氷結鏡界のエデン8  悲想共鳴‐クルーエル・シャウト‐ (富士見ファンタジア文庫)

【氷結鏡界のエデン 8.悲想共鳴‐クルーエル・シャウト‐】 細音啓/カスカベアキラ 富士見ファンタジア文庫

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異篇卿イグニドによって告げられた事実に混乱する天結宮。帰還したシェルティスは上層部によって身柄を拘束されてしまう。そんな中、シェルティスの過去やユミィとの関係を知ったモニカは心を閉ざしてしまい……
ヴァイエルが完全にチームのおっかさんなんだが(笑
口では不貞腐れたような事を言いながら、やってることといえば甲斐甲斐しいくらいの橋渡し役。モニカの自閉によって拗れてしまったチームの雰囲気をコマ目なケアや気配りでフォローしてまわり、ただでさえメンタル面で本調子でない面々がツマラナイことで任務に躓かないように料理などの雑事や任務の準備作業などを回して余計な部分で負担がかからないように小隊運営の管理を一手に担い、挙句にシェルティスとモニカの最終的な仲直りを強引に後押しすることで支援する。もうパーフェクトである。見た目ゴツイチンピラで不平不満しか口にしないような不良のくせに、なんでこいつこんなに縁の下の力持ち属性なんだろう(苦笑
事情に通じていたはずの華宮が、意外にもあたふたするばかりであんまり役に立たなかったのに比べて、その働きが際立っていた。華宮って頭脳労働担当だけれど、人間関係の機微とか察することは出来てもあんまり自分から手を出すとか出来なさそうだもんなあ。ヴァイエルに懐いているのは、そのあたりも関係あるのかもしれない。

ちょっと意外だったのが、シェルティスの処遇が案外甘かったところかな。てっきり、帰還と同時に危険要素として問答無用で拘束して権利や地位を剥奪してしまうのかと思っていたんだが。塔の上層部って意外とそこまで強権的な力は持ってないんだ。そもそも、シェルティスが穢れ持ちだというのは、既に上層部も前にエデンから戻ってきた時に把握してたんですよね。それを公表もせずに居住区に追放した事実は、上層部にとってもスキャンダルなのかもなあ。今回の騒動を見る限り、シェルティスを秘密裏に居住区に放逐した件は知られれば相当に非難の的にされそうですし。下手に藪をつつくと蛇が出てしまうのは上層部も一緒なのか。だとすると、現状を維持したままシェルティスが失態を犯して別件で何とか潰す、という方針をとったのは理解できなくもない。
何だかんだと巫女や千年獅にシェルティスは強力な伝手があるわけですし、政治力に長けたメイメル姉さんもいる以上、安易な真似は危険ですらあるわけだし。

何とか、モニカとの亀裂は修復され、チームは元通りになったけれど、天結宮でのシェルティスの危うい立場は相変わらず。春蘭は攫われてしまうし、巫女たちと上層部との亀裂は下部の錬護士の間まで広がり、組織として内在的に分裂状態になりかけているという危機的状況。
そこに、エデンから浮上してきた存在。元々、異篇卿って厳密には人類の敵ではなく、天結宮などとは違う形で人類の生存権を守ろうとしている集団であるので、ほんとうの意味では敵ではないんですよね。ところが、今度現れてきた存在は、どうやら間違いなく絶対的な敵のようで……統政庁の方も動きが激しくなってきたし(って、あのマハのアレはなんなんだ!?(爆笑)、次回辺りかなり大きな動きが起こりそうでドキドキ。

それから、なんか本シリーズと平行して「イリス」がヒロインの新シリーズがはじまるみたいなんですが!
登場人物(?)の中でも最もイイ性格(w)をしたイリスがヒロインって、どんだけはっちゃけるつもりですか!? 粗筋やあとがきを見る限り、本シリーズの過去編にあたるもののようですが、これは楽しみだ。

細音啓作品感想