僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 き 2-1)

【僕と姉妹と幽霊(カノジョ)の約束(ルール)】 喜多南/みよしの  このライトノベルがすごい!文庫

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幽霊少女と霊感男子のせつない系 学園ラブコメ!

先祖代々、霊感体質の高校生・結城クロ。ある日の放課後、彼は教室で、クラスメートだった長谷川紫音の幽霊と出会う。紫音を成仏させるため、彼女が心残りに思っていることを解決しようと申し出るクロ。だが、紫音はその提案を一蹴し、命令口調で「私を生き返らせなさい」と言い放った。マイペースな紫音の行動は、クロやクロの3人の姉妹、他の幽霊たちも巻き込み、様々な事件を引き起こす。しかし、やがて紫音の記憶と存在が薄れ始めて……。第2回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞受賞作!

うーん、これはどうなんだろう。切ない系として一応最後まで一通り川は流れているんだけれど、秀作としてもこれは素人の秀作だよなあ。
兎角、色々なものが中途半端。
クロの体質にしても、結城家の両親に纏わる話にしても、志郎とクロ、紫音の関係にしても触りだけちょこっと齧るだけで掘り下げも出来ずに放り投げてしまっている。特にあのクロの体質なんか、何の意味があったんだろう。今アニメ化している【まよチキ!】の二番煎じにしか思えなかったし、結局彼の体質が話に絡む事はなかったのである。意図としては、女の子は触れないクロだけれど、幽霊なら触れるんだよ、という所を強調してクロと紫音の関係での大きなポイントとして活かしたかったんだろうけれど……活かす以前にそんな体質があったっけと忘れたかのように放置されてしまった。結城家の両親に纏わる話も、姉妹とクロのトラウマとなりそれぞれの幽霊へのスタンスの違いを際立たせる要因として重要な設定のはずだったのだけれど、これも黄の話でちらっと触れられただけでそのまま放置。姉妹とクロの幽霊への対処の違いは信念か強迫観念にも似た強烈なものであり、その摺り合わせには愛情を寄せ合う家族同士でありながら非常に厳しく難しい物で家族間の溝のようなものにもなっている、という当初の匂わせっぷりはどこへやら、後半はも結局なあなあになってしまい、グダグダの一途であった。留めは志郎である。今回一連の作品の一番重要な要石を担う人物にも関わらず、その存在感の薄さは際立っていると言ってすらいい。彼の独白の幕間がちゃんとあるものの、これじゃあ駄目だ。魂実装してないよ。想いというのは、もっと音の震えや目に映るような色が篭ってるものなんだ。ただレシピ通りに作っても、虚を埋めることは出来ない。
そもそも、親友として、幼馴染としてのキャラ立て、根幹を担うだけの厚みが全くと言っていいほど作れていないのよ。紫音やクロから志郎に向けての感情も、志郎から紫音やクロに向けた想いにしても、胸に響いてくるものがないんだ、残念ながら。いくらセリフが感動的だって、それを棒読みで読まれちゃあ何も伝わってこないのと同じ事。それに纏わるエピソードを書いたからって、それでOKってなもんではないんだよな、これが。
コミカルなパートは読んでても楽しかったですよ。それに、話の筋立て自体は程良くスマートな流れが出来ていて、そこを補強し厚みを増したる要素に欠損を抱えてもなお綺麗に最後まで流れたのは、それだけ本筋を仕立てる主題の設置がしっかりとしてるということ。それが出来てるなら、まあ大体において見た目は整った話はどんだけでも作れるでしょう。でも、作品としてやっぱり中途半端すぎる。上に書いたモノ以外にも目に付くモノはまだまだあるし。どうにも素人っぽすぎる。
そしてなによりも、真剣になったシーンでキャラの生の声が聞こえてこない。少なくとも私にゃ、用意された台本をそのまま読んでいるようにしか聞こえなかった。
普通にイイ話なんですけどね。滞りなく、引っ掛かりなくストレスを感じずに最後までスラスラと読めるし、キャラクターの言動にも不快を催すようなところはありませんし、話を作るのは上手なんだろうなあ。
ただ、私には不快でもつまらなくもなかったけれど、心響いてくるものがなかったのが残念至極。

あと、これはどうでもいいかもしれないが、最初期の紫音のクロに訴えたあのセリフは結構致命的。伏線のつもりだったのか、それともアリバイだったのかはわからないが、あれで概ね紫音については顛末がわかってしまった。何気にちょっとあからさますぎたんじゃないだろうか。