RINGADAWN〈リンガドン〉 - 幽霊街と呪い笛吹き (C.NOVELSファンタジア)

【RINGADAWN 幽霊街と呪い笛吹き】 あやめゆう/BUNBUN C.NOVELSファンタジア

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幽霊街を見つけてはいけない----幼い頃に聞かされた御伽噺さながらに無人となった村を発見した税務官イセリナ。村人たちを消し去ったのは呪いか犯罪か陰謀なのか。御伽噺シリーズ第二弾!

次々と領内で増えていく村人の消えた村落。ついには街と呼んでいいほどの集落まで無人と化していくさまは、さながらお伽話に語られる【幽霊街】の呪いの如く。
危機感どころかさして問題意識すらない貴族たちに憤り、自ら調査に出ることにした税務官イセリナが頼りにしたのは、奇矯で癖のある性格をした幼馴染の軍師カミナ。彼とその護衛騎士ノルンを伴って彼女が辿り着いた【幽霊街】の謎の真相は……。
これは……お見事ッ!! 
真相が明らかになってみれば決して複雑でも何でもない単純なことだったのだけれど、頭の片隅にもこの真実は思いつきませんでしたわ。ほぼ完璧に手のひらの上で踊らされた。
なるほどなあ、なんでカミナが騎士でも将軍でも領主でも参謀でもなく、わざわざ「軍師」なんて役柄をこの物語において与えられていたのか、全部読み終わったあとで否応なく納得させられた。つまるところ、軍師の仕事というのは、事が起こったあとで始めたら遅いんですね。事が始まる前に、彼らの仕事は全部備えを終えていないといけない……いや、それですら不十分。一から十まで、起爆から収束すらまですべてを掌握してこそ、軍師としての仕事を成し遂げたとは言えないのだろう。その意味では、カミナは見事に軍師としての仕事を成し遂げたのだろう。尤も、カミナが誰の軍師だったかと考えると色々と複雑なんですけどね。
最初は彼はイセリナの為の軍師だったのかと考えてたんだけれど、改めて振り返ってみると多分違うんでしょうね。もし、カミナがイセリナの軍師だったら、このラストはちょっと違うものになっていたはず。第一作でもそうだったんだけれど、主人公がヒロインに捧げる忠誠心、或いは信頼というのは彼女たち個人に向けられているものではなく、彼女たちが抱く思想であり誇りであり在り方に預けられてるんですよね。だからその行動も目的も、彼女たちの信念にこそ捧げら殉じられる。特にカミナとイセリナのそれは、二人が子供の頃に、二人で考え育て上げたものだから、それは二人の間で芽生えた愛情よりも優先されなければならなかった。
もし二人で見出したものよりも愛情を優先させてしまえば、その途端カミナとイセリナの絆と信頼は潰えてしまう。皮肉な話だ、その絆と信頼があったからこそ芽生えた愛だったのに。生まれた恋だったのに。二人がお互いを大切に思い、お互いを信じるからこその必然の別れ。まさに叶わぬ恋であり、悲恋そのものだ。
ほんのりとした切なさに、思わずため息を落とす、そんな読後感でございました。

その点、貴族でも軍師でもない、ただの騎士であるノルンはシンプルだよなあ。騎士はただ相手に剣を預けるだけ。それはイセリナとカミナのように一番根底にあるものを共有し合うような関係じゃないんだけれど、ノルンの性格からすると細かいところはどうでもよさそうだし、いいのか。この人は自分でも言うように、考えるのは得意じゃないし自分の役割じゃないと弁えているようですから。なんかこう、考え方がシンプルイズベストすぎて、逆に面白いよ、羽根の騎士。

三部作ということで、次回がどうやら完結編らしいけれど、一巻もこの二巻も世界観もキャラも映えてて面白かったので次で終わりというのはなかなか勿体無いなあと思わされた。三巻も新キャラが主人公なんだろうけれど、一巻やこの二巻のメンツも出張ってきてくれそうなので、完結編に相応しい盛り上がりを期待したい。