子の事をちゃんと家族として扱っていたのでしょうし、コウタもだからこそこれまで疑いなく彼らを信頼していたのでしょう。ただ、この子はただ護られ見守られる子供としての愛情を、ニュートラルハウスに来る以前から、生まれた時から受ける事が出来なかったのです。故に、愛される事を知らない、愛されてもそれを実感できない子供になれなかった子供として、惰性のように生きてきた。
ゆりかごを出て自分の足で立って生きる道を決めるなんて、出来る以前の話だったわけですよ。この子は、自分が子供であることからちゃんと知っちゃいなかったんですから。
故に、拠り所がないこの子は、自分の記憶に刷り込まれた父親の愛情に縋るしか無く、皆の差し伸べる手を振り払って牙を剥くしかなかったのでした。
まあ仕方ないんだろうなあ。天人が来た時のニュートラルハウスの様子をみると、今と比べて随分と冷めたカンケイだったみたいだし。最初の印象、アットホームとは程遠い寮だな、というものだったし。その中で万那だけはコウタをちゃんと姉貴分として扱っていたつもりだったんだろうけどなあ。
今回の話って、何だかんだと万那にとっては辛い話だったんじゃないかなあ。梨玖が指摘したのって、どれだけ真剣に本気で、必死に相手のことを思っても、神と人間の断絶は乗り越えられないって事ですもんね。意思の問題じゃない、存在の違いの問題なんですから。価値観が違う千那さんやリョウタと違って、万那はメンタリティが人間に寄り添っているだけに、結構本気で傷ついたんじゃないかなあ、と気遣ってしまう。これ、言ってる梨玖もおんなじなんですけどね。元人間なだけに、余計にしみているかも。
だからこそ、神と人との橋渡しが出来るのが、半分人間で半分天使の両方の属性を持つネフィリムである天人なんだな。
彼が来てからですよね、ニュートラルハウスに家族のような一体感が生まれだしたのは。上にも書いたけれど、最初はもっと冷めたカンケイだったはず。それが、今回なんか逸れたコウタの為に神様であるみんなが一生懸命になってあの子を連れ戻そうとしていたのを見るとね、天人がここに来てよかったなあ、となんかしみじみと思いましたよ。
コウタの歪められた過去と、それに歪められた年月は戻らないのだろうけれど、思っていた以上にこの子には愛情を持って気にかけてくれていた人たちがたくさん居たわけで、それを知り得た以上これからは健やかに伸びやかに、子供らしく大人になっていってくれるものと信じたいです。
にしても、北方の冥界神さまのデレっぷりは、もう凄いことになってるな。
「せっかく、二人で……お出かけ……なのに」
あんた、引きこもりの神様だったんじゃなかったのかぃ(笑
しかも、同じ外出でも他の人と一緒の時と二人きりの時では気合が全然違いますし。あからさまに梨玖と天人の取り合いを始めているのを見ると、もう当人としては完全に自覚してこの人は私のものにする、と決めてるんだろうなあ。もうデレッデレですよ。かわいいねえ、もう。

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