C3‐シーキューブ〈12〉 (電撃文庫)

【C3 シーキューブ 12】 水瀬葉月/さそりがため 電撃文庫

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 奈良公園といえばシカ。シカといえばシカせんべい! というわけで修学旅行で奈良京都を訪れたフィアは初めて目にするあれやこれやに大興奮。
 そして宿ではもちろん露天風呂。一同入り乱れての肌色祭りが展開される。
 そんな修学旅行中、フィアたちは解散したはずのあの組織と再会する。彼らに持ちかけられた取引がきっかけで、フィアやこのはは自らの気持ちに素直に行動し、その想いをもっとも強く発したものが勝利するという戦いに巻き込まれる。それを勝ち抜くために思い浮かべる気持ちとはやっぱり──!?
アニメ化になろうとも女の子が拷問されるシーンを欠かさない水瀬先生には脱帽です、大好きですw
比喩抜きの本当の拷問だもんなあ、パねえっすよ。しかも、その対象がようやく闇を潜りぬけ陽の下にたどり着き、幸せを掴み取りって生まれて初めての恋に心躍らせる少女というのが悪趣味極まりない。直前まで顔を赤らめて春亮に好きな相手に何をプレゼントしていいか、顔を真赤にして相談してた女の子を捕まえて、ですぜ。もう素晴らしいな。嗜虐の何たるかを心得まくってる。さすがは水瀬葉月と言わざるを得ない!!

しかし、今回の展開は美味かった。フィアの成長に伴う恋心の芽生えや、錐霞の本気モード突入によって本格的に盛り上がり始めたヒロインたちの恋心の鬩ぎ合い。ディスクの奪い合いでそれが一端脇に置かれるのかなあ、と思ったら拍明の遊び心で、その想いこそがキーワードになるというのは、なかなか絶妙でしたよ。より露骨に、ヒロインたちに火花飛び散る環境を提供することになったわけですしね。お陰で、フィアは自分がディスクを求める強烈なまでの強迫観念の燃料となっている原因が何なのか、その焦りや行き場のない感情の元が何なのかをはっきりと明晰に自覚して、ややも安定を取り戻したようですし。前回の事件はフィアの心を傷つける酷い流れでしたからね。せっかくの修学旅行にも関わらず、表面上は平静ながらもふとすれば御煎餅も目に入らないほどの焦燥に囚われていた事からも、危うい感じは付き纏っていただけに、フィアが結論を手に入れられたのは素直に良かった。でも、これでまだ恋愛の何たるかも理解していない幼い小娘だったこの娘も本格的に恋愛競争に割って入ってくることになるわけだ。仮にもメインヒロインなんだからこれは強敵だぞ。
逆に不憫だったのが、いんちょーさんである。色々とタイミングが悪かったとしか言いようがない。本人からすれば、ほんの少し勇気を持てれば状況は変わっていたと思えるんだろうけれど、運もなかったもんなあ。この人の性格からして、空気を読まない積極性はとてもじゃないけど発揮できないだろうし、仕方ないといえば仕方ないのだが……乙女なだけにあのラストの展開は不本意だっただろうし、その後の衝撃的展開を思うと、これかなり精神的に自罰的になって引きずってしまうんじゃないだろうか。

一方で、ひたすら心温まる話だったのが、ビブオーリオ家族会のアリスとクルリの再登場。あんな去り方をした彼女らだけれど……良かったなあ。まさかこんな風に日常に溶け込んで穏やかな平穏を手に入れていたとは。もうねー、クルリが思わずアリスに向かって口走ってしまった呼び方を見た時には、胸が熱くなりましたよ。
彼女らがそもそもどんな生き方をしてきて、その果てに家族会なんてものにすがりつかなくてはならなかったかを思い出せば、ねえ。良かったなあ……。クルリなんて、新しい環境で新しい出会いもあったようで、ああもう、あのひねくれ者の小娘がねえ。思いっきりツンデレじゃないかw

とまあ、話がディスク争奪戦で終わっていれば、話は丸く収まっていたのですが。或いは、錐霞一生の不覚が介在してもあんなことが起こらなければ、ヒロインたちの関係がギクシャクし拗れるにしても、ある意味ついに火蓋が切って落とされた、という形になったかもしれないのですが。
ラストの展開がすべてをひっくり返すことに。
これって何気にシリーズでも最大のピンチというか、大転換点なんじゃないか!?
前回結局謎のままに終わってしまった問題、「本当のニルシャーキは誰だったのか?」。これ、正直ラストのラストまで思いっきり忘れてた。忘れてたお陰で痛烈なしっぺ返しを食らってしまった。どうやら自分の予想はあたってたみたいなんだが、忘れてたら意味ないよあ。全然警戒してなかったし。
もし警戒していたにしても、まさかあんなことになるとは想像もしていなかったから、やはり驚愕の展開には違わないか。でも、これってある意味このはのテコ入れですよね。眼鏡で巨乳の幼馴染キャラの限界を、これを景気に突破するか否か。場合によっては【お・り・が・み】のみーこさん並にキャラ変わりかねないのが不安やらワクワクするやら、である。

水瀬葉月作品感想