六蓮国物語  王宮の花嫁武官 (角川ビーンズ文庫)

【六蓮国物語 王宮の花嫁武官】 清家未森/Izumi  角川ビーンズ文庫

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「畏れ多くも殿下を敬愛したてまつりすぎていて」舞台は煌国。婚礼に臨む太子近衛武官・結蓮のもとに、太子〓(そう)成を襲う妖怪が現れたと報せが入る。尊敬する太子の一大事に、花嫁衣装を脱ぎ捨て、太刀を手に駆けつける始末。自ら三度目の結婚をぶち壊してしまうほど太子に心酔する結蓮だけど、突然異動の命令が!待ち受けていたのは、新たな婚約者で―!?清家未森が贈る、チャイニーズ・ファンタジー、ここに開幕。
糖分過多で有名な【身代わり伯爵シリーズ】の清家未森さんの新シリーズ。舞台のモデルは中華なのだけれど、主人公の相手の男の人の出身が極東の島国で留学生として派遣されてきた呪禁師というのは設定としてはなかなか面白い。自然と彼には親近感もわきますしね。性格も飄々として捉えどころがない食わせ物だけれど、何だかんだと言動からお人好しで優しいのが分かりますから、人間的にも好ましいしなかなか人間味もあって楽しい人物です。
そんな彼を新しい婚約者であり上司であり相棒としてしまった主人公の結蓮。最初は主に彼女視点で話が進む上に、何より彼女が主人公なものだから気づかなかったのだけれど、この娘ってヒロインとしては生真面目で堅苦しくでもわりとマイペースで我が道を行く性格で、表情もびしっと引き締められて滅多な事では動かない、クール系天然型の武士っ子じゃないですか!
いやいや、ヒロインの一人としてはあまり珍しくない属性ですけれど、少女小説での主人公の女性としては見たことがないタイプだったので、結構新鮮な心地で話を楽しめましたね。なるほど、こういうセメント系の女の子が主人公だと、主人公視点はこういう風に動いていくのか。当初は結蓮の感情が抑制されたようなブレのない堅い視点に戸惑いを感じていたんだけれど、彼女がその手のキャラだと把握した上でそんな彼女を適度にふざけた姿勢や思いがけぬ言動で揺さぶり、逆に彼女のガンとした態度に揺さぶられて脇の甘さを見せてくれる季隆が登場してからは、途端に話が躍動しだす。物語を動かすという意味でも、作品の雰囲気を整えるという意味でもこの二人のカップルはいいコンビじゃないですか。
現状ではまだ結蓮には恋愛感情は芽生えておらず、ラブラブな雰囲気は醸しだしていないのだけれど、この手の自分の選んだ生き様を後悔なく貫きながらも、それ故に誰にも認められず孤高を貫いてきた女の子は、だからこそ「理解者」という存在には弱いもの。自分の生き方を認めてくれた上で、パートナーとして全幅の信頼をおいてくれるという望外の相手の出現に、硬派な結蓮が浮かれている様子がまた何とも微笑ましい。
こういうガチガチに堅い子が無防備に心許してくれると男としても可愛く思えるんだろうなあ。
とは言え、呑気にこのまま二人の仲をじっくりと育てていくほど脳天気には構えていられないんですよね。結蓮が抱えている事情が思いの外薄氷を踏むような危うい状態で、実はこれ相当に時間ないんじゃないか!?
季隆ときたら、もうこの段階で相当に結蓮に参ってきてる節があるので、こいつが身代わり伯爵シリーズのリヒャルトみたいに主人公にメロメロになってしまうまで、さほど時間掛からなさそうだ。あのリヒャほど堅苦しい考え方をするやつではなさそうですしね。この人、わりと自分には素直そうだし。