境界線上のホライゾン4〈上〉―GENESISシリーズ (電撃文庫)

【GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 4(上)】 川上稔/さとやす 電撃文庫

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 武田との歴史再現のため、三方ヶ原の戦いに臨んだ武蔵。だが、強引な解釈による羽柴の登場により、初めての敗北を喫してしまう。そして今、武蔵は関東IZUMOの巨大な浮きドック“有明”で大改修を受けていた。
 そんななか、関東の北に存在する奥州列強──伊達、最上、上越露西亜との協働について、武蔵は模索を始める。しかし、各勢力もそれに対し動き始め……。
 様々な過去と思惑を秘めた奥州列強と、果たして武蔵はどのように向き合っていくのか──!?
 各国に分割統治された中世の神州・日本を舞台に繰り広げる、壮大な戦国学園ファンタジー、第4話ついにスタート! 上巻中巻、連続刊行!

「こうもんウォーカー」は色々とまずいだろ!! いや、合ってるけど。ミトツダイラ的にはなんら間違ってないけれど!! こうもんはらめーー!
というわけで、三方ヶ原の戦いでの大敗を経て、武蔵は関東に落ち延び、ミトツダイラの領地である水戸にて一時羽を休めることになる。水戸が既に江戸時代仕様になっているということは、ここでは佐竹家はどうなってるんだろう。東北から信越の方はもうざっくりと伊達・最上・上越露西亜の三国に固めてしまっているようだけれど。さすがに登場人数は絞ってきたのか、伊達家・上杉家ともにメインは4〜5人に限定しているようだが、中でも伊達政宗が病弱年下系って新鮮なチョイスだな!! 政宗っつーと史実からフィクションまで概ね「アレ」なキャラで罷り通っているものなのだが、この政宗はまだチョロっとしか出ていないけれど、むしろ儚い系という珍しさ。むしろ庇護欲を掻き立てるタイプ? 伊達成実が完全にお姉ちゃんキャラだし。片倉小十郎があんなんとは思わなかったけど。ネシンバラと若干キャラ被ってね? 最近ネシンバラもやたらテンション高くなる時多いし。とは言え、あの独特のテンションの上げ下げはインパクトつええよ。
なんか姉萌え一刀流のウッキーことウルキアガに当番回の気配が漂ってきたのだが、果たして相手は誰なんだ? 順当に行けば成実さんになるんだろうが、姉萌えがそのまま姉ゲットって、そんな点蔵みたいに上手いこと行くんだろうか。
一方で上越露西亜の方は上杉家本体の描写はなかったものの、出てきた情報だけ見てても、なんかごっついなあ。なんとも権勢の握り方がロシア的なんですよね。権力者が独裁的というか、手段を問わないスケールの大きさが垣間見えるというか。ロシア方面の歴代の支配者のなんかパねえ横暴とすら思える豪腕っぷりを踏襲しているというか。
上杉謙信とイヴァン雷帝の二重襲名とか、なにそれ怖い。どころじゃなく、そこから自分で御館の乱を自演して、上杉景勝を襲名してしまっているあたり、相当にえげつない人物にしか見えないぞ。


600ページ強という厚さにも関わらず、今回は薄いなあなどと言われる今巻でしたが、まるっと導入編だったなあ。上記したような奥州の情勢や敗北した武蔵の置かれた状況に未来に向けた展望、羽柴の近況が主だった内容。
特に、武蔵は一度本格的にガツンと壁にぶち当たったような負け方をしてしまったので、皆の様子が気になる所だったのだが、微妙といえば微妙な雰囲気でしたね。負けた事へのショックから挫けていたりへこんでいるわけではない、わりと傍目には皆、平静を保っていて、後ろ向きにはなっていない。
でも、平気ってわけじゃあないんですよね。何事もなかったように、とはいかない。みんな何処かで不安を抱えている。未来への展望に心もとなさを、心細さを感じている。
それでも、その心細さに負けてはいないんですよ。どうやってその心細さ、不安を払拭できるかを皆が自分の中で答えを考えている。皆が、これから自分が何をするべきかを一度立ち止まって模索しているような状態なのだ。
他人と語り合わず、頼らずに、それぞれに自分の内側で沈思黙考しているあたりが、克己心を感じてなんか好きなんだよなあ。周りの人に頼り、協力して自分を伸ばしていくことも大事なんだけれど、時として人は自分一人の力で自分を立たせ、歩き始めないと行けない時がある。依存ではなく自立した人間であってこそ、仲間と協働出来るのだ、とこの仲の良い幼馴染同然の武蔵の連中はその辺をよく理解している。馴れ合いと友情はまた少し違うものなんですよね。
故にこそ、彼らは一人一人、表に出さず、焦らず勢いに任せず、じっくりと考えているような状態だ。敗戦を得て、どう変わるべきなのか。どう強くなるべきなのか。
今は根幹が定まらぬ状態で心もとないが、同時に今こそが雌伏の時なんでしょうね。次に走りだした時は絶対に負けないための、未熟さを払拭するための成熟の時間がまさに今なのだろう。
強くなるよ、この子たちは。
今のみんなの様子を見てたら、それがわかる。
これまではまだ世界を相手にするには力不足すぎる所が多々見受けられたけれど、今度彼らが自分の拠り所となる強さを得て突き進むべき方向を見定め、走りだした時は、きっと世界の強者たちと対等に渡り合えるだけの大きさを得ているに違いない。
武蔵の子たちは、強くなるよ。

それに対する織田家の空気は、逆に切羽詰っている。時間に追い立てられ、忙しなく走り続けているようだ。そこには、悲壮感のようなものすら漂っている。
織田家もまた、武蔵に負けず劣らずの仲良しなのにね。だからこそ、なのか。いずれ来る歴史再現の結末を前にして、誰も彼もが悲壮を隠しきれていない。新婚ウハウハと見えていた柴田勝家とお市御料人の夫婦ですら、その愛情は滅びを内包していたのだから。
勝家の親父のあの浮かれっぷりを見る限り、もっと甘甘の新婚生活だと思ってたのになあ。いや、当人たちはあれでちゃんと甘酸っぱい新婚のつもりなんだよ。なのに、なぜ傍から見ててあんなに泣けてくるんだろう。佐々成政や前田利家が何だかんだと云いながらこの夫婦を大切に扱っている理由がよくわかった。
織田家は誰も彼もが哀しすぎるよ。
未だその存在が秘されている信長が、この空気を打破する存在足りえるのか。どうも、織田信長って逼塞しているというよりも、織田家に居ない気がするんだよなあ。でないと、秀吉があれだけ必死なのがよく理解出来ない。あれってどうみても、一人で頑張ってる図だもんなあ。誰かが後ろでどーんと見守ってくれている態度じゃないよ。じゃあ何処に居るんだ、という話なんだけれど……まいど同じく武蔵の中にいるのかしら?

今回のホラ子さんは、セメント系を通り越してコンクリ塊でぶん殴ってきます系じゃないのかと思えるくらいに……アグレッシブ? いつもと同じだった気もしないでも無いが。まいどボコボコだし、うん。
あと、ネイトはもうホラ子と全裸のペットすぎて色々とアウトな領域に入ってきた気がしてきた。元々アウトだったような気もするが。あれ? 何も変わってない?
あとあと、「女装した全裸」ってもはや日本語として破綻しているにも関わらず、何の違和感も感じないんだよね。微妙に終わっている気もしないでもないけれど、まあそれだとこれ読んでる人なら大概終わってる羽目になるのか。重畳である。


川上稔作品感想


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BD、発売前からもう予約開始ですか、そうですかぁ!!