灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

【灼熱の小早川さん】 田中ロミオ/西邑 ガガガ文庫

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小早川さん。仲良くなったらなんになる?
人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。伝統と自粛のバランス――そんな口当たりのいい雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。自ら代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが――。田中ロミオ最新作は、ヒロイン観察系ラブコメ!?

空気読め、かぁ。面倒くさい話なんだよなあ、空気って。ちょっとその空気が充満している場所から一歩外に出て振り返ってみると、或いは視野を広げて自分たちが立っていた場所を覗き込んでみると、どれだけ馬鹿げた真似をしてるんだろう、自分たちがどういう環境に身を委ねてそれをせっせと補強しているのかを思い知らされてほとほと呆れてしまうのだけれど、これが実際に渦中にいると気づかないもんなんですよね。そんでもって、その流れの中から逸脱しようという意思が湧いてこない。後先のことちゃんと考えたら、分かりそうなもんなんですけどねえ。
ほんと近視眼的というか、後々どうなるかとか考えないんだろうか。どうして他人ごとで要られるのかがホントに分からないんだ。で、結局居た堪れなくなった人が貧乏くじを引くしかないんですよね。こういうの、理不尽極まりないと思うんですよね。でも、仕組みとしてそうなってしまっている。
この話はひとつのクラスの中だけの空気であり、学内の空気に限定されているけれど、この空気ってやつは何だかんだと古くからこの国に根ざしてしまっているものなのだろう。それこそ、昭和どころか戦国時代、中世や古代に遡っても、その傾向は窺えると思う。
そして今に至るまで、その具体的な解決法、解消法は見いだせていないのだ、きっと。きっと特別な人物や出来事が、その空気をぶち壊すような事にならないと。
この作品でも、いったいどうやってこの学級崩壊しかけているクラスの空気を解消して、それぞれに自覚を促すのかと興味津々に伺っていたら……なし崩しに収拾してしまったわけだし。これって単に別の空気に取って代わっただけですよね? 
実に丹念に「空気」と呼ばれるものの有り様を描いていて、興味深かったし面白かったんだが、結局解体する事は出来ずにそのまま「空気」に両手をあげて降服してしまった、って感じだよなあ。
そもそも小早川さんのやり方は「空気」と戦っていたというよりも、拗ねてムキになって我武者羅に棒を振り回して暴れていただけなんじゃないだろうか。彼女は常に攻撃していただけで、問題の原因を解決しようという考えはなかったようですし。やり方としては最悪すぎて、より「空気」を先鋭化させているだけの結果でしたしねえ。
なんにせよ、ネタとしても話しとしても面白かったにも関わらず、読み終えてみると微妙な感じの残ってしまう作品でした。ちと残念。