アリス・イン・ゴシックランドII  怪盗紳士と大聖堂の秘法 (角川スニーカー文庫)

【アリス・イン・ゴシックランド 2.怪盗紳士と大聖堂の秘法】 南房秀久/植田亮 角川スニーカー文庫

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魔都ロンドン(ゴシックランド)を騒がす”切り裂き魔”の正体は、アリスの別人格”ジル”だった! 無垢な天使と冷酷な殺人マシーンの二面性が同居するアリスの扱いに苦悩するジェレミー。そんなある日、彼はフランスの少年貴族ラウルと知り合う。巨大犯罪結社ネオ・ヘルファイア・クラブから狙われていると語るラウルは、ジェレミーに共闘を申し出るが、はたして、彼の真の姿とは……? 謎と冒険に満ちたビクトリアン・ゴシックファンタジー第二弾!
フランスの貴族にして怪盗紳士ときたら、勿論あの人しかいないでしょう! 詳しい人は、ラウルの名前を見ただけで判別できるんでしょうね。ちなみに私は知りませんでした。アルセーヌ・ルパンの本名がラウールだということは。
このラウル。少年貴族と表現されるだけあって、まだ十代の若者なんであれ? と思ってたんですが、そうかルパンとシャーロック・ホームズって同世代じゃなかったんだ。シャーロックの方が二回りくらい年上なんですね、なるほどなるほど。
そのシャーロック氏はというと、ベイカー街に居を構えていらっしゃるようですけれど、しばらくは上手いこと登場しなさそうだなあ。妹のイグレインに連れられて事務所まで訪ねて行っても不在ということは、彼は刑事コロンボのかみさんみたいに、登場人物からその人となりを何度も語られるにも関わらず本人は顔を出さないという存在感の出し方に終止すると思われる。まあ何しろあのシャーロック氏だ。ジェレミーたちの物語に顔は出さなくても、勝手に背景でうろついているだけで存在感は十分発揮してくれている。シャーロック・ホームズは居るだけでシャーロック・ホームズなのだ。
その点、まだラウルは若いな。才気迸り意気軒昂、強かでユーモアに溢れた実に魅力的な若者であるのは間違いないけれど、やっぱりアルセーヌ・ルパンはダンディな紳士というイメージがあるので、イメージにはかなわない部分がある。もっとも、ヤング・アルセーヌと考えれば十分以上のキャラクターなんだけれど。さりげなく大事な幼馴染としてクラリスの名前があがっていたのにはニヤニヤさせられてしまう。

さて、二巻に入ってもビクトリア朝のレトロな時代背景に遊び心たっぷりの軽妙洒脱な語り口によって語られる有名キャスト総ざらえのオールスター娯楽ムービーは健在で、読んでて楽しいったらありゃしない。ゴシックランドのタイトルの通り、これって「遊園地」なんですよね。ディズニーランドみたいに様々なキャラクターが一処にごっちゃに詰め込まれてお祭りしているみたいな感じで、この時代を舞台に活躍する古今東西の様々な著名なキャラクターたちがフィクション・ノンフィクションの境なく一同に介して走りまわるお祭り騒ぎ。その中心にいる貴族刑事のジェレミーと、ホームズの妹、自由奔放破天荒娘のイグレインのコンビがお互いにハメを外して振り回し合いながら丁々発止のコンビネーションで突っ走る、この痛快感、爽快感は気持いいことこの上なし。二人してポンポンと口喧嘩して気のない素振りを見せながら、実はお互い相思相愛。かと言って正直になるには二人共性格がひねくれていて、もどかしくも心憎い恋の駆け引きが繰り広げられるジェレミーとイグレインの恋模様も、まあ顔がほころぶやらニヤニヤが収まらないやら。くすぐり方が絶妙で素敵なんだわ。

定番と言っていい降霊会ネタにヴェアヴォルフ。ついにかのモリアーティ教授も登場し、盛り上がることこの上なし。いやあ、楽しかった。この調子で行ってくれるなら次回以降も期待膨らむばかり。
しかし、一番キャラクターが濃かったのが、あのオスカー・ワイルドというのは凄かった。でも、この人って実際こんな感じだったそうなんだよなあ。

1巻感想