わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 3 ラブメイドですが何か? (ファミ通文庫)

【わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 3.ラブメイドですが何か?】 やのゆい/みやびあきの ファミ通文庫

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妄想メイドと地味カノ!? リア中には早すぎる第3巻!

命がけで仁島【にしま】さんと沢田【さわだ】の騒動にケリをつけたにもかかわらず、高柳【たかやなぎ】君の妄想少女のせいで憂鬱な春休みを過ごすあすみ。そんなところに、ユニコーンホテルに泊まったカップルの片割れ、仲居加奈【なかいかな】がやってきた。大人の階段を上っちまったと思しきリア充は、こともあろうかあすみに「綺麗になりたい!」と協力を求めてきた! けっ、利沙【りさ】にでも頼るがいいと猛るあすみだが、リサに乗せられ高柳君をふり向かせるためやるしかない!? 迸る超リア中ラブコメ第3巻!
あすみは友達のことだとびっくりするくらいに男前なのに、自分のこととなると途端にヘタレの意気地なしになってしまうんだなあ。
おとなの階段を登るのにまだ中学生は早すぎるよ! と思わないでもないけれど、これだけ恋愛のことや友達のことに必死になれるのは、それこそまだ狭い世界しか知らない中学生だからこそ、なのだろう。まだ自分とその周辺しか知らない子どもたちにとって、その狭い世界こそが今生きている人生そのものなのだ。振り返るにはまだ過去は短すぎて、先を見渡すには未来は遠すぎる。すなわち、まだこの年齢の子たちにとって過去も未来も今現在から分化していないのだ。今こそが全てなのだ。だからこそ、この先の人生すべてが掛かっているような勢いで、全身全霊を投げ打てる。未来なんてまだ分からないから、と適当を打たない、打てないのだ。
彼、彼女たちにとって今の選択、今の決断こそが全部将来を決める人生最大のターニングポイントなのである。
だから、この子たちは何事につけても必死なのだ。そして、勇気を必要とし続けている。前回の沢田の切羽詰まった心持ちも、加奈と川上のカップルの大人から見れば君らくらいの子どもが何を深刻に、と思ってしまうような事情の拗れ方も、そう考えればよく理解できるのではないだろうか。
この子たちが素敵なのは、本来なら自分一人で抱え込み様々な形で勇気を出せずになあなあに消化して行ってしまうだろう、そうした人生最大の決断の連続を、周りが寄ってたかって手助けして、ちゃんと勇気を出させてあげるところなのだろう。一人で悩ませずに、みんなで考えてあげて、間違った方へと進もうとしたら声を張り上げて引き止めて、選択とちゃんと向きあわせてあげられるところなのだろう。
故にこそ、ここでの決断は幼いからこそ大きく見えてしまう選択ではなく、本当の人生最大のターニングポイントとなり得ることが出来るのだ。加奈と川上の恋愛にしても、幼いママゴトのような恋愛ごっこではなく、紆余曲折があるとしても今の彼らが信じたように、きっと将来にわたってまで続くであろう関係になったに違いない。それだけの芯の太さを、ここでの苦悩とそれを乗り越えた勇気ある相対によって得たはずだ。
それだけの価値ある、そして重たく勇気を必要とする選択に幼い子供たちが向きあう事が出来るだけの支えと後押しをしてみせたあすみと高柳たちは、本当に気持ちの良い心ばえがいっそ痛快だとすら言えるイイ子たちなんだよなあ。特にあすみなんかは言動はもうアホの子そのもので、伝法なのか噺家なのかよく分からない発言の数々は本気で言っているだけになおさら面白おかしくて、この子もう滅茶苦茶好き。大好き。
そんなちょっとした女親分肌なあすみが、自分のこととなると途端に迷走をはじめてしまう。みんなの尻をたたき、叱咤してオラオラと追い回す方だからこそ、自分のこととなると逆に尻込みしてしまうんだろうね。彼女の尻を叩いてくれる人は居ないことはないんだけれど、高柳くんは全くの当事者だし、利沙はああ見えて実はあすみに甘いことこの上ないし。本当にあすみを叱咤してくれるのは妄想少女のリサくらいなんだが、哀しいかな妄想少女である以上、リサには現実に干渉するには限界がある。彼女たちはあすみが見ようとして接しようとしてようやく成り立つ存在である以上、あすみに拒絶されるとそれ以上どうやっても何も出来ない存在ですから。
もう一人、佐島くんがいるけれど、この頼りになる男友達は頼りになりすぎて逆にフラグが立ちかけてしまってるんですよね。お互いに別に好きな人が居る同士でそれを応援しあっている同士であるものの、近づくばかりの距離感は、周りの人の目には急接近しているように見えるし、高柳など二人が何でもないと理解しつつも相当に複雑な想いを抱えるに至ってしまっている。男女間の友情って、難しいよね。それがたとえ当事者の間では本当に何でもなくっても。ただ仲が良いってだけに過ぎなくても。真実親友のようだとしても。

なんだか高柳君の妄想少女が理解を超えた現象を伴って、怒涛の勢いであすみの目の前に現れた今、次こそはあすみ当人の恋愛話になるのかな。もういっぱいいっぱいのあすみだけれど、それでも何とかあのアホ可愛さを失わないでほしいところ。あの素っ頓狂な明るさは得難い愉快さでありますから。

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