ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)

【ビブリア古書堂の事件手帖 2.栞子さんと謎めく日常】 三上延 メディアワークス文庫

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 鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。
 変わらないことも一つある──それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき──。 
 大人気ビブリオミステリ、第2巻の登場。
大人同士の純愛って、場合によっては中学生のそれよりこっ恥ずかしい所があるよなあ、と思わずに居られなかったビブリア古書堂の第二弾。なんかもう、メディアワークス文庫の看板的な一作になっちゃいましたねえ。

第一話 アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
古書店に頻繁に出入りする女子高生というのは、多分よっぽど珍しい存在だと思うんだ。特に奈緒は普通に思い浮かぶ文学少女とはまた一線を画す、わりと今時の本とは縁のなさそうな女子高生ですしね。
だからこそか、妹ちゃんもちょっとムキになってしまったんだろうなあ。好きなお姉ちゃんだからこそ、自分の領分だった分野では負けたくない、と。もし単純に奈緒が本を好きになって自分よりも難しい本でも読みこなすようになったのなら、結衣も煩悶を抱かず素直に自分の好きな領分に姉もハマってくれたと喜んでいたかもしれませんが、そこにあの勘違いが絡んだことで、モヤモヤが生まれてしまったんでしょうね。可愛い妹じゃないですか。
小さい謎の真相、というか第一話の題材となった本にまつわる話については、これはさすが古書店という内容でした。バージョン違いかー、面白いなあ。


第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
さしずめ、これが【征途】の世界だと『名言随筆 自衛官』になるんだろうか(笑
福田定一が司馬遼太郎の本名だというのは私の中では常識だったのだけれど、よく考えてみると世間一般では全然常識でもなんでもなかったという当たり前の事実に今更思い至る次第。そうだよなあ、普通は作家の本名なんて知らんよなあ。ゾンビ漫画【学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD】の原作者佐藤大輔の著作に目を通している人なら大概知ってるんだろうが。
そもそも、本名の方で本を出していた事に驚き。学生時代に随筆も含めて司馬遼太郎を読みまくった時期があるのだけれど、これについては存在すら知らなかった。ってか、相当の希少本じゃないですか。こんな値段付くの!?
知らなかったと言えば、司馬遼太郎がミステリーを書いていたのも全く知らず驚きましたけれど。にしても、後書きの言い草がこの人らしいなあ。
とまあ題材の薀蓄を堪能させていただいたものですが、話の内容もこれ栞子さんと五浦さんの関係を一つ進展させるための重要なワンステップに。と、同時に彼女の母親にまつわる大きな壁に対して踏み込むべきか否かをじっくりと主人公に考えさせる触媒ともなっている。前の彼女と上手く行かなかった原因と、司馬遼太郎のミステリーの後書きに書かれた内容が指し示す栞子さんの姿勢。さて、それらを照らしあわせて主人公の目の前に提示された選択。踏み込むべきか、踏み込まざるべきか。


第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)
漫画古書も古書なれば。足塚不二雄はさすがに聞いた事があったけれど、こんな価値がついてるのか。凄いなあ。
十年前に失踪した栞子さんの母親。その人間性が彼女の口から語られるのだけれど、さすがにここまで極端な人が居るのだろうかという疑問と、栞子さん自身ややもそういうきわどい傾向が伺える事はこれまでの幾つかのエピソードからも垣間見えるだけに、なんとも言えない。もっとも、栞子さん自身は自分の異常性と母親との類似性にちゃんと気づき、それを恥ずべきものとして自戒しているようだけれど……ある意味本能みたいな部分もあるようだしなあ。それに、栞子さんが自分のそんな側面を嫌悪しているように、彼女の母親だって自分のビブリオマニアとしての業に苦しんでいたのかもしれない。栞子さんの視点は一方的なものですしね。それに、彼女だって自分の語る母の姿が全てではないと信じたいからこそ、クラクラ日記を追いかけているのでしょうし。
何やらえらくキッパリと栞子さん、ここで自分の恋愛に対するスタンスを語ってしまってますけれど、主人公わりと思いっきりスルーしたな(笑
まあ栞子さんの五浦への態度を見てると、彼女の語る決意と相反するものばかりで、ここは五浦の強気は正しいのじゃないかと。ただ、頑固者でもある栞子さん。彼女の決意を翻意させるには、やはり母親の件こそが一番のハードルであり、いずれ決着させないといけない案件なんだろうなあ。母親が失踪した理由についてもまた一切不明なわけだし。

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