なれる!SE 5 (電撃文庫 な 12-10)

【なれる!SE 5.ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア】 夏海公司/Ixy 電撃文庫

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今度の試練は西日本出張行脚!? 話題の萌えるSE残酷物語、第5弾!

「あんた西日本と東日本どっちが好き?」
 立華のなにげないその質問が過酷な出張行脚へのはじまりだった!
 課されたミッションは、通信機器の現地設置作業。簡単に思えた業務だがすんなり行くわけないのがこの業界。理不尽なハプニングが行く手に次々立ちふさがる。
 そして最後に辿りついた先はなぜか工兵の実家。工兵の妹も初登場です!
これ、工兵の独立フラグが着々と立ってません? 勿論、工兵当人にはそんな考えも意識もないのですけど(信じがたいがまだ入社して一年未満の新入社員であるのだし、信じがたいが)、人脈の繋がり方がどうもただの一エンジニアに徹するのならちょっと不自然な感じがするんですよね。使えるエンジニアとして信頼されるというよりも、共犯関係? 駒じゃなくて、ある意味対等な視点で意見を交換し合える相手、みたいなところが、今回も含めて工兵を認めた人たちにはあるんですよね。面白いのが、そんな信頼関係の中にきっちり損得勘定が入っているところでしょうか。その辺が社会人が登場人物である仕事モノ、であって、友情や愛情や心意気だけで全部解決する類の話じゃないって事でしょうか。でも卑しい話じゃないんですよね。それだけ、工兵なら助けたり融通をきかせたりしたら、その分こちらにも利益を出してくれる、という信頼感があるって事である。この信頼は人間性と能力が噛みあった最上級のものだ。会社という組織にではなく、その中の個人に対して投資したいと思わせるって凄いことなんですから。

と、いろんな取引先の出来物たる人たちから注目を浴びる工兵の働きっぷりは相変わらず見事であり、正道にこだわらない手練手管には毎度毎度戦慄すら感じられるんだけれど……だからと言って工兵や立華に憧れる、というのは絶対にないよなあ、としみじみと思う。あまりにも、仕事環境が過酷すぎるw
ただただ人様のミスや不手際の後始末に追われる業務内容。殆ど神がかったと言っていい手腕で彼らは問題をリカバリーしていくのだけれど、ぶっちゃけ自分の身に置き換えてみるととてもじゃないが無茶ぶりすぎてゲームオーバーになってしまうこと請け合いなんですよね。絶対にあんなふうにするの、無理。むしろ、不手際をやらかす方に自分の身を照らし合わせてしまって、読んでると胃が痛くなってくる。
さらには、立華や工兵のようなデタラメな対処能力を持った連中ですら、血反吐を吐き精神が磨耗し悲鳴を上げ過労死するんじゃないだろうか、というギリギリの瀬戸際で七転八倒しているさまを見せられるのだ……けっこう、ドン引きである。
なんかこう、さ……自信無くすよね? 社会に出てやってく自信が。
言うなれば、「働きたくないでござる!」が量産されそうな勢いである。
いやあ、自分、ヌルい職場で本当に良かったわ。給料安くても、精神的に死ぬよりはよっぽどマシ。
「……うぅっ、社会人になってから初めて平日夜に家でご飯食べられると思ったのに」
ドン引きである。
幾ら仕事をやり遂げたあとの達成感や充実感を強調されても、マイナス分があまりにも大きすぎて、「いいなあ、羨ましいなあ」「良かったね」という感情よりも蟻地獄にハマって行くのを見るような可哀想に、という哀れみが浮かんでくる始末。こんな目に合うくらいなら働きたくないでござる。

今回の宣伝ポイントである立華を連れての実家来訪は、本筋と違うせいかわりとさらっと流されてしまった感あり。特にこれといったラブコメイベントがあったわけでもないですしね。肝心の妹ちゃんも、出番チョロっとだけだったし。ただ、立華に関してそこそこ重要なキーワードを残してくれたのか、これ?
今のところずっと仕事の話中心なので、あんまり個人のプライヴェートに踏み込む話にいかないんですよね。いずれは立華の話にもなるんだろうけれど、そうなると仕事話から外れてしまう事になるので簡単には立華の事情には触れなさそうだなあ。果たして、仕事に絡ませて異性間の関係に話を昇華するんだろうか。
完全に捕食者と化した梢に対して、立華は上司で先輩という立場から他の顔をなかなか見せないし。そろそろ動きは欲しいところではあるんですよね。
……関西弁の梢さんは、はにゃんとしてなかなかツボでした、はい。

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