断罪のイクシード 4 −蠢く双頭の蛇− (GA文庫)

【断罪のイクシード 4.蠢く双頭の蛇】 海空りく/純珪一 GA文庫

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「大和くん。――私、彼らの元へ行くことに決めたの」
 白き魔女・東雲静馬はそう言って、一方的に別れを告げた。


 大和に隠された秘密を知ってしまったがゆえに、彼に理由を告げないまま去ろうとする静馬。そんな彼女を力ずくで止めるため、大和は式刀・破錠を抜き放つ。
 一方、マリンコスモスの悪魔化が解除され危機を脱したかに見えた枩原市は、新たな脅威に見舞われていた。展開した護国課や鬼兵隊の前に新たな逆十字たちが現れたのだ。
 それは、漆原の率いる『小隊』の『落日作戦』が本格的に始まったことを意味していた。

 それぞれの想いが交錯する、シリーズ第4弾登場!
メインヒロイン、思いっきり主人公にヘタレ呼ばわりされてやがる(笑
確か、静馬は大和のために全てを投げ棄て、自分を犠牲にして世界すら敵に回して血の涙をこらえて敵側に回ったはずだったんだが……普通なら主人公はそんなヒロインの為に歯を食いしばって困難を乗り越え、最終的に濃厚なロマンスが盛り上がって、ラストは愛が世界を救うみたいなラブラブなクライマックスになるものなんだが、大和が主人公だと過程は一緒でも終わりは静馬を指さして「やーい、へたれへたれ」と小馬鹿にしまくって逆ギレされて半殺しにされそうだ。うん、容易に瞼の裏に浮かんでしまう。このチンピラ主人公ときたら……。

しかし、燃える。クライマックスに入ってこれでもかというくらいに激烈に盛り上がりまくってる!! 敵から味方から、脇役からモブキャラに至るまで皆が皆まで熱すぎる! 特に、単なる「小隊」の引き立て役でやられ役かと思われた護国課の一般兵たちの熱いこと熱いこと。敵の策略に引っかかり、魔術への抵抗能力を失って殆ど無力に陥ってしまったにも関わらず、それでも決死の思いで圧倒的な敵に抗い、立ち向かっていく護国課見廻組たち。同じく、背後にマリンコスモス事件の被災者たち一般人を守り、不利極まる状況にも関わらず絶対に民間人を傷つけさせないという矜持を以て戦う明日香姉を筆頭とした鬼兵隊。
完全に罠に嵌められた絶望的な状況にも関わらず、誰一人として諦めず、闇側の国の守人であり何より無辜の力なき人々を守る醜の御盾であらんとする姿には痺れた。もう、純粋にかっこいい。
これで、それでもやられてしまったのなら無力感に苛まれてしまうのですが、裏から巧妙に引かれたアメリカと結社の陰謀の糸を、まさに一刀両断して断ち切る大逆転の一手が。それも、対処療法なんかじゃなく、策略を逆手に取る形で事前に仕込みを済ませていての、痛快極まる形勢大逆転! もう、東さんがかっこ良すぎる。何この人、イケメン? イケメン?
その東さんの陰謀を防いだ一手も、元を正せば謀殺されたに等しい結城隊長の仇を取るため。無念を晴らすため。となれば、故人の意思は確かに東をはじめとした元小隊メンバーに受け継がれていたわけで、その死は無駄ではなかったわけだ。執念成就し、敵に見事に一泡吹かせて復讐相成る。アメリカと結社にはこれまでずっと首根っこ抑えられて良いようにやられていただけに、これは本当に痛快だった。

そして、本来なら魔術世界に関わることのない、本当に無力なはずの一般人である大和の友人たち。その連中の活躍っぷりと来たら。梶くんにしても京子にしても、あんたら、肝据わりすぎ!! 青磁からして、前回魔術関係者相手に素手ゴロかましてたもんなあ。これは類は友を呼ぶ、というに値するんだろうか。

その類の大本であるところの藤間大和は……もうこいつたまらんわー。このチンピラ大魔王は、主人公としてあまりにぶっ飛んだキャラクターだけれど、これほど真っ当で熱い主人公も居ないよなあ。どれほど陰惨で業深く、ドロドロで闇に沈んだ魔術の世界に浸り、絶望的な運命にさらされても、あくまで喧嘩上等のチンピラでヤンキーでガキ大将なロジックから小揺るぎもしない頑徹さには、もう惚れ惚れします。こいつは、チンピラだからこそいいんだよなあ。そのむかつく奴は殴り倒すだけと言わんばかりの高尚さの欠片もない矮小とすら言える世界観は、漆原のような志高い者たちからすれば唾棄すべき在り方なのかもしれないけれど、それも貫き通せばここまで輝くものなのか。もう無茶苦茶かっこいいっすよ、大和さん!

……と、思ってた時期が確かに一時、ありました。だ、駄目だ、こいつやっぱりどうしようもない馬鹿だw
おまっ、あそこまでかっこ良く最終決戦に向けて飛び出したくせに、なにやってんだあほーー! クライマックスで大盛り上がりに盛り上がったところで、ひっくり返って笑い転げてしまったじゃないか!! 締まらないにもほどがあるわ! それ、ある意味定番ネタだけれど、ここまで切羽詰まったクライマックスでやらかした奴はそうそう居ないよ!! せっかくのニア合流シーンにも関わらず 台・無・し! である。
やっぱ面白いわー。シリアスな展開の合間に挟まれる、ちょっとしたギャグやコメディの掛け合いがほんとに面白い。冒頭の静馬と大和の敵対シーンからして、色々と酷い。主人公とメインヒロインが悲壮な決意で敵対するシーンのはずなんだが……なぜ大和の腕を孫の手にすることにこだわる、このヒロインw
ほんとにこの女、大和にベタ惚れなのか?(笑
まあ、彼のために結果的に世界を滅ぼす形になっても構わないとまで思い定めたり、最後に掲載されていた外伝でのブチ切れっぷりを見たら、彼女の気持ちなど明々白々なのですが……でも、あの大和のチンピラな性格と静馬の弄び系ボケ趣味を考えると、はたして甘酸っぱい展開は期待できないかなあ。でも、この二人の丁々発止はそれはそれでニヤニヤできるんですけどね。
どうやら次の巻でこのシリーズは完結のようで……うう、残念だなあ、もっと長く付き合いたかったなあ、と悶えるばかりなのですが、でも最終回に向けてテンションあげあげでここまでキてますし、このまま最後まで突っ張って欲しい。今回もめちゃくちゃ面白い痛快娯楽活劇でした、はい。

2巻 3巻感想